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父からのギフト

神奈川の秋岡です。
今回は父のことを書いてみたいと思います。
父は、私が13歳の春に、50歳で急逝しました。職場で倒れて1日半で帰らぬ人となってしまい、あまりにも突然の出来事に当時の自分は受け止められず、1ヶ月くらいは周囲が不審がる程に変わらず過ごしていたようです(その後に大変な悲しみの時期が来るのですが)。なので、私の記憶の父は小学生時代に集中しています。

そんな限られた期間ですが、父との思い出は本当に楽しいものしかありません。
当時は社会全体が週休1日でしたから、メーカーに勤務していた父の休日は日曜日だけ。それでも毎週日曜日は父と出かけ、むしろ床屋などの父の用事にすべて私は連れていかれていました(もしかしたら家事が好きな母が連れ出してと言っていたかもしれませんが)。夕方になるとキャッチボールやバドミントンなど一緒に遊んでくれていましたし、私が友達の家に行くというとわざわざ車で送り迎えをしてくれていました。
自分が親になって子どもと日々を過ごすようになって、父が私にいかに多くの時間とエネルギーを費やしてくれていたか、身に染みて感じます。

少し大人になってから聞いた話ですが、私が保育園に通っているころ、いつものように母が17時過ぎに私を迎えにいくと、先生に「お父様がお昼過ぎに迎えに来てもう帰っていますよ」と言われたことがあったそうです。驚いた母が家に帰ってきた父に聞くと、その日仕事で少し嫌なことがあった父は、会社を早退して私を保育園に迎えに行き(そこは母に伝えるべきところだと思いますが…)、動物園に連れて行って時間を過ごしていたそうです。
母はあきれたように当時のことを話してくれましたが、父の落ち込んだ気分を解消するのは、私との時間だったというのは正直とっても嬉しかった。最初に書いた休日の過ごし方もそうですが、私が父のエネルギーの源になっていたのだと思うと、亡くなった後で聞いた話であっても自分の存在意義のようなものを感じて心が満たされました。

父は私のすることを否定せず、いつも受け止めてくれていました。
よく覚えているのは、小学4年生で作ったアップルパイ。当時お菓子作りにはまっていた私は、アップルパイを生地から作ろうとしたのですが、オーブンとオーブントースターの違いが分かっておらず、オーブントースターでパイ生地を焼いてしまいました。
結果、さっくりとは程遠いリンゴの甘露煮が包まれている小麦粉とバターの塊。作った本人は仕方なく口に運びましたが、母と姉は一口も入れず。そんななか、父だけは「うまい、うまい」ともりもり食べてくれたのです。父のその反応のおかげで、私は大きく心を傷つけられることなく、自分で受け止められる程度の失敗で終わったのです。

そんな父に一度だけ、イラっとした返答をされたことがあり、「あれ? こんな返事の仕方、お父さんじゃない」と思ったことがあります。それは倒れる1ヶ月ほど前だったと思いますので、今思えば、その違和感こそが本当に父の心身の調子が良くなかった兆しだったのでしょう。近くにいた私だからこそ感じ取れたこの違和感を母に伝えていたら、もう少し父は長生きできたのだろうかと考えたこともあります。

そう、私は圧倒的に父に愛されていました。それは間違いなく私の自己肯定感につながっています。ハートフルコミュニケーションで子どもに教えたい3つのこととして学ぶ「愛すること」は、こうして親からの愛を感じて幼少期にすくすくと育まれたものなのだと身をもって感じます。
それは自分が自分であっていいと信じられる太い軸。父が亡くなった後の多感な時期でも、人生の転機で背中を押してくれた「私は大丈夫だ、進もう」という感覚。また、こうして書き起こしていると、この自己肯定感は大人になってからも親といた時間を、そのやりとりを思い出しながら継続するものなのだと気づかされます。
同時に、この愛を私も子ども達に伝えたい。同じような自己肯定の感覚をもって大人になってほしいと強く思います。こんな感覚を与えてくれた父には感謝しかありません。

実はこんなふうに父の記憶が出てきたのは、このところ私自身が小学4年生の下の娘に指示しかしていないような気がしていることからです。
つまり彼女の言動や存在を私がちゃんと丸ごと受け止められていないような気がしており、反省することがちょくちょくあります。反省のなかで父の存在と今の自分との比較になり、父のことをいつも以上に思うようになったのかもしれません。

2022年7月18日
神奈川県/秋岡美奈子 
NPO法人ハートフルコミュニケーション認定ハートフルコーチ


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ホッとカフェは、日記を読んだ後の「もうちょっと聴きたい」、「もっと知りたい」「こんなことを思い出した」といったことをざっくばらんに語り合い、子育てのヒントを持ち帰る場です。
今回、話題にする日記は、6月20日掲載の 「カレーにするか、にんじんにするか」。
スーパーで子どもに手を焼く自分が情けなくなり、感情のコントロールができない自分を責め・・・という繰り返しから一転、子育てを面白いと感じるようになった出来事を綴っています。

子どもが言うことを聞いてくれない、どうしたらいいの!と叫びたくなる場面、皆さんも経験したことがあるのではないでしょうか。  
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