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プロゲーマーになれなかったぼくが見つけた、大切なこと
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プロゲーマーになれなかったぼくが見つけた、大切なこと

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現在34歳のぼくがプロゲーマーを志したのは、高校1年生のころだった。時は1998年、SONY『プレイステーション』と熾烈な争いを繰り広げたSEGAの『セガサターン』が敗北し、王座を奪還すべく開発された後継機『ドリームキャスト』が産声を挙げた年だ。

当時のテレビゲーム業界における技術革新は凄まじいものがあった。ゲームセンターで遊ぶことができるビデオゲームを『アーケード』と呼ぶことがあるが、このアーケードゲームを家庭用のゲーム機で完全再現することは、技術的な問題で長らく難しいとされてきた。

しかし、セガサターンでは遂にアーケードに肉薄するクオリティを再現することが可能となり、その後継機であるドリームキャストはアーケードを超えてしまうレベルにまで登りつめた。根っからのアーケード格闘ゲーマーだったぼくは、この頃から本格的にプロゲーマーを志すようになった。

欧米や韓国といったプロゲーマー先進国にかなり遅れをとっているが、2017年現在、日本でもようやくプロゲーマーという職業が市民権を得始めた。

ぼくが高校1年生だった1998年には、もちろんそんな職業は存在しない。格闘ゲームの大会でチャンピオンになり、プロスポーツ選手のように活躍したいと勝手に思っていただけのことだ。

当時京都の片田舎に住んでいたぼくは、『ヴァンパイアセイヴァー』『THE KING OF FIGHTERS』『バーチャファイター』といった様々なタイトルの格闘ゲームに夢中になっていた。

昼ごはん代を削ってプレイ代に充てるのは当たり前だったし、新作が出るタイミングには学校を抜け出して昼間からゲームセンターにいったこともある。地元で対戦相手が見つからないときには、京都市内の有名なゲームセンターに遠征することもあった。

高校3年生の受験シーズンになっても変わらずゲームに夢中だったが、この2000年に運命の格闘ゲームと出会ってしまう。これまでアーケードの格闘ゲームを作ったことがない新参の会社・アークシステムワークスが開発した『ギルティギア ゼクス』だ。

格闘ゲームというものは、過去の蓄積がモノをいうプロダクトである。ブームに乗っかろうと新参会社がタイトルを出しても、ユーザーはクオリティの低さをすぐに見抜いてしまう。早々に閑古鳥の鳴くタイトルはゲームセンターからもすぐに消えてしまうのだ。

そんな業界に現れた『ギルティギア ゼクス』というタイトルは、他のどんな格闘ゲームよりも美しいグラフィックであり、アクションの爽快さ、ド派手な演出、個性の際立つ魅力的なキャラクターと、どの点をとっても素晴らしい出来だった。老舗大手メーカーの安牌なゲームを捨て、このタイトルに夢中になった人はぼくの周りにも数多くいた。まさに業界を震撼させるタイトルとなったわけだ。

このゲームを極めたい。そう決めた僕は、対戦相手を求めて様々なゲームセンターに足を運び、対戦を繰り返した。なぜか合格できた大学に通い始めてからも、空いた時間はゲームセンターでの対戦に費やした。

そんなぼくが、プロゲーマーを夢を断念したのは2001年のことだった。

勝てなくなってしまった。スランプだったのかもしれない。練習は欠かさずしていたが、あの頃のように指が動かない。乗り越えるべき壁だったのかもしれないと今では思うが、そんな折に人生のストーリーについて思いを馳せてしまった。

「プロゲーマーなんて仕事はないんだぞ」
「それでどうやって食っていくんだ?」
「大学に入ってまでゲーム三昧かよ」

そんなことが頭をよぎったとき、一瞬で熱が冷めてしまった。

格闘ゲームはおろか、ゲームそのものに嫌気が差してしまったのだ。家にあった数々のゲームをすべて売り払い、あっという間にゲームのまったく存在しない人生を生きることになった。正直、なぜそんな思い切ったことができたのか、今でもわからない。あれほど情熱を注いできたことなのに…。

それから僕は、ゲームと関わらない人生をしばらく送ることになったが、そんな僕がまた格闘ゲームの世界に戻ってきたのは、たまたまゲームセンターに行ったときに見かけた『ギルティギア イグゼクス アクセントコア』がきっかけだった。

ゼクスから正統な進化を遂げていたこのタイトルは、またしても僕を釘付けにした。「大好きなものに本気で取り組んでいた、あのころの気持ちを取り戻したい」。瞬間的にそう思った僕は、思わず100円を投入した。

時は2008年。またしても、ぼくの人生にギルティギアが帰ってきた。

今では「プロゲーマーになろう」という夢は追っていない。文章を書くことが好きで、その道に生きがいを見出しはじめているから。片手間でプロになれるほど簡単な世界でないことは、誰よりも知っているつもりだ。それでもゲームはやめられない。

今でもゲームセンターにいって対戦するし、レトロから最新機種まで家庭用のゲーム機を揃えてゲーム三昧の生活を送っている。本当に大好きなものは、好きなだけで十分だということに、やっと気づけた。もし1998年の僕に伝えることができるなら、そう言ってあげたい。

そんな僕が今プレイしているのは、『ギルティギア イグザードレベレーター』。もちろん、「あのゲーム」の最新シリーズだ。

Photo by Pawel Kadysz on Unsplash

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ライター/編集者 → 新米エンジニアに転身。Javaを中心に、PythonとSwiftも勉強中。当面の目標は「まっとうな会社」で働くこと。読み応えのある本とおもしろいコンシューマーゲームがあれば、それだけで生きていける人。スキゾイドパーソナリティを自覚しています。