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法律事務所のDX化がもたらしたもの

1 Society5.0

日本政府により2016年1月に打ち立てられたSociety5.0の旗は、何者かが「想像力」「創造力」で踏めることに気づいたことにより加速し(例えば2019年1月30日付経団連資料の5頁)、いまでは「DX」というバズワードとともに日本を飛び回っています(なお、当然ながら「想像力」「創造力」では踏めていないと解するのがヒップホップマナーとしては標準的と思われます。(私見))。

来るべきSociety5.0に向けて、法律家としてはやはり趣旨・目的に立ち返って「DX」と向き合う必要があると考えました。そうしたところ、「DX」の旗は、①コストを減らす、②ストレスを減らす、③提供価値を高めるという法律事務所forkのそれと完全に同じ色をしていることに気がつきました(※法律事務所forkとは恵比寿にある6期目の法律事務所です。)。

「DX」と同じチームであると気づいた法律事務所forkは、クライアントのDX対応支援はもちろんのこと、自らも「DX」化する必要があると気付きました(そうしないと崩玉を従えた世界を生き残れません。)。これが昨年のことです。

2 DX化

法律事務所は原則として自らビジネスを行わないため、法律事務所の「DX」対応とは、端的に「クラウドサービスを利用する」と言い換えることが…できてしまいました。DXと表現する必要はありませんでした(私見)。

ともあれ、具体的には、コミュニケーションサービス(slack、G Suite等)、法務SaaS(電子契約、リーガルテック)、税務・会計SaaS(マネーフォワード、freee等)、労務SaaS(SmartHR)、Web会議サービス(Zoom、Google Meet等)、業務管理サービス(Kibela、Trello等)などを利用して、①コストを減らす、②ストレスを減らす、③提供価値を高めるを実現していくことになります。うまく合わなかったものもあれば、いまではかかせないサービスもたくさんあります。

これらにこだわってきたことにより、運よく私たちはコロナ禍にも従前と変わらない勤務体制のまま仕事をし続けられました。

3 DX化に向けた障害

法律事務所のDX化…クラウドサービスの導入においてはいくつかの障害があり、これを乗り越える必要があります。投資判断のための情報収集やサービス間比較も簡単ではない場合があります。既存システムからのスイッチングコストが高い場合もあるでしょう。

私たちは「詳しい人に聞く」という方法でこれらの困難を乗り越えました。そして、自ら様々なサービスを導入したり導入支援をするようになりました。

そうしているうちに、DX化の障害のほとんどは、適切な情報収集と合理的な意思決定ができる限りは障害と呼ぶに値するものではないと気付きました。たった一つを除いて。

DXの障害は実は人的要素でした。

端的に、組織内に「分かっている人」がいないとせっかくのテックも使いこなせないという事象が発生しがちです。使いこなせなければ、①コストを減らす、②ストレスを減らす、③提供価値を高めるが達成できません。サービス提供者からの積極的なオンボーディングを受けることができる場合もありますが、やはりそれも組織の中に「分かっている人」を置くための手段でしかありません。

気づいたら私たちは「詳しい人」側に少しずつスライドしていました。そして、私たちはリモートで常駐する法務受託というサービスを提供してきたことから、ついには組織内にいる「分かっている人」として価値提供をする場面が発生し始めました(例えば人事労務分野の神サービスSmartHRの説明をするときは大変心地よく手慣れてきました。)。

(ちなみにDX化にまつわるあれこれの続編は属人化です。テックを導入することによって属人化を排すると言われることも多いですが、結局のところ「分かっている人」の重要性が増して新たな属人化が発生します(この点に関連して、マニュアル不要であることの価値について語られることは増えていますが、これに加えて、カスタマイズ不要の価値は大きいと最近よく思います。属人化の余地を減らすので。)。なお、この属人化を解消する方法のひとつとして、「人ではなく組織にノウハウを蓄積する」という手段があると考えています。そのような考えのもと法務受託を行っています。)

4 法律事務所のDX化がもたらしたもの

と、隙あらば自分語りをしてしまう癖を排して、広く業界全体を見渡して終わりたいと思います。

先日、法律事務所はどのくらいDX化しているだろう、法律事務所のDX化は何の夢をみるだろう、という点に関する現時点での結論を持つに至りました。

法律事務所のDX化がもたらした美しい光景です。

9月に入り、エンタメロイヤーとして活躍されている方々との定期密会を行いました。平日昼間の下北沢の出来事です。なかなか面と向かってお話をする機会が取れない中で久しぶりに会合を行い、いつものとおり有益な情報交換や意見交換を行いました。その打ち合わせの待ち合わせ場所での出来事です。

お互いの服装を見合った私たちは、互いをプラクティカルに「分かっている人」と了解し合いました。DXはすぐそばまで来ています。

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