20240311 君たち

宮﨑駿の「君たちはどう生きるか」がアカデミー賞を取った。あの作品は何がよかったのだろう。映画館で見た直後は戸惑った。期待していたものとは明らかに違ったからだ。かといって、つまらないとも思わなかった。何だこれは、という戸惑いだった。象徴的なイメージが散りばめられた夢の中のような風景。ジブリ作品のイメージに反して過剰とも思えるグロテスクさ、不気味さ。すっきりと解釈できないストーリー。消化不良の感覚と、残念な気持ちもあった。これまでのジブリ作品からの引用表現に溢れていたが、それらは細切れで脈絡がなく、空相的な表現がリアリティを持つに至るための基盤を作れていない感じがした。宇宙や世界崩壊の壮大なイメージは新海誠等の最近のアニメから影響を受けたのだろうか、薄っぺらく感じてしまった。テーマ曲の米津玄師もピンと来なかった。何より、「かっこいい」ものが何一つ出てこなかったこと。何だあの大伯父の髪の毛は。ワラワラの中途半端なかわいさは。

直後の感想はそんな感じだったのだが、一週間程映画の余韻に浸っているうち、じわじわとよさが実感されてきた。いちいち細かいところに文句を付けても仕方ないように思えた。この作品はこうであるしかなかったのだ。自分は、ただ整っている心地よさを期待して、貧弱な理想の型に押し込めようとしていたに過ぎなかったのだろう。

アカデミー賞を取ったことは驚きだった。面白いことが起きた。

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