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陽だまりの粒(質)

1990年9月16日(日)

和君、どうして私の顔をみてくれないの?
和君、どうして私と話しをしてくれないの?
和君、どうして黙り込んでいるの?
和君、私といるのがそんなにつまらないの?
ねぇ和君…ねぇ和君…ねぇ和君返事して…和君たら…

咲が車を運転している和彦の左腕を揺すったら
咲の方を振り向いたのは、和彦ではなく里香の元彼であった友治だった。
「やっと俺と付き合う気になったか!!」
友治はそう言うと車を路肩に止めサイドブレーキを引いた後で咲を力ずくで抱こうとした。

予想もしなかった出来事に咲は金縛りにあったかのように、叫び声を上げる事も出来ず、ココから逃げ出す為の身体の自由も全くきかなかった。
襲いかかる友治の顔を思いっきり引っ掻いた咲は、助手席側のドアを開けてこの状況から脱出しようとしたが、ハイエースのフロント座席のいちばん左側には同学年の安倍喜朗が座り「コイツホントにつまらない女だ」と喋りながらダッシュボードの中から黒い油性マジックを取り出して咲の顔に落書きを始めた。

「嫌だぁ〜やめてよ〜」咲は声の限り叫んだが
今度は後部座席から二本手が出てきて咲の口をタオルで塞いだ。
「ウグゥ・ウグゥ・ウグゥ」咲は顔を振りながら言葉にならない声を懸命に発したが、
咲の口を塞いでいる小成がテンションの高い声を上げてハイエースを運転している友治に向かってこう言った「コイツを山奥に連れてって仲間も呼んで姦りまくろうぜ、こんな女は妊娠しちまえ」
「気持ち悪い!!ギャーっイヤだ〜和君助けて〜」

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「はぁ〜はぁ~」咲はもの凄い量の寝汗をかいた悪夢から目覚めると、胃の中を人の手でギュッと鷲掴みにされる感覚に襲われてた。ベッドの上に横になっていれば少し楽になるような気もしたが、胃痛は中々治まらず、それどころか逆に吐き気が咲を襲った。
ヤバいと感じた咲は、ベッドの下に置いてある洗面器を急いで取り出すと同時に床に這いつくばって洗面器に向かって嘔吐した。「グェー、オェー、ヴォォエ~」昨晩食べた胃の内容物は吐き出さなかったが、吐き気は中々治まらなかった。
咲は慟哭しながら嘔吐し続けた。
もうイヤだ…またこんなだ…来る日も来る日も悪夢で起こされるし…もう今日は和君に会えないかも知れない…いやもう二度と和君には会えないのだろう…

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隣の部屋から咲が声を上げて泣く声が聞こえ姉の百合は目を覚ました。
慌てて枕元に置いてある目覚まし時計を見てみると午前4時半を回っていた。
日曜日の朝なのにもう安眠するという当たり前の事が何処に吹き飛んで行った。
両親には絶対に否定されるが、百合の頭の片隅では咲はもう以前のような生活が出来ないのだろうか?と思われて一度精神病院に連れて行った方か良いのだろうかと心が揺れた。

百合は咲の部屋のドアをノックして部屋の中に入った。
そこで百合が見た者は、夜明け前に慟哭しながら床に這いつくばって洗面器に嘔吐する変わり果てた妹の姿だった。
咲の背中を優しくさすってやったら症状はだいぶ収まった。
何とか泣き止んだ妹を慰めて「今日デートに行けるか?」と百合は聞いてみた。
暫く考えこんだら末に咲は何かに怯えたように身体を震わせたと思ったら下を向いてしまい、また泣き出した。

百合は泣いている咲から和彦の電話番号を強引に聞き出して、まだ夜明け前の時間で絶対に非常識な時間であると自分でも分かっていたが、どうしても和彦の家に電話を掛けなければならないだけの事情があった。

トゥルる …トゥルる…
2コールで和彦が電話口に出た。
「はい、雪野です」
「私は、花畑咲の姉の百合と言いますけど…」と言いかけた所で咲が百合の手から電話の子機を取った。
「もしもし私…咲…ずっと和君の声が聞きたかったよ…」と電話の向こうから泣きながら話しをする咲の声に和彦は少し困惑しながらも、落ち着いて何時も深夜にやり取りをしているように、夜更けに電話で起こされる時のように、日常の延長で咲の苦しみを聞いてやり、咲が日常に戻って来た頃を見計らって。
「今からそっちに行くから楽しみにしててな
!それから今日は姉ちゃんのシビックを借りたので赤のシビックでそっちに行くから!ほんじゃあ今から出るから」と言い咲が夢の中で苦しんだ和彦のハイエースの悪夢が否定されて和彦が完全に咲を笑顔にしてやった。

参った…百合は和彦に完全に脱帽した!!
クサイ言葉を使えばコレが愛の力と言うのだろうが、そんな陳腐な言葉など必要ない程に和彦と咲は信頼関係が出来上がっている。
百合は咲を優しく抱きしめると「いい男の人とめぐり逢えて良かったね」と何故か自分も泣いてしまいたい衝動に駆られた。

「姉ちゃん、和君におにぎり作ってあげたいんだけど手伝ってくれる?」
「いいよ!ついでに卵焼きも入れたら?」



はじめてのチュウ

眠れない夜 君のせいだよ
さっき別れた ばかりなのに

耳たぶがfor you
燃えているfor you
やった やった やったよohh

はじめてのチュウ君とチュウ
I will give you all my love
なぜか優しい気持ちがいっぱい
はじめてのチュウ君とチュウ
I will give you all my love
涙が出ちゃう男のくせに
Be in love with you

デートのコースは もう決めたんだ
明日の夢が ふくらんでくる

この愛をto you
いつまでもto you
きっと きっと きっとさohh

はじめてのチュウ 君とチュウ
I will give you my love
なぜか優しい気持ちがいっぱい
はじめてのチュウ君とチュウ
I will give you all my love
涙が出ちゃう男のくせに
Be in love with you

Loving you
Loving you
Loving you
Loving you …

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