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9.1「King Gnu Streaming Live」1,000字レポート

King Gnuのストリーミングライブを後追いで視聴。

オンラインライブもかなり定着してきた中、各ミュージシャンのライブのスタイルが概ね2パターンに分類できるようになってきた。1つは6月のサザンみたく、いつものライブをいつも通りに行うスタイル。もうひとつは先日のサカナクションやELLEGARDENに代表される、オンラインならではの表現や普段とは形の違うライブを追求するスタイル。どれもミュージシャンのライブやオンラインに対する考えが如実に反映されていて面白い。

それを踏まえて、今回のKing Gnuストリーミングライブは徹底して普段通りのKing Gnuのライブが展開された。小手先の演出無し、70分一本勝負のストロングスタイル。これはひとえにKing Gnuの曲の良さ、メンバーの地力があるからこそのスタイルだ。曲が持つパワー、メンバーのひとつひとつの巧みな演奏が無ければ成立しないライブだった。

常田のディストーションが掛かりまくったギターが歪む「飛行艇」に、クラシックのように美しいキーボードが響いた「The hole」。新井のスラップベースが冴える「Hitman」。全編に渡って土台を固める勢喜のドラミングが生み出す圧倒的なビート。そして「白日」に代表される井口の繊細で伸びやかなファルセット。これらメンバーの演奏力が一体となって生み出されるオルタナティヴなサウンド。なのに着地点はしっかりポップネスなのがKing Gnu最大の魅力。

1曲目の「Flash!!」はコロナ禍でボロボロになった世界を再び照らし出すアンセムとして響き渡っていたし、終盤の「飛行艇」にもこの時代だからこそ一層強く心を揺さぶられる。目元を黒く染めて拡声器で歌う常田はさながらレジスタンスのトップ。スモークが満ち、赤いライトが照らし出すなかで民衆に向かって「open your eyes」と叫ぶ姿はこの世界を救うヒーローに見紛うほど。

思えば彼らの最新作のタイトルは「CEREMONY」。このアルバムを引っ提げたレコ発ツアーも延期となった彼らが、ストリーミングライブという形を使って元の世界を取り戻すための「儀式」を行ったのではないか、なんて妄想も膨らむ。

オーラスの「Teenager Forever」の圧倒的な幸福感でライブを締めたことも、彼らと僕たちの物語がまだまだ止まらないことを暗示させていて心地よい。怒りも悲しみもオルタナティヴ·ロックに変え、ポップスに昇華する彼らのタフネスに勇気を貰った70分だった。

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