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同人活動に憧れた私が辿り着いた場所。

私のオタクとしての自我の芽生えは、中学2年の頃でした。
クラス替えをきっかけに仲良くなったMちゃんは、性格も話し方もおっとりしていて優しくて、将来の夢は保育士さんで、そしてオタクでした。
漫画やお笑いの話で意気投合した私たちは隣町の彼女の家でよく遊んだのですが、その時に見せてもらった「同人ペーパー」に衝撃を受けました。
「同人誌」と言う物の存在や「BL」と言うジャンルの事は知っていましたが、紙1枚で成立する「同人ペーパー」の事は全く知りませんでした。
「ペーパーって紙のこと?」と思う方もいるかと思いますが、ここでいう「ペーパー」は今風に言うと「オタクが発行するフリーペーパー」と言ったところでしょうか。
新刊既刊同人誌の紹介、好きな作品やキャラクターの萌えポイント、または近況などをまとめた物です。
Mちゃんは読み終わったペーパーや当時のペンパル(文通相手)から配布を頼まれたペーパーを大量にくれたのです。
ここでこれを読んでいるヤングな皆様に説明すると、個人情報観念がガバガバだった当時は己の住所氏名を雑誌等の文通相手募集コーナーで
晒すことに危機感を感じない人が沢山いたのです。
その頃発行された同人誌は「奥付」に作家の住所と本名を載せていたものです......今考えると恐ろしいですね。
そうやって文通をし仲間を増やすしかなかった年季の入ったオタク達は、自分が作ったペーパーを同ジャンルの友人知人と交換したり、配布してもらっていたりしたのです。
その後オタクたちはホームページを作りBBSで交流し活動の幅を広げて行き今に至るのですが、私は今もこの「ペーパー」と言う物が大好きです。
内容もデザインも出力方法も自由で、作る人のセンスや情熱が感じられる創作物だからです。
今不定期で発行し、イベントや通販の際にお渡ししている「並行世界通信」はそんな気持ちで作っています。

そして私が更に強い憧れを抱いていたのは「同人誌を発行しサークル活動をする」と言う行為でした。
自分の好きな作品やカップリングを自分の世界の中で動かしそれを1冊にまとめ人に読んでもらう...夢のようだと思っていました。
実際、10代の頃何冊か同人誌を作った事はありますし同人誌即売会にもサークル参加したのですが、自分は漫画が描けないと言う事に気づくまでにそう時間はかかりませんでした。
気付いてから認めるまでに相当時間はかかりましたが。
あの頃思い描いていたものとは異なりますが、「並行世界」と言う名前で物を作り発表すると言うある種サークル活動のような事をこの歳になって全力で楽しむとは中学生の頃の私は思ってもいませんでした。
何故なら、大人になれば自然にオタクではなくなり(何になると思っていたのか)良い人と出会い恋愛し結婚し幸せな家庭を営むという「大人として当然コース」に自分も乗っかれると信じていたからです。
今思えば、「大人になれば当然そうなれる」と言う考え自体が幻想にすぎませんでした。
そしてそれが叶っていない今が不幸だとは微塵も思いません。
そうなっていたら今とは違う幸せがあったでしょう、しかし今の活動をしていなければ自分の作品をこんなに多くの方に知ってもらう事などなかったと思います。
そもそも今のように働きながらコンスタントに作品を作り続ける事はできなかったでしょう。
私を深く暗く居心地の良いオタクの世界に引きずり込んだ張本人、Mちゃんとは別々の高校に進学しました。
オタクとして更に進化を遂げた私と違い、Mちゃんは女子高生ライフを謳歌しオタクを脱却、保育士になる夢を叶えました。
もう20年近く連絡をしていないので今現在どこで何をしているのか見当もつきませんが、きっと私が中学生の頃に思い描いていたような大人の女性になっている事でしょう。

一方この歳になってこの活動が楽しくて仕方のない私ですが、いつまで続けて行けるだろうと言う不安は常に感じています。
今は専業兼業問わず個人作家さんが多く存在し、クリエイター作品の需要があります。
ハンドメイドブームはピークを過ぎたように感じますが、まだまだ展示即売イベントは沢山開催されていて作品をご覧頂く機会が多いので作家として有難い限りです。
しかし、この状況もいつまで続くのか分かりません。
大きな環境の変化だけでなく、私個人の家庭環境や体調の問題などにより、いつかは今のような活動できなくなる日が来ると思っています。
はたまた何らかの出来事により「もう辞めよう」と思う日が来るかもしれません。

先の事は分かりませんが今言える確かな事は、自分でやりたいように活動しつつ、それを見てお仕事を依頼してくださる方がいらっしゃる今が、間違いなく私の人生で一番幸せだと言う事です。

お仕事としてデザインをしてみて、改め自分に足りないものが多くあると痛感しています。
それをただの過去の経験にせず血肉として今後の活動に生かし、この幸せが少しでも長く続くようにしていきたいと思っています。

中学生の頃の私、大人の私は楽しくやっているよ。

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