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第一印象や直観に頼らない採用を実施するにはどうすればよいか

#DIAMONDハーバードビジネスレビュー

まだ経歴書で採用を決定している?

「昭和の人事」の採用手法の典型は、被面談者の履歴書をベースに経歴確認とその人の職業上のスキルについて質問するものでした。

これはメンバーシップ型雇用が圧倒的に大多数である採用において新卒、すなわち未経験者採用とほぼ同じ手法をキャリア採用にも使うことしか人事の担当者を代表とする面談者が知らなかった、あるいは学ぶ機会が与えられていなかったことに起因します。

せいぜい新卒とキャリア採用との差はキャリア上取得したスキルの確認が加わる程度でした。しかし経歴書や資格といった情報が本当にその人の能力を証明するものにはならないことは経験上理解できるでしょう。本来自分を良く見せようとする被面談者と真実を見極めるべき面談者には利害の衝突があるわけですから、ある種”仁義なき戦い”があるのです。

一度でも外国人の採用面談をしたことがある人であれば、欧米ではCVやレジュメと呼ばれる履歴書を過度に信用すると、入社後にがっかりすることを実感したことがあるのではないでしょうか。以前ドイツ人のCOOと米国人の社内候補者の面談をした際に、候補者のCVを見てそのCOOが「わずか半年余りしかそのポジションを経験していないのにこれだけ成果を上げたかのようにCVに記載するとは信じがたい」と言っていたのは印象的でした。

また欧米では元の雇用者のリファレンス(元の雇用者のレターや電話インタビューで候補者の関連情報を入手すること)や米国では州にまたがった犯罪歴のチェックをするのが普通です。ただしこのリファレンスについては信頼性に疑問があるケースが多いので要注意です。以前インド人の採用について内部告発で虚偽のリファレンス提出の疑惑があがり、調査したところ前雇用者の人事部長のサインを偽造していた疑いがありました。まさに”人事なき戦い”です。

採用手法毎の信頼性

私の知り合いの英国人コンサルタントが、あるとき採用手法毎の信頼性というデータを示してくれたことがあります。それによると「完璧な予測」を1.0とした場合、先のリファレンスの信頼度はわずか0.15、普通の面談が0.3強、適性検査が0.4弱、能力テストが0.5強、コンピタンシーベースの面談が0.6強、アセスメントセンターが0.7強とのことでした。

こういった信頼性の格差にも関わらず、実際の採用手法の人気度合いで言うと、面談やリファレンスの人気が圧倒的に高く、これらを100%とすると、適性検査が75%程度、能力テストが70%弱、アセスメントセンターに至ると50%弱というのが現実でした。

もちろん先に示したのは英国のデータであって、日本となるとおそらくもっと面談だけで済ませているケースが多いのではないでしょうか。ここには忙しい中できるだけ時間や手間をかけたくないため、面談で十分質の良い判断ができると思いたい、という希望的な心理も働くのでしょう。

適性検査や能力テストは新卒のためだけでは無い

適性検査や能力テストについては新卒や第二新卒には実施していても、キャリア採用、特にシニアマネジメント層の採用では実施していないことが多いのではないかと思います。そういう層にその手の基礎的能力を求めるのは失礼にあたる、という気持ちも働きがちなようです。しかし適性検査による職業嗜好性の確認や能力テストは、水面下の隠された本質を掘り下げることで被面談者の本当の姿があぶり出される、と考えるべきでしょう。

バイアスの無い採用のために

もちろんどんな手法を駆使しても「完璧な予測」はできないわけですが、少なくとも信頼性の高い手法を複数組み合わせる、声の大きい面談者の判断に過度に依存しないなどの方法で全体として信頼性を上げることは可能でしょう。

GoogleがWork Rules!で言っているように、採用者に偏見、すなわちバイアスが無い、と考えるとはあまりにも楽観的と言えるでしょう。昨今インクルージョン&ダイバーシティで無意識バイアスのトレーニングをすることが多い訳ですが、実施の際には採用面談の可能性が高い人から実施するのはその成果がわかりやすいかもしれません。まずは採用者が「自分にもバイアスがある」と知るだけでも大きな一歩な訳です。そして個人のバイアスに過度に依存しないためにも、チームで採用面談を実施するのは効果的です。

このHBRの記事で、「特徴では無く成果の確認」を推薦しているのは水面上にある輝かしい経歴に惑わされないようにするためのものです。キャリアは偽れてもその成果は掘り下げれば化けの皮が剥がれます。よく聞くとその人個人の成果というよりも、環境が良かったり、チームで成し遂げた成果だった、ということもあるでしょう。

学習能力はLearning Agilityといって将来の潜在性を知る上で最も効果的なコンピタンシーと言われていますし、コンフリクトへの対処はVUCAの時代に大切な曖昧な状況への対処能力、Navigagte in Ambiguityを見るためのものです。これらはいわゆる構造化インタビューという手法、すなわちコンピタンシー毎に同じ質問を複数の候補者にする方法で候補者間で公平に掘り下げられると言われています。

コロナ禍ではビデオ面談が新日常となっていますが、この記事が最後に挙げている非言語的サインを見過ごす可能性があるので要注意です。

いずれにしろ、被面談者と雇用者の間には利害の衝突がある訳ですから、双方の利害をよく認識した上で、できるだけバイアスや思い込みの無い採用手法をとることが組織に大きな価値を生み出すことになるのは間違いありません。採用する機会があるラインマネージャーも人事の方も今一度自社の採用手法が十分妥当性のあるものか今一度点検されてはいかがでしょうか。

(本記事の内容についてより詳しくご相談されたい方はこのリンクからコンタクトください。適性検査や能力テストの導入、コンピタンシー設定や構造化インタビューの手法の導入と面談者のトレーニングなど貴社での効果的な採用をお手伝いいたします。)

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