旅の力

帰郷したツバメ達が電線にとまって空き家の群れを見ている。空き家はもう呼吸していない。人間達はもういない。
押し寄せる緑に覆われた村でツバメ達は家を選ぶ。幸い我が家には一つがい宿ってくれた。しかし日々さえずりが少なくなっている。野良猫、カラス、鳶、蛇から守ってくれる人間がもういない土地に、ツバメ達もまた戸惑っている。
人間もまた戻って来られない。旅の力を失いつつあるのかもしれない。