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種族解説:ドラウグル

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ドラウグルは恐ろしいアンデッドだ。〈冥王〉の支配下になく、また、死霊術師ネクロマンサーやヴァンパイア、あるいはリッチーといった〈不死なる君主〉に従属する訳でもない。いわば、上位者の存在しないアンデッドである。

ドラウグルは上古かみふるの昔に葬られた北方の英雄や豪族、あるいは主君のために殉死した近臣の成れの果てだ。上古かみふるのころ、北方の王や英雄の遺体は、丁寧な防腐処理を施され、多数の殉死者と共に埋葬された。神聖アルフモート王国東部から北部に点在する古墳群は、多くが北方人のものである。

スケルトンやゾンビと異なり、ドラウグルは自身の維持にあって、死霊術に通じる上位者を必要としない。その意味でドラウグルはグールと似ているが、グールが動物的衝動のみに突き動かされる不死者であるのに対し、ドラウグルは契約や責任、あるいは誓いといった観念を生前と同じように保っている。ドラウグルは生前と同じ君主に仕え、序列を守り続けながら、永劫の時を生きるのだ。

眼球や鼻を失った顔は皮がかろうじて残る白骨だが、その遺骸は生前の体格をかなり保っており、まるで骸骨の顔を持つ戦士のように見えるだろう。不可思議な力で肉体の崩壊は食い止められているが、代わりに凄まじい腐敗臭を漂わせ続けている。

古文書によると、かつての北方人は、“遺体を保存することで、死者は古き神々同士の戦いに身を投じられる”と信じていたようだ。遺体の保存状態が死後の運命と深い関係があるとする思想において、上古の北方人には砂漠の民と妙な共通点があるが、地理的にも文化的にも隔絶した両者にいかなる繋がりがあるかは定かでない。今後の探求が待たれるところである。

なお、現在の北方人は、遺体に防腐処理を施す方法を知らず、彼らの墳墓は、上古のものとは比べられないほど粗末なものだ。時代が下るにつれ、これらの知識が失われ、また埋葬の文化もかなり後退したようである。

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