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無常命脈の誓い

「なぜって、仕事です。
まあ、そう言ってしまうと味気ないですかね。

貴方が聞きたいのも、そう言った意味ではないでしょう。
しかし、今は悠長に話している場合ではないのでは? 貴方、早く手当しないと死にますよ。ほら、もっと他にも考えることあるでしょう。

……仕方ない。では少しだけ。

まあ、発端が帝国の王位継承を巡る争いというのは貴方も察しがついてるでしょうが……うん?
ああ、帝都から飛ばされるだけだと思っていたのですか。流石にそれは考えが甘い。

でも、もしかしたら家臣の方は王国への亡命も考えて、この立地を選ばれたのかもしれませんね。結局裏目でしたが、隠し通路も王都方面の街道近くに……失礼、話が逸れました。

端的に。
帝国貴族から王国の暗殺者ギルドに依頼がありました。破格の値段です。それを勝ち取ったのが、僕。それだけの話です。

さあ、もういいでしょう姫様。
どうやらどうあっても、御姉妹の居場所は教えて貰えない様子。屋敷内にいることは分かっている以上、時間を掛けて探せば見つかるのですが……割り切れませんか?

今教えて頂ければ、お二人とも楽に逝かせて差し上げるのですが」

言外に、教えなければ妹も惨死すると、そう目で語り掛けてくる男の手から私の最後の爪が落ちた。
静かな口調に見合わぬ苛烈な拷問。相手はプロだ。やると言ったらやるだろう。
震える喉元に刃物の冷たさが添えられる。

「妹さんは?」

驚く程、優しい声。
いよいよ私を殺すのだ。

「……ッ」

逃がしてあげたい一心だった。
しかし、本当にこれでいいのか。

「い、妹は……」

逃げた先、より辛い未来が待ってるだけかもしれないのに。

「私の妹は──」

尽きたと思った涙が止まらない。
例え生きても地獄なら、共に死ぬ方が情とすら思う。

『──アウリア=フォン=フレスティアは、今後その生涯を貴方へと捧げる事を誓う!』

それでも、私はあの子に生きてほしい。

傾く視界の中、
金色の祝福が目前にいる男に殺到した。


【続く】

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