見出し画像

日系クリニック・リノベーションデザイン(1) | カンボジア・プノンペン【Vol.23】

2013年にカンボジア進出に伴って現地で生活をはじめた頃は、私は不衛生な生活環境への免疫力がそれほどなく、よく高熱を出すなどしていました。

しばらくするとドローカルな路上の屋台でごはんを食べてもビクともしなくなるのですが、その頃はカンボジア人医師のクリニックに行くのは流石に抵抗があり、日本人医師の奥澤先生によくお世話になっていました。

発展途上国で生活するに当たって一番心配するのは、やはり医療面の充実ですよね。

今では日本人医師常駐の病院やクリニックがいくつか出来ましたが、まだこの頃はほとんどいらっしゃらなかったと思うので、奥澤先生の人柄もあって、皆さんから絶大な信頼を受けておられました。

ある時、奥澤先生が運営するKEN CLINIC様の移転話しがあるという事で、お会いしてお話しする機会があり、当時使用していたクリニックの契約更新の時期に移転を考えていて、移転先を探しているとの事でした。

プノンペンの建物は契約更新時に信じられないような家賃の吊り上げが行われ、店舗系の人は苦労されていました。

しばらくして移転候補地のご連絡があり、イオンモールプノンペン1号店近くに建設中のホテル1階で検討したいとの事でした。

面積は大きくありませんでしたが、ホテルロビーの延長線上にある上質な空間で、天井も高く、悪くない物件です。

私たちはラフ図を作成し、奥澤先生と打合せを重ねるのですが、当時使われていたクリニックの機能を集約するには、手狭だったので、何かの機能を省くしかありません。

結局、この場所への移転は見送られ、しばらくするとプノンペン中心部の人気エリアであるバンケンコンにあるフレンチスタイルの大きなヴィラ(住宅)が候補になりました。

私たちは、ひとまず以前のクリニックの機能を今回のヴィラに入れることが出来るかラフ図を作成し、良い感じに納まったので、奥澤先生はここへ移転することを決められました。

場所がとても良く、敷地も大きく、ゆったり優雅な空気が漂っていて、カンボジアに駐在する日本人や場所柄から欧米人なども多く利用することが予想され、私たちもこの場所をとても気に入りました。

クリニックという用途の性質上、機能面や衛生面を第一に考えることが求められ、もちろん工事予算には制約があり、好き放題できるデザイン訳でもありませんが、カンボジアに進出してから海外では実務的なお仕事を地道に取り組んでいて、デザインスキルを披露する機会に恵まれていなかったので、途上国でデザイン優先度の高い、ようやく訪れたチャンスと言えます。

一方、これまでカンボジアで苦戦しながら、日本人としてこの地でデザインスキルを披露する、強みを出していくにはどうしたらいいか悩んでいました。

カンボジアでは古い建物を壊して新しい建物を建てる「スクラップアンドビルド」が主流でした。

以前に日本語情報誌プノンの木村さんとお会いした際に、プノンペンのショップハウス(3〜4階建ての連棟)などの街並みのフィールド調査を継続している行なっている近畿大学の脇田先生の活動をご紹介いただき、帰国した際にお話しをお聞かせいただいた事があり、プノンペンの建物にある大きな価値を認識していました。

私は古い建物を活用するリノベーションに、日本人デザイナーとして、私の経験が活かせる、活路を見出せないかと考えているタイミングでもありました。

新築は、言ってしまえば誰でも出来る、リノベーションは地味だがスキルと経験が必要です。タイミングよく私たちのスキルが生かせるお仕事に出会えて、尚更、クリニックのお仕事に気合いが入りました。

「カンボジアのリノベーション文化定着に貢献できるなら、それも良いことだ。」

ちなみに、今回のケースは専門用語的には「コンバージョン(用途変更して建物を再生させる)」と言います。

私たちは気合いを入れて基本設計に取り掛かりました。
続く…

#コラム #仕事 #建築設計 #リノベーション #海外進出 #アジア

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?