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他人を「お前」呼ばわりする人

人を信用するかどうかの判断基準のひとつとして、「他人をお前呼ばわりする人間か」を見ている。使う人は例外なく信用しない。

そもそも、他人をお前呼ばわりする人はどういう神経しているんだろうか。男女関係または上下関係が垣間見える現場でよく見かけるが、あからさまに相手を見下しているのがわかり、非常に気持ち悪い。自分の方が偉いと嘯きたいのかわからないが、ああいうことでしか自分の存在を誇示できないのだとすると情けなく感じる。

元々「お前」という言葉は、相手を敬って使う言葉だったとされている。語源由来辞典によるとこうだ。

「お前」の語源は?
お前
【意味】お前とは、同等もしくは目下の者をさして呼ぶ語。

お前は、「前」に接頭語の「御(お)」が付いた語。+元々、お前は神仏や貴人の前を敬っていう語で、現在でも「みまえ(御前)」や「おんまえ(御前)」は、神仏の前をいう語として用いられている。+のちに、貴人を敬う気持ちから直接さすことを避け、間接的にさす代名詞として「お前」が用いられるようになった。+江戸初期までは高い敬意をもって用いられたが、「貴様」と同じく次第に敬意の意味が薄れ、明治以降は同等や目下の者をさす語となった。

言葉は移り変わるもの。元々の意味が、時代を経て変容していくのはよくあること。元々は相手を敬う言葉だったとしても、今現在、それに敬意を感じることはない。どちらかというと、相手を見下したときに使う言葉として定着しているから。

言葉そのものの意味は大事だが、要はそこに心がこもっているかの方が重要だ。例えば男女の関係で、愛情を含んで「まったく、お前は……」なんて言われたときなら、イヤな気持ちは介在しないかもしれない。そうでない状況で、「お前」という言葉に愛情を込めて発言している人がいるとは到底思えない。

他人を「お前」呼ばわりしている上司は今まで何人も見てきたし、自分もそう呼ばれたことはあるが、尊敬に値する人はひとりとしていなかった。むしろ、「ああならないように気をつけなきゃな…」と、自分を戒めるための存在として見ていたように思う。

「それじゃあ私も、あなたのことを尊敬の意を込めて『貴様』と呼ばせていただきますね」なんて、買い言葉で言い返したい気持ちもあったけれど、逆ギレされて終わりかと思うと、非常に不毛。

相手と同じレベルになって良いことは何もない。不快な思いをしたときは「この人は言語レベルの低い、大変残念な人なんだ」と心の中で盛大に見下すことでなんとか対処しているが、正直なところ、やっぱりつらい。

Photo by Erik-Jan Leusink on Unsplash

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