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物語

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2020年9月の記事一覧

仰げば尊し

チェリーブロッサム 馬鹿みたく咲き誇る 春だからって 許してあげない 写真を撮るなら なんか言ってくれよ 黙ってちゃそれもう 盗撮だから 決まって君はもう気まぐれで スケべな話はNGで ぼくは ダサい髪型をけなされて アハハハって笑う 初めましてって言った日から すべてが始まって 触れたりはできないままで 仰げば尊し 壊れちゃうのが怖いだけな 弱虫意気地なし せめて名前呼んでくれよ 仰げば尊し 初めましてって言った日には 実は何も始まってなくて 今がチャンスと息を飲んだ

クローン少年

生まれた時から知ってる 私 誰かと同じ存在 精神的に不安定 アイデンティティが足りないから 本体を殺して オリジナルに などという考え、毛頭ない だってクローンは私の誇り アンドロイドより質が良い、筈 ルックスはイマイチ、改造できるか いつの間にか生きていて インプットされている記憶が 唯一の過去だということ 何のための存在、科学のオナニー 結局どうなるのか、死ぬか 生命なのか そもそも生物なのか でもいい、もういい お腹が空いたから私は帰る どこに帰る、どこかに帰る わから

少年

少年が口ずさむ 何気ない歌 母親がいないだとか 親父が死んだだとか 海を望める丘で 波音に通って 風に運ばれて みんな涙をこぼした 少年の嘘が響き渡り 少年は笑った 少しだけうつむいて 刺すような空の下 誰もいないのだ 少年の中には 家族と呼べる存在なんて 金を探して 眠りについて 大人になる 夢を見る でもいつも樹海を彷徨い 行く手を菩提樹にはばまれる 夢から覚めても 夢が見たくて 丘に抱かれて 口ずさむ 堕ちていく日と 昇る月を待ちながら 少年にはもう必要のない日々と そ

ブラインドドッグ

飼いならされたこの職場で 右も左もよくわからなかった 最終到達地点はあるのか 希望が滲んで何度も消えた わかりやすかった 死んだことがない我々は あんまり生きることを望まない そうだし、考えたことがいつの間にか 浮かんで消えていくわけだから それも相当つまらない よっと 長い深呼吸のあと 我に戻る 吐いたゲロは トイレの奥に流し込む 水が流れる 電車はまだある

バンド

適齢期を過ぎたなら バンドは解散するでしょう 誰かに子供生まれたら バンドは解散するでしょう ライングループが荒れたなら バンドは解散するでしょう それまでの光 最盛期など来ないまま バンドは解散するでしょう 内部で色恋こじれたら バンドは解散するでしょう 誰かが顔面殴ったら バンドは解散するでしょう それからが光

サーティーン

わたしの未来と放火魔は いつも一緒に暮らしていた 時折り行う カラダの交わり どこか 許してしまっていた 赤い空 飛べる鳥 羨ましかった あの子の笑顔 心を棲み家に 放火魔たちは いつでも気楽に生きていける ちっちゃな船で 孤島を出て行く 彼らに強く 手を振れるから 澄んだ水 そこでしか生きれない 美しい弱さを 諦められない その先にある光を なんと呼ぼうか 迫りくる闇と 遊べる仲ならば この街の暮らしを なんと呼ぼうか 燃やし尽くしてと 焦がれる頃には 選びきれな