見出し画像

事例でわかる!ハローワールドの就労移行支援~統合失調症・Bさんの場合~

こんにちは、ハローワールドnote編集部です。

今回で3回目となる、『事例でわかる!ハローワールドの就労移行支援』。利用者さんが就職に至るまでのストーリーを、間近で見てきた支援員と一緒に紐解いていきながら、ハローワールドの支援内容について知っていただくマガジンです。

今回は、担当支援員の「松橋さん」と一緒に、とある統合失調症の利用者さん(以下、Bさん)の事例についてご紹介します。

「就職はしたい、でも何もわからない」からのスタート

画像2

Bさんがハローワールドにはじめて訪れたのは、昨年の夏のことでした。「親の金銭的負担を軽減したい」という理由で就職活動を行おうと決めたというBさんでしたが、その表情はどこか不安げでした。

それもそのはず、Bさんはこれまでほとんど働く経験をしたことがありませんでした。高校卒業後に、2度のアルバイト経験。期間はどちらも2ヵ月足らず。それが、Bさんのこれまでの社会経験のすべてでした。
「働きたい」という気持ちはあるけれど、働いている自分がイメージできない―。そんな気持ちからか、希望する仕事の内容や得意なことなどを聞いても、歯切れの悪い答えが返ってくるだけでした。

社会経験のない利用者さんの「?」を解決し、就職活動や就職後の暮らしについてのイメージを明確にするのも、支援員の大切な役割です。Bさんには、安定した通所を通じて生活リズムを整えながら、まずは「働く自分」のイメージを持ってもらおう。そんな方針のもと、Bさんの支援が始まりました。

「働きたい理由」は「好き」の中にあった

Bさんが最初にぶつかったのは、生活リズムの安定という壁でした。生活リズムを安定させるためには、日中眠くても起きていたり、夜更かししたくても決まった時間にベッドに入るなど、本人の努力がもちろん必要です。しかしBさんを見ていると、その努力をするだけのモチベーションが十分でないように感じられました。

しかし考えてみれば、それは当然といえば当然です。「働いて何かを成し遂げている自分」の姿が想像できない中で、見えない目標に向かって努力するのは容易なことではありません。そのため、彼女の生活習慣改善のためには、ただ「朝起きて通所してください」と口酸っぱく繰り返すのではなく、別のアプローチが必要だと考えました。

何がBさんにとって、働く理由になりうるだろう?彼女が「働いて成し遂げたいこと」とは?
そう考えたときに思い浮かんだのが、彼女の「好きなもの」でした。Bさんはとあるアーティストを熱心に応援しており、夜型の生活リズムもそのアーティストの出演している番組を観ていることが理由でした。この「好き」が、彼女に働く自分の姿をイメージさせるきっかけにならないだろうか。そう考えた松橋さんは、彼女と話をしてみました。

吹き出し2

家族の金銭的負担を軽減したいというBさんの思いが本心でなかったとは決して思いません。しかしその時のBさんにとって最も強く望む「成し遂げたいこと」は、「好き」を追いかけることだったのです。それに気づいてもらい、「働く自分」のイメージを具体的にすることで、通所や訓練へのモチベーションを高めてもらいたいと考えた松橋さんは、彼女にそう伝えました。

「自分は必要とされていないんだ」という思い込みとの闘い

「好き」の力は偉大でした。「働いて、自分のお金でライブに行きたい」という目標を定めたBさんは、みるみるうちに生活リズムを改善し、安定して通所ができるようになっていきました。その頃には様々な職業訓練を通じて自分の得手不得手も理解しつつあり、着実に就職に向かって進んでいると松橋さんは実感しました。

自分の仕事ぶりに自信がついた頃合いで、障害者雇用での就職活動が始まりました。しかし初めて正社員としての就職活動を行うBさんにとって、それは決して優しい道ではありませんでした。

Bさんの障害名は「統合失調症」でした。統合失調症の症状の一つとして、被害妄想的な思い込みや、自分を攻撃する幻覚・幻聴などが挙げられます。そんなBさんにとって「不採用」という通知は、まるで「自分は社会に必要とされていない」という通告を突きつけられているように感じられたそうです。

そんな時にBさんを元気づけてくれたのも、大好きなアーティストの存在でした。「絶対に就職して、自分のお金でライブに行くんだ」。そう決めたBさんは、どれだけ落ち込んでも諦めることはしませんでした。粘り強い就職活動を続けるとともに、ハローワールドで行っている「認知(ものごとの捉え方や考え方)」を見つめ直すプログラムを積極的に受講し、少しずつ「自分は周りの人から必要とされていないんだ」という思い込みを和らげていきました。

気が付けば、彼女は驚くほどに強く、前向きになっていました。そこには強い意志があり、入所当初の「何もわからない」という様子とはまるで別人のようでした。

就職はゴールではなくスタート

画像3

その後彼女は無事、希望する職種での就職を成し遂げました。念願の就職に喜ぶBさんに、松橋さんは敢えてこう言いました。
「就職はゴールではなくて、スタートです」

ハローワールドが目指しているのは、利用者さんに就職してもらうことではなく、「就職・就労を通じて、その人のよりよい幸せを実現すること」です。たとえ就職を成し遂げられたとしても、その先に幸せが待っていなければ、企業としての役割を果たしたとは言えません。Bさんにとっての幸せ、「好きなものを自分のお金で好きなだけ応援する」を叶えるためには、ここがゴールだと思ってはいけない。そんな思いで、松橋さんは言葉をかけたそうです。

自分の力でスタートラインに立ったBさんは、今度は自分の力でゴールに辿り着くため、定着支援を利用しながら仕事を続けています。
「母親と一緒にライブに行きたい」という彼女の目標が実現されるのも、そう遠くはなさそうです。

------

以上、「好き」をエネルギーに、困難を乗り越え就職を果たしたBさんの例でした。

ハローワールドで就職された方の中には、今回のBさんのように「これまで働いたことがないんだけど…」という方も多くいらっしゃいます。年齢や経験などから「自分には無理だ」と就職を諦めてしまっている方も、一度見学にお越しいただければと思います。

私たちハローワールドは、関東エリアを中心に就労移行支援事業所や自立訓練事業所を運営しています。今回登場した支援員・松橋さんが在籍している吉祥寺事業所をはじめとして、各事業所にて見学や相談を随時受け付けております。少しでも興味がある方は、是非ホームページをご覧ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?