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一料理人、イタリアでサルミつくり②~生ハム編

こんにちは、ハヤシヨウヘイです。
長期休暇に行った研修先のサルミ工房、一件目はシエナにあるTENUTA DI SPANNOCCHIAスパンノッキア農園です。

スパンノッキア農園

こちらのスパンノッキア農園、農園というだけあって行われているのはサルミだけではありません。
野菜やハーブなどの畑、ワインやオリーブづくり、そして豚の飼育まで行っています。
昔ながらの初めから終わりまで一通りすべて自分たちで賄う、自給自足ではありませんが、それに近い形態です。
アメリカからの研修生を受け入れ、それぞれが別々の研修分野に入りながら集団生活を送っていました。


そしてサルミつくりは

そして、サルミ工房でつくられるのはこちらで飼育された豚、チンタセネーゼ、イタリアでもこの近辺でしかお目にかかることのない希少な豚です。(チンタ=帯・ベルト、セネーゼ=シエナの)
このように前足、肩回りが白く帯状になっているのが特徴です。

運よく産まれたばかりの子豚も見ることができました

この豚の飼育は非常に難しく、ドングリなどの木の実を好むためその木々、ストレスを感じないような広い土地、まずその両方が必要です。
スパンノッキア農園は山中にあり、その中に放牧されていました。

こちらでは極めて伝統的な方法で、血、内臓、骨、何一つ捨てずに、サルミつくりをしています。
週初めの月曜日、早朝に三頭の豚を屠殺場に連れていくことから始まります。
およそ300キロの成豚ですから、決して小さくはありません。
ここで血抜き、内臓の取り出し、左右の半割、までして持ち帰ります。
持ち帰ると今度は、大きなパーツごとに分けていく作業です。
あたま、首、ロース、前足、後ろ足、あばらから腹、これを三頭分、パーツ分けだけでも時間がかかります。

午後には肩、モモを生ハム・prosciutto用に成型していきます。
余分な肉を取り除き生ハムの形にしたら、塩を揉みこんでいきますが、1週間、毎日上下を入れ替え、マッサージして入念にむらのの無いように塩を浸透させていくんですね。

生ハム塩棚、ここで1週間

塩づけが終わると、こんどは熟成に入ります。
塩を洗い流し、豚脂、塩、コショウなどを混ぜた生地を皮の無い肉の上にコーティングしていきます。
これを冷暗所にぶら下げて、乾燥、熟成させていきます。
少なくとも一年熟成してから出荷となるので、貯蔵庫に200本以上の生ハムが並んでいる光景は壮観です。

生ハムのみの貯倉庫には、足が何十列と並んでいます。

一年以上熟成したものは、馬の骨から作られたFIBULA・フィブラと呼ばれる太い針を肉に通して確認していきます。
針に残った香りから熟成具合をみるわけです。

チンタセネーゼの肉質は普通の豚に比べて非常に味が濃いのに加えて、細かく融点の低い脂が入っているため、甘くまろやかな味わいがします。
トスカーナのサルミは一般的に塩が強いといわれますが、スパンノッキア農園のチンタセネーゼの生ハムはまったく違いました。

イタリア生活も7年がたち、全国を旅行してきましたが、この生ハムは忘れられません。
この時のような、現地でしか出会えない様々なものが、私を今もイタリアから離れさせてくれない一つの原因なのかもしれません。


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