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走りながら思想しよう1.

この10年は、協働という言葉そのままの活動に明け暮れた。東京に拠点を持たない私は企画一本で、チームをネットワークして官庁等で様々な勉強会を開いてきた。主に刑務所農業をエンジンとする新しい農業産地構想を法務省で。日本茶生産者、産地の新しい需要創出マッチングを農水省、茶生産者団体などで。皆なかなか成果に結びつかなかったが、お茶マッチングでは、紹介した調理師専門学校やミシュラン三星料理人、池坊関係会社社長等には数百万円クラスの助成金がついたりとか、周りの仲間たちには確実な成果があり、企画コーディネーターとして、活動家としては少し力がついたかなと思っていた。特に日本の調理師専門学校には正式な日本茶講座が無かったらしく、今回のマッチングでは、茶生産者団体・農水省と組んだ本格的な日本茶講座が立ち上がり、年々調理師の卵たちが日本茶産地、生産者との縁を得ることで茶の世界への新しい潮流をもたらせたことには記念碑的な喜びを覚えた。そのような日々に世界的な災禍が現れ、私の平時を対象としたモデルはほとんど全てが時代や情勢に合わないものとなってしまった。昨年、数年前からの知人だったNPO理事長と懇談する機会があり、彼の豊かな人脈から特殊自販機パイオニアの社長との出会いがあった。冷凍、冷蔵、レトルトなどを扱える自販機に対して私は災害食供給とローリングストック備蓄モデルが特殊自販機であれば、非常に効率的に実現でき、一般食品との余計な競争もなく、輸入食品の対象外の独自マーケットを開けることを直感した。このプランには農水省も23区区役所も関心を持ち、勉強会とネットワークが加速している。
さらに理事長人脈からは大企業スポンサーや教育委員会などを支援者とする一般社団法人の女性理事長が現れた。彼女のご家族にはどうやら中国残留孤児の方がおられるようで、強い情熱で、現在も小中学校の災害食教育を進めておられるようだ。彼女の人脈、企業ネットワークが、そのまま理事長のNPOに接続される、急激な動きがここ数日の間におきている。事業目的と強い子供達への思いが混在する彼女のやり方はまさに盲目的情熱そのものであり、最初の企画者である私がどうやら吹き飛ばされつつあるようなのだ。
今までもよく主導権を奪われたり、企画を換骨奪胎されたりする経験はしてきたが、胴体をまるごと食いちぎられる体験は初めてだったので、この数日、軽く懊悩している。救いなのは、理事長が彼女のグループと接続することで、NPOとして確実にステージアップすることだ。日印協会案件にも彼女からは葛西の在日インド人コミュニティの長老を今日紹介されるらしい。一人岡山に離れている私以外のメンバーまるごと持っていかれるというのはなかなかだ。
今朝方、朝日の中でぶらぶらしている時に今日の思想が降りてきた。
【時間を味方につけよう。】
村上春樹氏の『騎士団長殺し』で、主人公をインスパイアするこの言葉が、私を一息つかせてくれた。物語力が蘇ってきた。小人達が「平気だよ。」と言ってくれている。

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