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【知らなくてもいいが,関心は持て】

この記事は,僕が実際に塀の中で非行少年たちに語りかけた内容を,記憶をもとに文字起こししたものです。

塀の中の教室の空気感を想像しながら読んでもらえたらうれしいです。

この記事が,あなたの人生のどこかで役に立つことを願って。

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今日はなんの話をしようか…まぁ8月に入ったからな,少し真面目な話をしよう。戦争の話だ。

8月はきっと,新聞やテレビでも戦争の話題が出る。もしかしたら週末に見る映画でも戦争に関するものがあるかもしれないな。大事な話だから今のうちに聞いておいてほしい。

俺はもう何年も,少年院で8月を過ごしている。毎年この時期になると戦争の話題が出て,君たちの先輩と一緒にそのことを考えてきた。

で,

映画や新聞で戦争の話題に触れたとき,君たちの中から一番よく出てくる感想が「戦争のない時代に生まれてよかった」ってやつなんだよな。

別にそれは否定しないけど,正直,そんな感想しか言えないようじゃだめだと俺は思ってる。

戦争は悲惨,だから昔は大変。
今は戦争がない。
だから今の俺は恵まれてる。
幸せ。

そんな短絡的な話で終わりにしてほしくないわけだ俺は。

そもそもね,日本人はタブーにしがちだけど,宗教や文化,経済と戦争は,現代社会を考える上では絶対に避けて通れない。現代人の基礎教養。

今知らないことは悪くない。
無理やり今勉強する必要もないかもしれない。

ただね…

この先の人生でそれらの話題が出たときに「堅苦しい話には興味がねぇ」とか言って無関心ではいけない。それはバカのやることだ。

知らなくてもいい。
関心を持て。

…せっかくだから,8月になると必ず話題になる戦争が,今の我々の生活にどう関わっているかを少し話しておこう。ま,気楽に聞いてくれればいい。

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放デイのスタッフをしながら、わが子の非行に悩む保護者からの相談に応じたり、教員等への研修などを行っています。記事をご覧いただき、誠にありがとうございます。