挫折 #6

昨日の彼女の話の内容を参考にし、少しずつ実践していこうと思い、
今日も朝早くから出社です。
業務開始前に、現場に行き、試験課の課長にカイゼンの糸口があるのか、
また、計画業務は楽になる可能性があるのか、ないのか?
確認しておきたいと思っています。
7時45分、ぴったり課長が来ました。
こちらをちらっと見て、現場事務所でたばこに火を付けます。
「今日は何だ。トラブルは聞いてないなー」
「はい、実は、工程管理をシステム化したくて、ちょっとお話を聞かせて頂こうと思いまして」
「ふーん」
「ただ、工程管理をシステム化しますと言っても、予算も出ないと思うので、
予算化するためには、費用対効果のような稟議資料を作りたいのですが、
それで、先ずは課長にお聞きしたいことがありまして。」
「そりゃ、大変だな。めんどくさいことをやりたいのか」
「設計変更やトラブル時の対応を、まー、計画変更時に迅速に対応できるようにしたいと思いまして」
「はー、そりゃ、おまえが早く帰りたいってやつか」
「そうです。そうなんですけど、ちょっと勉強したんですが、
計画変更時以外にも、工程の進捗状況を把握したり、工場内の負荷を把握することで、
中長期の計画の精度を上げて、いわゆる、工場の最適化のようなことができて、
結果、オーダ毎のリードタイムが短くなって、生産性が上がったり、
すぐには、そんなにうまくいくわけ無いとは思っていますが、徐々にですね。」
課長はピンと来ていないような顔だ。ちょっと気を取り直して、
「えーと。もっと簡単に言うと、
みんな、毎朝、計画表を見ながら、現物を確認しながら、
今日はこっちをやって、とか、昨日の続きをしようとか、相談しながら作業してますよね。
夕方は、みんな図面を見ていたり、なんども資材の有無を確認したり、
計画表に進捗を書き込んだり、うまくいえませんが、
昨日、バルブの建屋に行ったのですが、ここと時間の流れがちがうというか、」
「そりゃ、おまえ、バルブは数週間でできるけどな、こっちは、何ヶ月もかかるものを作ってるんだ。
おまえからみりゃ、時間の流れが違うのは当たり前だろ」
「日々の進捗がどこからでも見えて、その進捗と連動して日々計画が更新されれば、
生産性は上がりますよね」
「あたりまえだろ、それが、おまえの仕事だろ。毎日、おまえが滞りなくだな、
的確な指示というか計画をだせばいいんだよ」
なんか、かみ合っていないようです。
「計画がころころ変わるから、仕掛かっていたものをどけたり、
おまえ、あれ動かすのに、どれぐらいかかると思うんだ」
そうなんです、ここは、作業場所の確保も重要です。複数のオーダを同時進行させようとすると、
なんども、製品を移動することになり、それだけで、かなりの無駄な時間が発生します。
「いや、それは知ってますよ。2時間ぐらいですよね。外に出す場合には、半日かかりますよね」
「あー、それは知ってるんだな。いま外で野ざらしになっているやつが、3台もあるだろ。
あれを1台再開するのに、1日はかかるぞ。再検査とかあるしな。」
「いや、いろいろ難しいとは思うんですが、まだ、うちの課長には相談していないんですが、
システム化のための費用対効果として、リードタイム短縮、
イコール、生産性アップを目指して、上申できればと思っているんですよ。」
「まー、俺たちが、毎日、進捗確認したり、ものを探したりしなければ、2割は縮まるだろう、
リードタイムがな、
正直、1台だけ製造したら、今のリードタイムの半分でできると思うけどな」
「えーそんなに、だって、いま言われているリードタイムは、
1つのオーダだけ見てもそんなに短くないですよ、」
「あー、そりゃ、おまえ、こっちだって、ここは、あいつしかできないな、とか、
作業の順番だって、おまえ、あそこの佐藤班長が2人いれば、
前と後ろを同時に検査したりできるしな。そうゆうことを考えて、おまえに、工数をわたしてるんだよ」
「そうゆうことですか。そうですよね。こっちは、作業者のことまで把握できないですしね。
ということは、こちらで、作業者のことまで把握できれば、もっと的確な計画ができるということですよね」
「だから、それが、おまえの仕事だろ。
こっちは、毎日、急ぎのものばっかりくるから、結局できる人に作業をたのむわな。
こんなんじゃ、いつまで経っても作業者の教育の時間がとれないしな」
「うーん、悪循環というか、問題だらけですね」
「おまえなー、人ごとみたいにいうなよ。
おまえは、若いんだから、そこをなんとかするのも仕事だろうが、
時間があれば、こっちももっと、現場を片付けて、潜水艦の2,3台作業できるスペースを確保したりできるんだけどな。
こー忙しくっちゃなー。それにこの不景気だからな、会社もとれるだけ受注したって感じだしな」
「なんか、カイゼンする余地がほんとにあるんですね。」
「はー、なにをいってるんだ。当たり前だろ。おまえは、何年この仕事やってるんだ。」
「すみません。もう3年やってます。」
「そういや、おまえ班長になったんだよな。
それなりの仕事をしてもらわないとな。まー、いつも夜遅くまでがんばってるみたいだけど、
がんばってますの姿勢はいいけどな。それなりの成果ってやつをださないとな」
「そうですよね。これから、成果を出すために、システム化としうか、カイゼン活動をやっていきたいなー、
と思って、ちょっと相談させて頂きました。さっそく、今日の夕方の生産会議で、提案したいと思っているんですよ。」
「そこまで、大々的にやるんだったら、応援するけど、おまえのとこの課長も、昔、おなじようなことをやって、
あまり成果が上がらなかったけどな。」
「そうなんですか?いつごろのことですか?」
「5,6年前だなー。
まーでも、作業予定表はわかりやすくなったんだよ。
その前なんて、1週間先の予定表と、月単位の予定表だけだったんだからな。」
「そうなんですか?まずは、事務所に戻って、うちの課長に相談してから、出直してきます。
すみません。いろいろ、有り難うございました」
「おー、まあ、がんばれよ」
気を取り直して、課長のところに戻り、先ほどと同じ話をしましたが、
「工程管理したかったけど、なにが何処まで進んでいるか、結局現場に行かないと分からないので、色々あったけど、計画表を見やすくしたりとかで終わったんだよ。」
とあっさり言われました。


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