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輝け!歳末高野竜演劇賞2018!

お待たせいたしました。発表いたします。

最優秀賞
挿し美 タイトル不明(原題「ロリータロックンロール」)

次点
劇団肋骨蜜柑同好会「犬(もしくは)神」
宇宙論☆講座「ラーメン」

女優賞
正木冴佳(きむOPAL2018「ふちのべ☆わがまち」3幕さくら役)

脚本賞
木内宏昌「人間ども集まれ!2018」(TCアルプ)

次点
田中円「雪白姫」(劇団TremendousCircus)

タイトル賞
るんげ「セメント・モリ」(肉汁サイドストーリー)

ブチギレ賞
長友美聡(劇団肋骨蜜柑同好会「草苅事件」)

はしたな賞
空風ナギ(ちち不在。「はしたないあした」)

奨励賞
てらしましめじ「明けにくい夜」(あいづち舎)

追放賞
高木登(鵺的)


講評

・挿し美さんは21歳の「観客」で、本作が初めての作、演出、出演。オープンマイクのようなイベントでコントや殺陣と混じって上演された15分ほどの小品。技術的にはとてもつたないものだったが、演劇が初めて立ち上がる瞬間の「ゼロがゼロでなくなる」興奮と稀少性で2018年中70本ほど見たうちでも突出した場でした。誰にもあったろう「あの最初の1回」を見てしまいました。
・次点2作品はいずれ劣らぬ中堅実力派。見た人全員が打ちのめされて帰ってくる。物量を支える品質と、決して捨てない後ろ向きな立ち位置。アマチュアリズムの「毒が裏返って」最先端に躍り出るという、小劇場の本質を突いた存在です。
・正木冴佳は桜美林の学生。高校生時代から「なぜかホラーぽい」のが巧かったところ、ソートン・ワイルダー「わが町」大詰めの主役(主役の死後のシーン)がぴったり填まりまして、ぜったい人間じゃない感がたたずんでる舞台になりました。
・人間ども集まれ!は手塚治虫の傑作で、再演かと思いきや後日譚を展開した新作でした。ベトナム戦争から50年経った世界で「クローン兵の叛乱と人類の滅亡」はどう描かれうるか、に果敢に挑戦。1986年の「嵐ヶ丘」を原作通りに上演した自分を少しだけ反省しました。先に進まなくては。
・次点はゴス仕立ての白雪姫ですが、とにかく二丁目で働いてる7人の小人たち(笑)が次々に念入りに魔女の口車の前に失速し屈服していくシーンのサドマゾ感が圧巻でした。
・タイトル賞。題を見た瞬間に「これは女子高生コンクリ詰め殺人事件の芝居だ!」と思い、当たらずとも遠からずの「東京漂流」(藤原新也)でした。公演会場も荒川べりの廃工場の屋上で、これ以上ないマッチングでした。
・ブチギレ賞、はしたな賞はそのまんまです。俺得でした。もう一回やってくださいお願いしますw

・奨励賞は要するに「いちばん良くなかった」舞台です。自分の能力を拡大しようとしていない姿勢が不愉快でした。才能があるだけではダメなのです。進んでください。頑張って。
・追放賞は演劇から消えてほしい存在です。予約フォームのデータをカタに、公演を批判した観客の個人情報の暴露をちらつかせて威嚇したという、普通に犯罪かつ50年近く演劇に携わってきて初めて見た卑劣な姿勢でした。顧客名簿が脅迫に使われるならば小劇場という製作体は崩壊します。二度と制作に関わってはいけない人間です。

以上になります。今年もたくさんのいい作品をありがとう。私も頑張ります!

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