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iPadでゲラに朱入れ


デジタル校正(PDF校正)のデメリット


昨今,ますますデジタル校正が主流となってきています。
従来は,PDF上での校正はほとんどの場合でメリットよりもデメリットが多く,そのため校正を発注する側からもよほどの事情がない限りは,現物での校正でお願いしていました。

現物のゲラで校正をお願いすることについては現在も変わりないのですが,デジタル校正(PDF校正)のデメリットとしては以下が挙げられます。

① ページ間参照がしづらい

校正においては,内容参照だけでなく体裁や表記も含めて,様々な観点が含まれますが,ポイントとなるのは「全体として統一がなされているかどうか」です。
 
この統一を確認するために,ページをパラパラとめくって同様の箇所を探し,統一・不統一の基準を探ります。この作業をいかにスピーディにこなせるかは,やはり現物のゲラの方が向いているように思います。
 
ただしこの点においては,デジタル校正ならではのメリットもあります。
 
それは,検索です。

「友だち」「友達」の表記が混在していることに気がついたとき,検索をかけて機械的に洗い出すことができます。これを目視で探し出すとなると見落としのリスクがあるので,やはりこの点はPDF上で検索するのがベストです。


③ 実寸で校正しづらい

校正は実寸で校正するのが原則です。
なぜかと言うと,実際のサイズで見たときの違和感を含めて,各寸法なども校正の観点に含まれることがあるためです。

この点,A4判の校正物を実寸でデジタル校正で行おうとすると,サイズの大きなiPad Pro的なタブレットが必要となってきます。

見開きでチェックが必要な場合には,実寸で校正することは諦めなければなりません。


④ 書き込む余白が少ない

校正ゲラを現物で出力するとき,一回り大きな用紙に,実寸で印刷します。
なぜかと言うと,余白が多く出るので,その部分に赤入れをすることで,より整然としたゲラになるためです。

デジタル校正の場合は,ゲラとなるPDFを渡されることになりますが,余白はもともと決まっており,トンボがない実寸のゲラの場合には,なおさら余白は少ないことになります。

⑤ 赤字の立体感

現物のゲラに赤入れしたサンプルは,以前に別の記事で紹介しました。
ポイントは,実際に修正をする組版オペレーターが見やすいかどうか,見落としにくい赤字となっているかどうかです。

PDF上で朱入れをするとどうなるでしょうか。

以下の画像は,iPadで校正したものです。

使用ツール:iPad(端末)、Apple Pencil(ペン)、PDF Expert(アプリ)

どうでしょうか。
赤字の主張がすごいです。とにかく赤字が前面に出てきているので,見落とすことはないように思えます。
これはこれで十分実用レベルとして成立しているように思いますが,これよりも細かな赤字になってくると,かえって見づらくなってしまう恐れがあります。
なぜかと言うと,【朱入れした赤字】が【ゲラに印字されている元々の文字】と同等もしくはそれ以上に主張しているためです。

現物ゲラに手書きで朱入れした場合,この関係性は逆になります。

つまり,【ゲラに印字されている元々の文字】がいちばん前面に出ていて,朱入れしたボールペン(もしくは赤えんぴつ)の赤字は【ゲラへの違和感】として残ります。

この違和感は,修正するオペレーターにとっては見やすい赤字となります。
(見落としづらいです)

デジタル校正(PDF校正)のメリット

デジタル校正にはメリットも多くあります。

① 何と言ってもペーパーレス

クラウド連携が基本なので,どんなにページ数の多いものでも持ち運び可能,どこでも仕事ができます。
私は以下の方法で使用しています。

PDF Expert(無料版)でOneDriveと連携。
→ゲラをOneDriveにアップ。
→PDF Expertで朱入れ。
→保存と同時に自動でOneDriveへ更新。

便利すぎます。

② マーカー機能やペン色(赤・青)の使い分けが楽ちん

これらを使い分ければ,PDF校正でもかなり見やすい校正ゲラを作ることが可能です。

③ スペルチェック,色チェックなども可能

誤植の発見,英単語のスペルミス発見,色のチェック(2色刷りの書籍で別の色が入ってしまっていないか,など)の校正も同時に進めることができるので,編集者自らが校正をする際には,かなり使えます。

④ 朱入れ後の修正がめっちゃ楽&きれい

いちばんのメリットはこれだと思います。
朱入れしたPDFは,あとからワンクリックで好きな箇所をデリートしたり移動したりすることができるので,消しゴムを使ったり,修正テープを使ったりしてゲラを汚すことがありません。

別の校正者がデジタル校正した成果物を,編集者が少しだけいじりたいときも,非常に簡単に,きれいに修正することができます。


以上,今回はデジタル校正についてご紹介しました。
今後,おそらくもっと普及が進むような気がします。また,ノートPCとタブレットを持てば,ほとんどの場合においてオフィスが不必要になります。あらゆる意味で経済的です。


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