【HEAR公式シナリオ】思い出のハニートースト【麻生怜】

ひあひあ~!
「声で”好き”を発信したい人」のための音声投稿サイト、HEAR(ヒアー)公式です。

この記事は、音声投稿サイトHEAR内限定で使用できるシナリオ台本です。
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以下の使用規約(ルール)を確認したうえで使用してください。

HEAR公式シナリオ使用規約

▷使用の原則
・使用は原則としてHEARでの音声コンテンツとしてのみ。HEAR以外で使用することは禁止です。
・使用に際してHEARユーザーさんからの使用許可の連絡は必要ありません。
ただし、投稿に#HEAR公式シナリオというタグをつけること、
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シナリオ作者:麻生怜 https://twitter.com/01AS00
シナリオ引用元:HEAR公式シナリオ https://note.com/hear/n/n94c1d350d176

・HEAR以外の場所で使用したい場合や音声コンテンツ以外で使用したい場合は、事前にHEAR公式まで使用許可を得る連絡をしてください。
・シナリオの著作権は作者に帰属します。

▷していいこと・いけないこと
【◎いいこと】
・1人向けのシナリオを複数人で読んでも構いません。
・複数人向けのシナリオを1人で読んでも構いません。
・シナリオの途中までや一部を抜粋して使用することも可能です。
・物語に合ったBGMや効果音を付けることは大歓迎です。
【×いけないこと】
・シナリオ内の表現や設定を改変することは一切禁止です。
・HEARに投稿することを目的とした練習などで使用する場合以外のシナリオの転載、再配布は禁止です。

以上を守っていただければ、HEARで自由に使っていただいて構いません。

『思い出のハニートースト』本文

○とある大学図書館入り口

同級生A「お! アツシじゃん! 久しぶりだなぁ〜! 聞いたぞ、バイク事故だって?」
男子大学生アツシ「えっ、あ、こんにちは…。えっと…どちら様でしたっけ?」
A「おいおい、何の冗談だよ! 記憶喪失ごっこか?」
アツシ「えっと、すいません、俺、事故の時頭打ったみたいで、なんか記憶が曖昧になってる部分があって…医者によれば数週間くらいで戻ってくるものらしいんですけど。人の名前とか、顔とか思い出せないことが多くて…それどころか自分の周りのことも思い出せないこともあったりして…」
A「…まじで言ってんの? …俺はタナカ。タナカヨシキだよ。お前と同じゼミで、いつも一緒に昼食ってた。お前が事故った日だって、一緒にラーメン食ってただろ?」
アツシ「…あー、なんとなく、思い出せるような、うーん。…やっぱ、すいません」
タナカ「お前はこんな手の込んだ嘘いうタイプじゃないしな…。事故、大変だったんだな。…まぁ、そのうち思い出すんだろ? それまで授業のことでも、お前自身のことでも、知りたいことがあったら俺に聞けよ? ラインでも電話でもいいからさ。あ、あと敬語とかやめろ。俺らダチだし」
アツシ「あ、ありがとう…。」
タナカ「てか、なんでお前が図書館なんかにいんだよ?」
アツシ「実は…これを返しに」
タナカ「…小説? お前が?!」
アツシ「俺は小説とか読むタイプじゃなかった?」
タナカ「俺らといるときはいつもゲームの話とかしてたけど…」
アツシ「そっか…じゃあ、なんで借りたんだろう…」
タナカ「さあ? …なんかの授業の課題とかじゃね?わかんないけど」
アツシ「そう…かなぁ」
タナカ「まあ、あんま気にしすぎんなよ! いつでも相談乗るし。…げっ! 早く行かないと俺バイトあんだった! じゃあ、明日の必修で! またな!」
アツシ「あ、あぁ。また!」

○大学図書館内
アツシ「えっと…エンタメ小説の棚は…904か…」

(人とぶつかって本を落とす)

女子学生「あっ」
アツシ「あ、すいません! どこか怪我してませんか?」

(アツシ、屈んで本を拾う)

アツシ「あの…大丈夫ですか?」
女子学生「…あっ! …いえ、こちらこそ。うっかりしてて…」
アツシ「そんな! 俺こそ、本棚ばっか見てたから…あっ、はい! これ、あなたのですよね?」
女子学生「…ありがとう、ございます。あの…伊藤先生の本、お好きなんですか?」
アツシ「えっ?」
女子学生「その、あなたが持っているのも伊藤龍泉(りゅうせん)先生の小説ですよね。だから、お好きなのかと思って…」
アツシ「あ、ああ。これですか? あー、好きっていうか、なんで借りたのかよく憶えてなくて…読んだのかも、ちょっと思い出せなくて…」

アツシ「…俺、最近、バイクで事故にあって、一時的に記憶喪失?になってるみたいで、いろいろ思い出せないんですよ。医者はすぐに思い出せるようになるっていうけど、毎日一緒にいたはずの友達の顔を見ても、なんも思い出せなかった…本当に思い出せるのか、少し不安になってきて…」
アツシ「あ、すみません。こんなこと急に言われても困りますよね…あはは…」
女子学生「…その小説は、記憶を失った主人公が、好きな人の力を借りて少しずつ記憶を取り戻していくっていう話なんです」
アツシ「えっ?」
女子学生「…主人公は、好きな人と食べたものや行った場所、そういう些細なことから、忘れていた記憶を思い出していくんです。もちろんフィクションだし、そんなにうまくいくって保証はないけれど…でも、あなたもきっと思い出せると思います」
アツシ「記憶を取り戻す話…。…ありがとうございます。なんか、元気出ました」
女子学生「いえ、お役に立てたのなら嬉しいです」
アツシ「…そっちは、どんなお話なんですか?」
女子学生「えっ?」
アツシ「あ、えっと、あなたが持っている方の小説は…」
女子学生「あぁ、こっちですか。こっちは大好きな恋人にフラれた女の子があの手この手を使って復縁を目指すっていうお話しです。恋人のためなら、手段を問わない一途な女の子の話ですよ」
アツシ「へー、なんだか、変わった話ですね」
女子学生「今度ぜひ読んでみてください」
アツシ「そうですね! 読んでみます」

アツシ「…恋人か」
女子学生「付き合っている方はいらっしゃるんですか?」
アツシ「いえ、いない、と思います。まあ、こんな奴を好きになってくれる子、いないでしょうし」
女子学生「…いますよ」
アツシ「えっ?」
女子学生「あっ、だから、その、そんなことないと思います。す、少なくとも私は、すごく素敵だと思いました」
アツシ「えっ、あっ、ありがとう…ございます」
アツシ「…」
女子学生「…」
女子学生「…あっ! あの! 図書館入り口のところにカフェがあるの知ってました?」
アツシ「あ! 知ってます! 『カフェ・メモリー』ですよね」
女子学生「そうです! あそこ、看板メニューはナポリタンって言われてますけど、でも…あの店で一番美味しいのは、こんがり…」
アツシ「…こんがり焼いたハニートースト!」
女子学生「あはは! ご存知なんですね!」
アツシ「はい! 俺、こう見えても甘いもの大好きで! あの絶妙なトーストの焼き加減…」
女子学生「そうそう! そして、ジュワッと滲み出る甘いハチミツ…」
アツシ「うわっ、めっちゃお腹空いてきた…」
女子学生「うふふ、私もです」
女子学生「…なんだか、嬉しいなぁ。こんなふうにおしゃべりできる人、周りにいないから。みんな本はあんまり読まないし、図書館のカフェにもいったことないって子、多くて」
アツシ「俺も! 周りの奴らは本より、映画とかゲームばっかりで(笑) タナカなんて、授業中ゲームばっかりしてて…」
アツシ「あっ! そうだ! タナカだ! 思い出した!」
女子学生「ふふ、だから言ったでしょ? 思い出せるって! …それにしても、私たち、なんだか似てますね。本の趣味も、食の趣味も」
女子学生「…もし、よければ、この後一緒にカフェに行きませんか? も、もちろん、お時間があれば、ですが…」
アツシ「えっ! いいんですか!俺もちょうど誘いたいって思っていたところです!」
女子学生「ふふ、じゃあ、決まりですね!」

女子学生「あ、私、あと一冊借りていきたいので、先にカフェに行っていてもらえますか? すぐ行きますから」
アツシ「あ、わかりました。じゃあ、カフェで...待ってます」
女子学生「はい。では、あとで」

(電話の呼び出し音)

(以後全て女子学生)
「もしもし、私だけど。……ええ、今彼に会ってきたところ」
「本当に色々忘れちゃってるみたいね。……ええ。もちろん。信じるわ。方法なんてどうだっていいけど、彼の記憶を消してくれたんだもの。私と付き合ってたことも、別れようとしたこともね」
「確認だけど、私のことは思い出さないのよね? …疑ってるわけじゃないけど、クラスメイトのことは思い出したようだから。あ、そう。…今度はうまくやるわ。振り込みは月末まで待って頂戴」
「…ええ。もうあなたとは関わることもないでしょうけど」
「…二回目は半額で?」

「そう…困ったことがあればまた連絡するわ」


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