泉さんは人殺しも上手

   空き巣に入った先で人間の解体作業が行われていた、という事例は、この世にどれだけあるだろう。しかも、学生時代の同級生と再会するというオプションつき。
「東田さん、お金欲しいんでしょう。少しは出せるからさ、手伝ってよ。それで空き巣の件はチャラ」
   と、泉さんは言ってのける。ノコギリを持つ手を休めないそのさまに、昔からテキパキした子だったと思い出した。
   青いビニールシートが敷かれた風呂場には、人間の男性だったらしき肉塊が転がっている。まるまる一体分。女ひとりでの作業は確かに骨だろう。死体だけに。
   泉さん宅から素早く逃走できないものかと考えたが、わたしが持っているのは脅しのためのパーティーグッズ・ニセナイフで、彼女が手にしているのは本物のノコギリだった。いままさに眼前でなかなかの切れ味を発揮している。高校時代、彼女は優等生で、わたしは落ちこぼれだった。いやあ、こういうところでも差がつくものだ。

【続く】

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