【ティル・ザ・ムーン・ライジス】

「GROWL!」ベアハンターは爪の一振りでナイトウィンドを弾き飛ばし、片腕を奪った。
眼の前にはなお敵ニンジャ。赤い装束の女ニンジャはおそらく手練、しかも異様なニンジャの匂いがする。おそらく「リアルニンジャ」という奴であろう。双頭の巨体ニンジャといい、レジスタンスもよくここまでバケモノを集めたものだ。ベアハンターは柄になく感心していた。

「G…GRRRRR!」ベアハンターは月を見上げて吠えた。力がさらに漲ってくる。裂創が癒えていく。そして敵への殺意がこの上なく湧いてくる。
潰す。敵を潰す。そのために、あの日からずっとカラテを鍛えてきた。ここで勝つ。それが、このジツを身に付けた自分の義務である。

ベアハンターは敵に気付かれぬよう自分の体躯と両腕を改めて眺めた。全身を覆う剛毛、その下には異形の筋肉。良い。
腕を振るう。敵のカタナを払い、肉を撃つ。すると筋肉の一筋一筋が軋み、血流がカラテを運び、傷が癒え、さらなるカラテが漲る。良い。

「GRRRRR!!」ベアハンターは再び吠えた。イクサだ。自分はもうサンシタではない。自分で自分のイクサができる。あの日の復讐を果たすまで、俺は勝たねばならない。「ンアーッ!?」ドラゴン・ニンジャと名乗ったニンジャが宙を舞った。爪で切り裂いたはずが、器用にウケミを取られたらしい。「GRRRRR!!」ベアハンターは怒りと憎悪を叫んだ。

「グワーッ!」巨大双頭ニンジャを蹴り飛ばす。シデムシが追撃に向かう。あれは優秀な兵器だ。もしドサンコにもあれがあったなら…否、あの日を悔やまないと決めたではないか。ドラゴン・ニンジャが再び斬りかかってくる。「GRRRR!」裏拳でカタナを弾き、左腕で引き裂きにかかる。「キエーッ!」「GRRRAHG!?」腹部にパンチを食らう。俺の体が吹き飛んだ。

ドラゴン・ニンジャは体を開き右手をまっすぐ突き出したのか。カタナは陽動か。しかしあの型は見覚えがある。ポン・パンチだ。アマクダリ学習システムで散々見た、あの男のカラテの型だ。ニンジャスレイヤーの技だ。「G…RRR…GRRRRR…!!」ニンジャ…ニンジャスレイヤー…!

ニンジャスレイヤー!ダイアウルフ=サンを殺した仇!「GRRRRR!!」この女がなぜヤツのカラテを使えるのか?どうでもいい!「ニンジャ…スレイヤー…!!」叫びが無意識にコトダマを成した。「これは…?」「GRRRRR!!!」「ンアーッ!?」ヤツのカラテを使うのはヤツの仲間だ!つまりこの敵どもは全員俺の仇敵!

「GRRRR!」ベアハンターは月に向かって咆哮した。満月にコリのオーロラが掛かって煙る。「GRRRRRRRRRR!!」ベアハンターは更に吼えた。まるで月に何かを懇願するように。「GRRRRRRRRRRRRRRR!!!」ベアハンターの肉体が瞬時に癒え、体躯が一層巨大になった。爪は禍々しく尖り、牙は太く重く闇を食んだ。

月のアルゴスとアガメムノンが再定義を終えれば、この世界はアマクダリのものになる。敵は死に絶え、ダイアウルフ=サンの死は報われる。
彼女は俺達に厳しかったが、それでも俺達は、俺は、共に戦った上官と下官…仲間だったんだ。あの時の俺はただのクソだった。でもダイアウルフ=サンは違った。ダイアウルフ=サンは死んでしまった。俺は生き残った。俺がこのジツを得たのは偶然ではない。ダイアウルフ=サンが俺に戦えと言っている。俺に最後のシゴキをくれたのだ。俺はダイアウルフ=サンに見せつけてやらねばならないのだ。

満月は俺に力を与えてくれるが、まだ日が落ちて間もない。月もまだ低い。もう少し月が高くなれば、俺のジツはより強力になる。ダイアウルフ=サンも同じだったのだろうか。否、ダイアウルフ=サンは何時でも強かった。俺がダイアウルフ=サンと同じはずがない。でも俺は報いなければならない。

月が昇れば、俺達の勝ちだ。だがその前に、やるべきことがある。このサンシタ共に一度限りのシゴキをくれてやるのだ。「GRRRRRRRRR!!!」月に叫ぶ。月の狂気が俺にさらなるカラテと力をくれる。良い。
月が昇る前に、俺の勝利を確定させるのだ。再定義を待って勝つのはダイアウルフ=サンの勝ち方ではない。カラテの勝利は、今ここで奴らを殺すこと。

「GRRRRRRRRRR!!!」ベアハンターは絶叫しながら丸太めいて太い腕を横に薙いだ。「グワーッ!」「ンアーッ!」「アバーッ!?」影のニンジャ諸共シャドウウィーヴとドラゴン・ニンジャとギガントが横一文字に切り裂かれた。

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