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マイフレンド・イン・スペイン

はじめまして。これは私が大学一年生の頃の話です。


成人する前に、ヨーロッパ旅行をしたいと思い、バイトをたくさんし、稼いだお金で1人で旅行に行きました。


トランジットでドバイに丸一日、パリに5日、バルセロナに2日、マドリードに7日というスケジュールでした。


予定通りに行かないこともありましたが、バルセロナからマドリードに向かう飛行機に乗るまでは順調に旅は進んでいました。


が、


駅から10分ほど歩き、バルセロナの空港に着いた際、私はAirPodsで音楽を聴いていたのですが、接続が急に途切れてしまいました。


その瞬間に


「あ、スられた」


と脳によぎり、ポケットを確認すると携帯がない。時すでに遅し、、、


反対側のポケットに現金を入れていたのですが、現金は取られていなく、安心しました。


大焦りで、警察官のいる部屋の前まで行き、インターホン越しに盗られた旨を伝えると、重厚で頑丈なドアの施錠が開き、中に入れてくれました。


拙い英語でなんとか盗られた事情を説明し、警察官も慣れた手つきで書類に記入していました。



この時、飛行機の出発まであと1時間でした。


警察官が書類を記入し、監視カメラを確認してくれている間に、私は家族や保険会社に電話し、少し時間が経ったところでようやく落ち着きを取り戻しました。


私が警察官の部屋に入ってちょうど30分が経った頃でしょうか、ヨーロッパの男性2人組が中に入ってきました。


彼らと警察官の会話を聞いていると、どうやら片方の男性が私と同様に空港で携帯をスられたと言っています。


私はその時家族と電話をしていましたが、フライトの時間まで時間があまりないと思い、電話を切りました。


 警察の部屋には時計やテレビ等は一切なく、また携帯を持っていなかったため時間を確認する術がなかったため、仕方なく隣の携帯をすられた男性に時間を聞きました。


 ここからは英語での会話です。

私「すいません、時間を教えてくれますか?携帯をすられてしまって。」

と聞くと、彼はすんなりと左腕のアップルウォッチを見せてくれました。


17時発のフライトの時間まであと30分。


彼も警察官の処理に時間がかかり暇そうだったので、勇気を出して話しかけてみました。


私「あなたもiPhoneをすられたの?」

彼「ああ、そうだ。君もかい?」

私「はい、わたしも。悲しいですね。」

彼「いや、本当にタイミングが悪いよ。あと30分でマドリードに行かないといけないのに。」

私「ほんとに?わたしもそうなの 」

彼「まじか!奇跡だね。」


2人ともこの状況にとてもテンションが上がり、ハグをして握手をしました。


彼「そうだ、せっかく友達になったんだ、インスタグラムかワッツアップを交換しないか?」

私「はい、ぜひ」

彼「よし、じゃあ携帯を、、。って携帯ないやん!」


と、冗談(笑)を交えて警察官の書類を待っていました。


私は不安でいっぱいの中、同じような状況の男性がいることと、優しく接してくれたことをとても嬉しく思いました。


そうこうしているうちに、時間が過ぎ、警察官からの書類が渡され、チェックインをしようとするもなんと時刻は17時14分。


結果、追加料金を払い、別の便を取らなければなりませんでした。


チケットを買う場所で、友達になった彼とはその場で別れを告げ、もう一度ハグをして、またいつか日本に行くね、と挨拶をしました。


その後、無事に後の便に乗りマドリードに到着し、

いろいろあったけどマドリードを楽しもう!

と心を入れ替えました。


向こうに住んでいる友人と出会い、事の経緯を話し、ふと左ポケットに手を入れると、入っていた現金がなくなっていました。


おしまい。


追記:めちゃくちゃ泣きました。









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