見出し画像

欠点豆とハンドピック

今回はプレミアムでない豆も買ったため、ハンドピックが必要そうなものがあった。はっきり言って手間から考えてやりたくないのだが、知識としてどのロットにどの程度の欠点豆があるか知っておきたいということもあって、あえてすべてハンドピックしてみた。また、今回ハンドピックしたものを写真として掲載するが、カメラの性能が悪く色彩はわかりにくくなっていることには留意されたい。

欠点豆と異物

異物(小石、ビニール)

焙煎機やミルを痛める可能性があるので絶対に取り除くべき異物。特に豆と同じサイズの小石は取り除きたい。コーヒー産地は火山性土壌が多く、コーヒー豆と同程度の比重の軽石があるため、収穫や乾燥で混ざりこんだ小石が比重選別とスクリーン選別を両方すり抜けることはある。

画像1

取り除いた石

異物(他穀物、麻繊維)

器具や体に害はないが、味は変わる可能性があるので取り除いたほうが良い。


微生物で変化した豆(カビ豆、黒豆、発酵豆)or 生きた虫

味に大きな影響を与えるので必ず取り除くべき異物。微生物はコーヒーには存在しないカビ臭や腐敗臭などの臭気、様々な雑味(最悪毒素)を発生させるので、他の欠点豆の分類と異なり影響が大きい。黒、褐色、群青色など暗い色に変色したものは判別しやすく、色彩選別機など機械でも除去できる。自然界には白いカビも存在するはずだが、肉眼で判別できる人はいないのではなかろうか。

画像2

上段:全体が変色した豆。下段:正常な豆(水洗、非水洗)

変形豆(貝殻豆、潰れ豆、欠豆、虫食い豆)

生豆が加工・輸送の過程で割れたりしたもの。貝殻豆に関してはコーヒーチェリーの中での成長具合の不均一に起因する。

傷口からカビやすく、カビを目視して捨てることがあるほか、虫食い豆は穿孔内部でカビが繁殖しやすく、表からカビが見えなくても積極的に捨てる人も自家焙煎家には多い。

画像3

上段:傷口からカビた豆。肉眼では群青。下段:正常な豆(水洗、非水洗)

カビがない限りは味が大きく変わることはなく、変形豆だけを集めて焙煎してブラインドテストすると判別は難しいが、こだわる人は焙煎度にムラが出ると言う。スペシャルティやプレミアムの規格には欠点豆比率が含まれるが、単に割れているだけの豆を欠点豆にカウントするか否か産地ごとに基準が異なるように見える。自家焙煎家の「欠点豆」報告もこれをカウントするか否かわかれているように思う。

画像4

パーチメント、貝殻豆、割れ豆

未成熟豆、異形豆、しわ豆

未熟なうちに収穫してしまって仲間で透き通るように白い豆や、手で触るとしわしわの豆。これらだけを集めると、風味が薄いので素人がブラインドで試しても分かる。ただ鷹のような目で探す必要性があるかどうかは別。焙煎後の色が白っぽいものを除去することで容易に除去できる。

画像5

しわ豆


そもそも欠点豆の少ないロットを買え

欠点豆について饒舌に語っているページは多くあるが、カルテルがあって品質が重視されていなかった前世紀ならいざ知らず、今の時代なら自家焙煎家は最初から欠点豆の少ないロットを買ったほうが良い。多少高い豆、せいぜいプレミアム程度ならたいして高くもなく、ハンドピックする時間と手間を考えたら十分ペイするし、プレミアム品はカッピング済みのものが多いので味もたいてい(コモディティをハンドピックしたものより)良い。プレミアム品ならば生産地で選別済みのものも多い。

そもそも現代には穀物を一粒一粒判別する色彩選別機というものがあり、米産地の農協には据え付けてあるものであるし、国内のコーヒー問屋も取り入れているところは多い(私が買っていた早川コーヒーは少なくとも焙煎後の豆のより分けは色彩選別機を使っていた)。加えて現代では画像認識用のAIが特に発展しており、画像特徴・形態分析による選別もこれに加わろうとしている。人手と肉眼でハンドピックする時代は終わりつつあり、機械に任せるべきというのが私の意見である。

今回はやや冒険的にハンドピックが必要そうな銘柄も買ってみたが、今後はやはり多少高くともハンドピック不要の銘柄に戻りそう、というのが自分の中での考えである。

欠点豆の少ないブランド名

農園指名のようなこだわりよりもハンドピッキングの手間を惜しむ方を優先するのなら、集荷後の選別システムが確立している産地のプレミアムのほうが有望である。
①輸入商社の説明で選別品となっているもの
②中米のブランド農園
③コロンビアで県の名前だけはわかっている集荷選別品
④アフリカならケニアやルワンダの集荷選別品
というあたりではなかろうか。スクリーンサイズが明示されているタイプかピーペリー指定もこれに次ぐが、外れ報告もそれなりにある。

逆にハンドピッキングが必要で当たり外れが大きいので知られているのがインドネシアとエチオピア(モカ)で、インドネシアはロブスタが普及しロブスタとの混血であるチモールやカチモールがあること、島ごとの土壌や気候に大きな差があること、独特の乾燥法などから品質が安定しなかった。農協単位での指定(例えばバリ・アグン山、スラウェシ・トラジャ、マンデリンの商社選別品)が好ましい。エチオピア(モカ)は、原産地ゆえの遺伝的多様性の大きさと、交通が未発達であるゆえの集荷単位の狭さがスクリーニングを阻んでいることが大きいようである。ブラジルは生産量の多さ、広さゆえに「ブラジル」という国名だけでは品質が全く不明なのが難点である。

このあたりの事情は他の方の焙煎記録をみてもおおむね同じである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?