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ラスト・ホステス

 はじめましての人も、
 前から知ってる方も、
 ごきげんよう。

 偏光です。

 貞淑、とか、一途、みたいな概念は、
 本当のところ単なる愛情の、
 種類の問題な気がするんですよ。

 好きになったら全エネルギーを、
 捧げ倒してご奉仕します!
 みたいな奴が、

 生涯に愛せる相手はそりゃ、
 せいぜい一人か二人でしょう。

(文字数:約2000文字)



子はいないがそれが何だ

  ところで我々夫婦には子がいません。

  実母はともかく、
  お義母様からも叔母さんたちからも、
  「仲良うしぃや〜」と心配されていますが、

  おかげさまで仲は結構悪くない。

  とは言え入籍当時ちょうど40歳だった配偶者は、
  干支も一周経て折からの経済不況も重なって、
  今後は望むべくもなかろうと諦めモード。
  出来た場合には産む方向性ではいますけれどもね。


故郷の遺伝子の恐ろしき

  実は私には心当たりがありまして、
  配偶者にもほのめかしたところ、
  「それは他所では言わない方が良いよ」
  とたしなめられましたけれども、

  今や何をか包み隠さん、
  とまでタメる必要はないのですが、
  この流れを機に書き残してしまおうかと。

  実は私が、
  ひと目見ただけで心奪われ、
  そばにいる間は目で追いかけ続け、
  一夜で構わんから共に過ごせはしないかと、
  妄想が湧き上がってしまうタイプは、

  ハゲで小柄で浅黒く日焼けした筋肉質で、
  小さくとも自分の船を持つ、
  故郷の九州で良かにせ(青年)と称されるところの、
  海の男なんだよ!

  若い頃からそうした男性を選べていたなら、
  中学時代から安産体系の私だ。
  子など半ダースは産めた自信がある。

  おそらくはソイツが遺伝子的な設定では、
  私の人生になるはずだったな。

  翻るに私の配偶者は、
  髪フサフサで色白で、
  真隣に立ち並ぶと首が痛くなるほど背が高い。

  見た目だけなら他人から羨ましがられたりもするが、
  実を言えば私本来の遺伝子的好みとはかけ離れている。

  ……んだけどもぜんっぜん構わないのー♪
  だって錯乱状態のクロコちゃんに出くわしても、
  ちょっと怯んだだけで付き合い続けてくれる人なんて、

  他にいない事もないかもしれないけど、
  そう多くない事くらい分かってますっ!


愛情には現実が不可欠

  つまり私は自分本来の遺伝子的な設計、
  言い換えるならば運命を、

  精神的に壊れかけた事により、
  別性の別人格に感じ取れるほどに、
  強靭化した理性によって、
  打破し覆すことが出来たわけだよ。

  今現在の理性で考えれば、
  故郷的な海の男とその一族に、
  今の私が合わせ切れるわけねぇ耐えられねぇ。

  海の男の方でもどんどん目が肥えやがって、
  田舎くさい安産体型な娘なんぞ、
  歯牙にもかけねぇだろうけどな。

  単純な妄想で言ってねぇぞ。
  「男に生まれるべきだった」って、
  私は4、5歳頃から親父の晩酌に付き合わされて、
  家を訪ねに来る酔っ払いおっさんたちの、
  愚痴や本音を何でかこぼされまくってきてんだ。

  もしかして港の女になれていたら、
  相当なホステス能力を有していたな。

  一人一人は憎めない連中かもしれねぇが、
  妻や子供を大事に扱えてるかって考えたら、
  どうにも残念な奴らだよ。哀しいかな。

  二日前の記事に書いた父親の暴言も、
  要するには息子的な信頼を置いての事だが、
  目の前にある紛う方無き現実として、
  私は娘なんだよ。

  愛情ってやつは実態を言えば、
  暴走しまくった狂気で、
  他人様に快く受け取ってもらうためには、
  現実の真摯な見極めが欠かせねぇんだ。


運命には従わなくても構わない

  と、言うわけでここ2、3日の記事を、
  ざっくりまとめた結論を書き残したいのですが、

  運命に従う事が必ずしも、
  今現在の自分にとって幸せになるとは限らない。

  子が持てる事が必ずしも、
  その夫婦にとっての幸せであるとも限らない。

  私と配偶者の場合は、
  日々の深刻なニュースにカントの哲学に、
  サイクルロードレースチーム、
  ユンボヴィスマのトレーニングスタイルまで、
  語り合って特にお互いの意見を否定もし合わない、
  他所では珍しい価値観を共有できているからな。

  子がいたらそりゃ相手の話だけに、
  真摯に耳を傾けるのは難しかっただろう。

  そして運命を覆す力を得るには、
  実は煩悩や呪いの蓄積が、
  結構役に立ってくれたりもする。

  だからと言ってもちろん、
  呪いを身に浴びながら育ちたかぁなかったんだが、
  せっかく身に浴びちまったもんは、
  有効活用してやろうぜ。

以上
ここまでを読んで下さり有難うございます。

何かしら心に残りましたらお願いします。頂いたサポートは切実に、私と配偶者の生活費の足しになります!