少数派のバイブル
【その10】
「目に見える不幸も時には、目にこそ見えぬが並外れた利益をもたらしてくれるのです」
ドストエフスキー
『カラマーゾフの兄弟(下)』
訳者 原卓也
新潮社 昭和53年 348頁
純文学の作家たちは往々にして、人生がどれだけ虚しいもので、人間がどれほど愚かな動物かというのを訴えてくる。
そして、最終的に彼・彼女たちは、自分で自分を葬ることで、その証明を完了させる。
取りわけ文豪と呼ばれるような人たちには、その傾向が強いように思う。
そんな彼・彼女たちが書いた文章は必然的に、繊細で悲観的なものになりがちで、私が記録した名文たちもまたそういった類のものが多く、ポジティブなものは極めて稀と言える。
だから、今日挙げた『カラマーゾフの兄弟』の中の一文は、とても貴重なひとつだ。(ここを切り取っている為にポジティブなメッセージに聞こえるということは、念の為付け加えておく)
「目に見える不幸も時には、目にこそ見えぬが並外れた利益をもたらしてくれるのです」
カート・ヴォネガットはこう言っている。
「大切なことは全部『カラマーゾフの兄弟』に書いてある」
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