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【対談】正論がケンカを生むのはなぜだろう?

2019年11月にスタートしたマガジン「月刊カイワイ」では、私の周りにいる、知的好奇心あふれる界隈の人たちと知識の話を楽しみます。

1人目は、ボードゲーム翻訳者、スプラトゥーンのオンラインコミュニティ運営者、元Google本社社員、複数の会社の経営者など、属性過多ぎみな長山一石さんです。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで社会人類学を学んだ長山さんに、私が最近気になっていることを尋ねるところから会話をはじめました。


五味ちゃんの悩み

五味「フェミニズムのことを話していると、同じフェミニズム界隈の人から嫌われることがあるんです。もちろん、フェミニストの中でも色々な考え方があり全ての意見が一致するとは限らないけど大きくは同じ目的の中でも分離が生まれるのか、この分離はどうやって乗り越えたらいいんだろうって、最近考えてます」

長山「難しいよね。左の側は割と運動を「正しさ」に依拠しているので、分離しやすい、というのはあると思います。古くは共産主義者の中でも内ゲバみたいなものが起こったわけですし…。右の側は─とくにエドマンド・バークみたいなタイプは─比較的何が正義なのかにこだわらず着地点みたいなものを探していけるところがあると思います。ただ正しさみたいなものを拠り所にしていくと、その正しさを巡ってどんどん分裂していくというのはあると思うんです」

五味「社会に批判的な立場を取ることからはじまって、『これこそが正義』みたいなものを持つと、ちょっとの差にも『間違ってるよ』って指摘するみたいなことですよね。世界的に統率が取れた事例はあるのかなぁ。宗教とか」

長山「どうですかね。宗教も分裂するし」

五味「最近イスラムの本を読んだばかり」

長山「五味ちゃんのいる文脈をわたしはあまり知らないのだけど、どういう感じなの?思想的な差異に基づく分離なのか、単純に『あいつ気に食わない』ってことなのか、とか」

五味「それで言うと、私はフェミニストの中でも結構リベラル寄りなんです。今は『草の根フェミニストvsリベラルフェミニスト』みたいな状況だと感じていて、草の根派は、『女性は全員当事者だから、みんなフェミニストを名乗って、問題提起の声を上げるべき』ってスタンスに見えるんだけど、『あくまで法改正や社会変革をもって最適化を図るべき』とか考えているのがリベラル派かな。
 男性は男性でしんどい部分もあるから、それを含めてジェンダー全般で何が最適か探っていきたいよ」

長山「フェミニズム難しいですよね。最近は特にフェミニズムについて、特にネット上で何かをいうことそのものがどちらの側からも批判を呼びがちで、言及することが難しくなっていると感じています...。もともとの第一派フェミニズムは、社会上や政治上、法制上などの権利レベルで人間として扱われていない時期にはじまったもので、黒人の市民権運動と主張が似ていると思うんですけど、現在のフェミニズムは性質が異なりますよね

五味「そうだね。私も人種の問題に近いなぁと思って照らし合わせてる」

長山「第4派フェミニズムはエンパワメントが重要という理解で、それは本当に同意なんですが、ネットの議論を経て過激化すると『女性vs男性』、『フェミvsアンチフェミ』みたいになってきてしまうので、誰も幸せになれないなと」

五味「フェミニストへの賛同を示したくても、ポジションを取られてしまうと賛同しにくいジレンマがありますか?」

長山「本当に難しい…さっきから難しいしか言ってないけど。男性側の問題もあるし」

モテるヤツ強え

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