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物語

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#音楽

仰げば尊し

チェリーブロッサム 馬鹿みたく咲き誇る 春だからって 許してあげない 写真を撮るなら なんか言ってくれよ 黙ってちゃそれもう 盗撮だから 決まって君はもう気まぐれで スケべな話はNGで ぼくは ダサい髪型をけなされて アハハハって笑う 初めましてって言った日から すべてが始まって 触れたりはできないままで 仰げば尊し 壊れちゃうのが怖いだけな 弱虫意気地なし せめて名前呼んでくれよ 仰げば尊し 初めましてって言った日には 実は何も始まってなくて 今がチャンスと息を飲んだ

通らなくていい道

微妙

咲いても咲かなくてもいい 微妙な温度の中で花は 見たことのない花びらの広げ方を 何度も何度も夢想しながら 届かない距離にある空から落ちる 酸性雨を飲み干してしまう 甘くも辛くもないだけに とてもおいしく、飲み干してしまう

放課後

改行してからというもの 後先考えずに走った 動けば辿り着くなどという 迷信を間に受けたのだろう 先生たちはきらめきを 若気の至りと毒づく 春は青くなどないという 悲しむブルーの吐息で 頭から離れた言葉は 永遠に戻らない 並列になっている樹木 逆さまで見下げる空 サラダは買うと高いぞ 大人になるまで知らずに 子供は今でも知らずに

奇妙な山脈

あの稜線をなぞって こちら側の麓まで 足腰の期待を背負って 今は目もやれない けど、けれどもとまだ 言い訳をつなぐ 甘やかされて育った人はやさしい 奇妙な国に生まれて 奇妙なサラダを食べて 見晴らしの良い場所まで 駆けて駆けて 奇妙な模様の雲や 奇妙な歌の節々 言葉が増えてもまっしぐら すぐにまた原っぱ

zip.

痛みを携えてくる 預言者たちはお利口で 出前を受ける直前に 扉開けたその隙間から 増える未来を裏切って 祭壇に逆立ちしたまま 時を経ていた、それにさえ まだ気づかずにいたけど 擦れて 燃えて 途切れた後 海面に浮かぶ幻が 強くも 弱くも どちらとも あるような光色で すると今や露わ 言えない言葉と涙が 恐ろしいほど溢れて 誰しもが虜、でも とても恐怖はない

ノーパーク

同意もなく夜がまた 新しい陰を塗り潰して 能面のアスファルト転ぶバイク 飴細工のようにはいかない手首 仕組みを教えてくれない言語の罠に おおよそすべてがすっぽり被さり ウトウトしている黎明期のように

風邪とパクチー

フロンドガラスに垂れた唾 だれかのつまらなさが 思いのほか気に障り 若くして嘆く彼は今 良くないことの想像に もっと力を尽くしてほしい 当たり前に触れた場所が いつのまに熱に浮かされて 冷えピタの湯気の中 チマキを解く指の背が 滑らかになっていく あなたの嫌いな食べ物を 今はたくさん食べている

エイトビート

壊れた直後の頭揺らし マスターピースの欠片たち あったかい夜の真っ暗 冷やされた熱を思い出す ぱっくり割れたササクレ 見せてくれた時の光 吠えた犬を笑うより 悲しい歌歌った ハトを追いかける後ろ足 くっついたガムテープ へっちゃらな顔の真ん中に 透けるように火が渦巻く ・と・結ぶどきどき 折り合わす端の線 目薬撃つときぐらい 恐ろしい歌歌った

シュークリームたち

難しいものをそれぞれ 大切な人に使おう 腹を抱えて笑うより 言葉の中を泳ぎながら レ点で戻る日々の躓き 汚い川、泳ぐよ鯉 下手なフリをしている その優しさに光が刺さって 難しいものをそれぞれ 念仏のように話そう エロくて太い夜の淵 踊りながら帰る朝

整頓された幸せの後ろ足から ヒンヤリした地面の幻を見て 体操し忘れて眠る布団の中で ごちゃつく窓の外はもう何もない

エナメル

モーニングデビルを無視して 飲むよコーヒーぬるいお湯で溶いで 圧迫されてる肺にインさせる 漏れぬようにそっと深呼吸 朝がキラキラ 街はギラギラ 午後が冷めるまでが今日 美しいお辞儀くり返して 夜はキラキラ あなたギラギラ 数多ある層をめくりあげ 迫る脅威を愛している

月へ

飛び立つ船に唾吐いて どの面下げて帰るのか わからない素顔の正面 ラクダのような無表情 震える嵐の夜の宙 幅のない口の一文字 冷めたくるマグマの熱量 新しい街はどんな色 月へ行くあなたに 告げる言葉は何もない 月へ行けるあなたには 恐れるものなど何もない 月へ行くその朝には 古くなっていく顔を 何度も見て眠った

九龍

熱に魘されて意識が飛んで ばらばらだった太陽が1つにまとまる 命の近似値をやがて編み出して もこもこフード被って夢まで待機