お風呂でクリームソーダ

わたしと母はあまり仲がよくない。というか、はっきりわるい。それはわたしより母のほうが仲わるいと主張するくらいだから、わたしがきらわれているパターンが主だ。慣れている、子どものときから母は怒りっぽい。

いつのまにかわたしは我慢する力が弱って、母の怒り、おそらく軽い、たわいない憎しみというか嫌悪程度のものをものすごい憎悪でもって返す、でも暴力ではしない、一言二言でバサッと斬り返すようになった。

アホだけどそんなんはできるのだ。ぜんぜんすっきりしない。むしろもっと嫌われる。当たり前だ、傷つけるつもりだものこっちは。

母がわかってほしくて、わたしにきついこというのかなってだんだん思うようになった、最近やっと。

むかしのわたしは仕返しの言葉とかそんなしょうもないことしなかったし、できなかった。相手が傷つけてきてもわたしがこんなだから、としょげて、ときどき泣いて、終わり。

時間があまりない。女はたいへんだ。入院しなくても常時どこかおかしいのが女と思う。過剰な生き物だって。わたしは母を母でありつつ、女で、あたりまえに不安定だというのを長いことすっとばしていた。自分だって自身の振幅のでかさ?わけのわからなさに振り回され、それってどうやって内側の女を乗りこなしたらいいかわからなくて、途方に暮れて、入院になったっていま思う。似てるじゃないか、全然わからないことないじゃないか。

少しおとなしくなった。私が。何か言われてもふーんと流すようになった。

部屋が静かで。みんな老いた。

夏になって、母が「クリームソーダが飲みたい」と言った。

最近見かけない、どぎつい緑の。バニラアイスが上に乗った。若い頃、暑い日に喫茶店に入ったらかならず飲んだという。

作った。クリームソーダ。丈の高いガラスコップにかき氷のメロンシロップを多めに注入、それからつよめの炭酸水をシュワシュワ。冷凍室から、ひとつ氷。レディボーデン・バニラ。運よく半額だった。スプーンですくって。居間のテーブルに持っていった。それだけで母は喜んでくれた。パクパク食べて、でも母は子どものとき盲腸でおなかを切ったから冷えやすい。

「こんど、お風呂に持っていってやるよ」と言った。あったかくして食べたら冷えるのあんまりないんちゃうか。

母ははあ?という顔をして、文句を言いだした。ひじょうしきとか。わたしはまた聞き流す。

その晩、わたしがお風呂でクリームソーダ食べた。すごいおいしい。風呂でアイスなんて、生まれて初めて食べた。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

そろそろ自分で自分にサポートしようかと思います…(´;ω;`)

ありがとう!がんばります
6
グラフィック・ノベルを描くことが生き甲斐です。バイトをしながらマイペースでm(__)m

この記事が入っているマガジン

母とのおもいで

母とのおもいで

  • 1本
コメント (1)
夏に下書きのままにしていたのを読み返して、(いいかも)なんて思った。不安定な母、でも努めてふつうのひとになろうとしてきた母、毒とか呼べないしいい思い出も多いので『母とのおもいで』に収録していきます──あまり時間が残されてないとほんとうに思うので。m(__)m
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。