謎解きイベントとは何か 1

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■「謎解きイベント」とは何か
 ここ2、3年、世間に「謎解きイベント」と呼ばれる形態のイベントが増えてきています。もともとは2007年に株式会社SCRAPが開催したファンイベント「謎解きの宴 脱出とパズルとカレーとビール」が最初と言われており、以後同社は「リアル脱出ゲーム」というブランドを構築し世界展開を行っています。参加者は2014年度で約40万人。「謎解きイベント」のパイオニア的存在となっています。

 「謎解きイベント」では、最初に参加者が今遭遇しているシチュエーションが提示され、そのシチュエーションを解決するための成功条件が設定されます。参加者は矢継ぎ早に出題されていくたくさんのパズルや暗号を協力して解き明かし、最後まで知らされない成功条件のフラグを立てなくてはなりません。

 平たく言えばこうです。

(以下、約3000字)

「あなたたちはこの部屋に閉じ込められてしまいました。この部屋は侵入者排除センサーが発動し、ちょうど60分後に部屋のいたるところから毒ガスが吹き出ます。あなたたちは60分以内にこの部屋の鍵を開けて脱出しなければ死んでしまいます。しかしあきらめてはいけません。間違って人が入ってしまった時のために、この部屋の設計者はロックを解除する方法を暗号にしてこの部屋に残していきました。すべての謎を解き明かせばきっと脱出することができるでしょう。」

 この場合は「謎を解くと脱出できる」「60分後に毒ガスが吹き出て死ぬ」という条件のみが提示されており、成功条件が明かされていません。まっとうに考えるのであれば「ドアの鍵を開けて逃げ出す」のが最善策なのかもしれませんが、もしかしたら「毒ガスが出ないように装置を設定する」のが最善策かもしれません。謎解きイベントといえばパズルをただ解くだけだという印象もありますが、ここの「成功条件を見極める面白さ」が面白さの大きな構成要素の一つであることは間違いありません。あるいみ競馬や競艇、麻雀などと似通っているのかもしれません。

 この辺りで違和感を感じる方々もいるかもしれません。「なぜ閉じ込められたのか?」「なぜ毒ガスが噴き出るのか?」「なぜロックを解除する方法を部屋内に残すというセキュリティ上問題のある方法を用いたのか?」「なぜその形式が暗号やパズルなのか?」「なぜ我々は謎を解くと生き延びる事ができると分かっているのか?」

 仰るとおりです。

 しかしそのあたりが明確に語られることはごく僅かなイベントを除いて、ほとんどありません。映画の「SAW」や「CUBE」のように、理由もわからないまま巻き込まれていく。それが謎解きイベントなのです。・・・と言い切ることができればある意味潔いのですが、60分という限られた時間内にそのストーリー上の背景まで含めて参加者に分からせることは至難の業。そのあたりは提供側の都合で割り切られるケースがほとんどです。

 このような形式をとっているのが、冒頭にも挙げましたが「リアル脱出ゲーム」を提供する「株式会社SCRAP」。「謎解きイベント」といえば、「リアル脱出ゲーム」を源流としたものを指すことが多いようです。

■「謎解き」とはなにか
 しかし「謎解き」というのは上記のようなものだけを示すものではありません。「謎解き=知的遊戯」というくくりにまで拡大すると、「謎解き」と呼ばれるものはもっと前から行われていました。その筆頭が1987年からe-pin企画によって行っている「ミステリーナイト」です。

 ミステリーナイトの多くはホテルの宴会場などで多くの人を集めて行われます。ディナー後に演劇が上演され、その過程で殺人事件が発生(事件編)します。事件編の上演後、参加者は演劇での登場人物の言動や、その後に開示される調査資料などをもとに犯人を推理し、逮捕状(と呼ばれる解答用紙)を提出。翌朝チェックアウト前にエピローグ(解決編)が上演され、配点上位者は表彰される、というものです。1994年には大人気コミック「金田一少年の事件簿」で「ミステリーナイト」をモチーフとした「異人館ホテル殺人事件」が掲載され、それからもある一定の市民権を得ていたことがうかがい知れます。

 おおむね「ミステリーナイト」では「謎解き」は動機であったり、矛盾点であったり、いわば糸がぐちゃぐちゃに絡み合った状態のものをひとつひとつほどいていく過程のことを指しており、リアル脱出ゲーム系譜の「成功条件を見極める」点とは別のものとして捉えられています。特に、「ミステリーナイト」では正解(犯人)は一つではあるものの、その動機や矛盾点など無数の「理由」を突き止めなければ得点上位者になることはできず、「想像を巡らせる余地が大きい」点もこの「ミステリーナイト」の大きな特徴のひとつだと思います。

 もうひとつあげなくてはならないのは2001年からスタートした「赤い鳥」。現在では「RUSH JAPAN」として「タカラッシュ」「リアル宝探し」のブランドで事業展開を行っています。これらは「宝の地図」をもとに「宝箱」を探すというシンプルなアトラクション要素のある遊びで、この「宝の地図」がひと目ではわからない、つまり「謎」として機能しています。こちらは「知的遊戯」というよりもアスレチック要素からのアプローチとして「謎」を取り入れている例といえるでしょう。ただしこちらは「宝探し」のため、ストーリーや設定等に深く入り込んだ「謎」はあまり見られません。

 最近ではリアル脱出ゲームの系譜をお手本にして「株式会社ムービック(アニメイト/ナゾメイト)」「株式会社ナムコ(なぞとも)」「DAS株式会社(謎解きタウン)」など、新たな企業も「謎解きイベント」を提供しています。

 今回は、体系化されている「リアル脱出ゲーム」の系譜を継いだ「謎解きイベント」についての形式の説明です。なぜならば「ミステリーナイト」は「ミステリーナイト」の形式しかなく、「ミステリーナイト」の説明にしかならないからです。。。こちらはいつか別記事で書きたいと思います。

■謎解きイベントの実施形式について
 謎解きイベントの実施形態はおおまかに「回遊型」「公演型」に分かれます。世の中のすべからくの物事が完全に分類しきれないのと同じように、この分類も人々によって異なっています。初めての人がわかりやすいように、ある程度割り切っておりますので、そのつもりでご覧ください。


*謎解きイベントの実施形式1
 回遊型謎解き(だいたい無料/時間制限なし/いつでも参加可能)

 あるていどの広さの店舗やショッピングモール、商店街などを対象に、受付所で渡された冊子などに書かれた手がかりをもとに、街巡りをしながら情報を集めるものです。「ミステリーウォーク」「クイズラリー」「謎解きラリー」などと言われる場合もあります。かっちりとした制限時間はなく、受付所のクローズ時間までにクリアできればよしとするものがポピュラーです。

 宣伝費や補助金が投入されていて無料で遊べるものが多く、顧客に参加費を徴収する場合は300円〜1500円程度の幅で参加費がかかります。参加費がかかる場合は何かしらの記念品を付けることが多いようです。

 スタンプラリーの下地もあり、気軽に参加できること、よっぽどの大人数が来ない限り参加者数に制限がないこと、人が来ない場所/時間帯に人を呼べる、といったところがメリットとなりますが、逆に参加者からすると無料で遊べて当たり前であるスタンプラリーと大差ないものであるという認識が根強いために有料での提供が難しい点、複数の店舗さんの厚い協力が必要である点など、いくつか乗り越えなければならない壁があるのも確かです。そのため、単独ではなく、もう既に人がたくさん来るイベントや店舗に対するちょい足し企画として実施することで、回遊性を高める、もしくは謎解きを通して滞在時間を長くさせ、休憩所・カフェ等の飲食にオカネを落としてもらう目的で実施するのが、最も効果の高い使い方のひとつあるといえます。


*謎解きイベントの実施形式2
 公演型(だいたい有料/時間制限あり/入れ替え制)

 ある程度の広さのクローズドエリア(会議室/遊園地/レンタルスタジオ/店舗内)などで行われます。参加者は一度に同じ場所に集められ、司会のスタートの合図とともに会場内に隠された様々な手がかりを集めて謎を解き、特定の目的を達成します。1日1回〜5回ぐらいまでの完全入れ替え制で行われます。参加型の演劇やライブなどのイベントに近いものです。

 イベントは「前説(10〜15分)」「本番(50〜80分)」「後説(10〜15分)」がワンセットとなっており、参加費は1人2500円〜3000円。記念品等は基本的につきません。

 参加者が自ら会場内を探索して様々な情報を集めるという特性上、会場の最大キャパシティの半分以下の客数しか入れられない、単価も演劇より低いので、固定ファンがつかない限り、単体での収益化はなかなか厳しいところです。

 クオリティや規模感はさておき、数人で制作可能であるという同人的な参入障壁の低さと、面白いものさえ作れれば熱狂的なリピーターを生みやすいために実施件数は増え続けています。ただし基本的に赤字もしくはわずかな黒字にとどまり、それ単体で複数人が食えるぐらいの大きな黒字になることは少ないようです。このあたりも演劇文化に近いところがあります。

 ただし、演劇のように綿密な稽古が必要なわけではないというところと、また回転数を上げる、利益率の高い物販/飲食と組み合わせる、場所代を抑える、など、取れる対策はいくつかありますので、場所や人を既に持っている会社さんなどがやると、非常に大きな収益となる可能性があります。

まとめ

 謎解きイベントの形式を上記まとめてみましたが、提供単価がある程度固まってしまっているので、そのうえで会場費・収容数・スタッフ数などを考慮しなければいけないのが現在の状況であり、単体での回収はかなり厳しいといえます。内容の面白さはある程度実証されていますので、ボランティアスタッフの活用や他イベントとの抱合せ、有名キャラクターの活用など、これからどうやって収益の改善を行えるかというのが今後の課題と言えるでしょう。


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謎解きイベントとは何か 1

たなかひろあき

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