秋華賞の考察~ローズS・紫苑S~
牝馬クラシック最終章の秋華賞。今年は桜・樫の女王ともにトライアルに出走しない。トライアルは試走ではなく、いよいよ出走権利をかけた戦いへと変わりつつある。レースのコンセプトが変化することで、本番の結果も変わるだろう。事実、ここ3年連続で勝ち馬はオークスから直行ローテ。出走権をかけて全力でトライアルレースに参加した馬が、短い出走間隔でさらに状態を向上させるのは容易ではない。そうはいっても勢力図が変化する秋のトライアルは、既成勢力と新興勢力の力関係を把握する材料になり、予想の出発地点であることに変わりはない。まずは東西のトライアルをしっかり検討したい。
西のローズSは中京芝2000mで行われ、勝ったアンドヴァラナウトの走破時計は2.00.0(良)。前日のケフェウスS(オープン)は重馬場で2.01.2。馬場状態が異なるので、比較は難しい。ローズSは前後半1000m1.01.2-58.8、一方、ケフェウスSは1.02.6-58.6。ローズSの後半58.8はそれなりに評価すべきか。ということは後半で逆転したアンドヴァラナウトの評価は下げられない。
このレースのラップは13.1-10.9-12.3-12.7-12.2-12.0-12.2-11.6-11.3-11.7
典型的な3ハロン競馬で瞬発力勝負。アンドヴァラナウトは4コーナーを回って瞬時に加速、最速ラップの11.3で逃げたエイシンヒテンを交わした。この反応のよさが活きる流れに本番がなるか。その一点。スタートも道中の運びも問題ない。と言ってもローズSではずっと外目のプレッシャーがかからないポジションに福永祐一騎手がつけたともいえる。もちろん、ここで折り合いがついた点は評価。
こういった競馬で手応えで見劣ったのはアールドヴィーヴル。早めにアンドヴァラナウトに進出しながら、勝負所で同馬が加速すると置かれてしまった。反応が悪いながらも最後まで伸びて併走していたタガノディアーナはきっちり競り落とした。こちらは本番が時計を要する場合に出番だろう。
この2頭の共存は考えにくい。流れを読んでいずれかを評価してメリハリをつけたい。ソダシを本命にすれば、そんなに買い目は増やせない。
次に紫苑S。開幕週の良馬場という絶好条件でファインルージュの走破時計は1.58.2。前後半1000mは59.7-58.5。馬場状態がよかったので、時計は目立つが、実際は平均より遅いぐらい。
レースラップ12.2-11.1-12.0-11.9-12.5-11.9-11.8-11.8-11.4-11.6
上下差のある組み合わせで、馬群は縦長。勝ったファインルージュはスタートを決め、中団の外。先に行きたい馬を行かせて、プレッシャーがない位置をキープした。騎乗したのはアンドヴァラナウトと同じ福永騎手。トライアルでの手順が徹底しており、この2頭は、ほぼ同じような競馬だった。さすがである。馬場を意識して早めに動いて、直線は後続を突き放して0.3差。レースラップは後半1000mがすべて11秒台で、こちらはスローであっても持続力型の4ハロン競馬。これを早めに外目を動いて突き放したファインルージュは本番でも怖い。まして12.5→11.9とギアチェンジを要するところを乗り切る機動性もある。このラップに対応できず、遅れて差してきた2、3着は物足りない。
しかしファインルージュはアンドヴァラナウトとはタイプが異なり、共存しないかもしれない。
というわけで、ファインルージュを買う場合はアールドヴィーヴルを、アンドヴァラナウトを買う場合はこの2頭を軽視という作戦はどうだろうか。ま、いずれにしても本命はソダシだと思うが……。