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京都戦レビュー~全く違うものとなった勝ち点1~

ホーム・アルウィンで10位京都との対戦となった今節。土壇場で追いついてかなり雰囲気良く追われた前節の長崎戦とは違い、多くの時間で山雅が優位に立ち、(公式の発表では)シュート数14-7と圧倒するも勝ち点は同じ1のみ。一番評価の分かれる結果ではあるが、実際にサポの評価を見てもまちまち。

これだけいい内容を見せて圧倒したのだから良い試合だった、これだけいい試合を見せたのに勝てなかったのは良くない。どちらも間違いではない。ただでさえ「来季にどのように繋げていくか?」がクラブとして明確ではないので、順位を上げることを見ると厳しい試合、保持時のトレーニングや連携の向上としてはそれなりに収穫を残せた試合とそれぞれ観点によって変わってきそうだ。

そして、そんなこんなで残り試合は12月の5試合のみとなった。どのようなラスト5試合にしていくのか?ただ全勝を目指せば来期につながるのか?考え続けながらチームを見守りたい。

~個人的MVP~

個人的MVPは常田
無失点と攻撃の起点としてチームに貢献。パス数68もチーム最多だった。セットプレー時にもヘディングの強さは相手の脅威になっている。

次点は前、佐藤
前は4本のシュートを放ち、1つでも決めていれば文句なしのMOMだっただろう。しかし、IHの位置からこれだけフィニッシュに絡み、終盤には佐藤に代わってアンカーの位置に入るなど戦術の核として力を発揮した。この悔しさは来季山雅で……(?)
佐藤はもはや説明不要。相手のプレスを受けない絶妙な立ち位置でボールを受けてスムーズにボールを前の選手に経由。これほどまでにビルドアップで違いを出せる選手は山雅の歴史の中でも希少。

(……全員来季もいるか不安なメンツに笑)

~戦評~

■練度と全力プレスで自由を奪うも…

・いい守備がいい攻撃につながる展開

試合が始まってまず最初に主導権を握ったのは山雅側。ウタカの不在は明らかに誤算としてあったが、様子を見るようなことはせず、山雅は最初からフルスロットルでプレスをかけていく。

3421の京都と352の山雅だが、いつものように前線の枚数が相手の最終ラインと噛みあうようにIHがCBまでプレスをかけていく。京都の武器の1つであるバイスのロングフィードも何度か繰り出しても受け手が相手無ければ意味がない。シャドーにもHVがついていくので配置上の問題はほぼ起きなかった⇩

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前半の早い時間帯はここまでどこのチームを相手にしても前・杉本が間に合わないというボール回しをしてくることはほぼない。よって、どこかで個人突破を許さない限りはそう簡単にはピンチは作られないといういい時の山雅であった。

逆に京都はこのプレスを受けてどんどん重心が後退。DHの庄司やシャドーの金久保が1列後ろに下りてきて、前線の怖さが出てこないという悪循環に陥る。経験の少ない若手が多く起用されていたこと、こういうときに個人で流れを変えることができるウタカが不在だったのももろに影響しただろう(もっと言うとボールを運べる森脇・安藤だと4バック化しても効果的だったはず)⇩

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・決定力不足もあるが……紐解くと

試合を全て見るまでもなく、固定メンバーで前半から飛ばす山雅と慣れないメンバーで徐々に感覚を掴んでいくであろう京都という両者の状態を見ると「最大の決め時」はこの時間帯であるのは明確であった。

シュート数を重ねていく山雅だが多くはセットプレーやミドル。「これは決まるだろう」と言えたのは高橋の個人突破から前が放ったシュートくらい。というのも一番ゴールに近いはずの2トップがいい位置でシュートを打てた数は限られた回数であった。セルジは後ろに下がって組み立てに加わることが多く、ストライカー・阪野も活きたシーンは数少なかった。

■ギアが上がらない後半

・修正と後半勝負を仕掛けてきた京都

そして前半は抑えめで3CBにはあまりプレスをかけてこなかった京都もこれを修正(もしくは元々ゲームプランとしてあったかもしれない)。後半からは前線の選手が積極的にプレスをかけ、攻撃の方向を限定してくる。これに対して山雅は逆に面食らう形に。佐藤が消してくる相手に対して有効なポジショニングをとれるようになるまでは後ろ向きへのボールが増えていく。

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それでも安定を取り戻してからは杉本やセルジの個で優位性を生み出したり、HVが攻め上がって数的優位を生み出すようなパターンを見せるも相手のプレスが活発になった分、奪われる回数も増えてしまう。

・チグハグさのある交代策

どちらも得点を決められないまま、徐々にどちらも疲れが見えてくる両者。京都は後半17分に曾根田、飯田と実力者を投入。これに対してやや劣勢となった山雅は24分に鈴木を浦田に、杉本を阪野に代え、3412気味のシステムに変更を行い、ジャエルと阪野が前線に並び、さらにその5分後には佐藤を塚川に変更して前が底気味に入る⇩

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これによりジャエルと阪野という2つのターゲットができたものの、中盤の構築力は低下(軸の佐藤、経由で効いていた杉本、右の鈴木をほぼ同時に下げたのも影響している)。シンプルにジャエルや阪野を使うような攻撃が増えてもその後のパスが繋がらず、攻め方が定まらない時間が続く。低い位置で組み立てで効いていた3人がいなくなり、前線でもタメができないのでWBは高い位置を取れない→高い位置を取ってナンボの浦田もクロスをあげるところまでいけないので交代選手で迫力が出せない。

そして、リスクをかけているので当然だが、ジャエル・阪野の前線、セルジ・塚川のIHでのプレスは明らかにズレが出てくることで「運動量の補充」以上のマイナスを生み出してしまい、カウンターも高い位置から始められないという悪循環が生じる。

■結局行き着くのはジャエルセルジ問題

この試合で柴田監督は阪野・ジャエルの後ろにセルジを置く形にしたが、逆に中盤3枚と前線の流動性が死にうまくいかなくなったのはマイナス面が多く、まだ成熟には時間がかかりそうな感じは見受けられた。

例えば布監督はジャエル阪野を2トップにして杉本セルジとの併用を試みた(突然4バックに戻した前回の京都戦は、ジャエルが復帰したタイミングでもあったのはその関係もあったかもしれない)が、それによって後に『慣れない4バックうまくいかない問題』が勃発。結局これがのちに尾を引き、解任という結果になった。

うちのチームで軸になるべきジャエルとセルジを併用するにはどうすればいいか?」というオフの編成の段階である程度は答えをだしておかなければいけない問題に結局両監督が頭を悩ませてもう終盤になる。どちらかを外せば済む問題でもあるが、限られた資金の中で最大値を出すことを考えると避けては通れない問題である(特にこの2人は年棒高めの選手)

となると結局「システム変更」か「榎本、ハン、高木彰、服部のような別の選手を組み込みながら戦う」しかないという前体制と同じところに行き着いてしまっているように思う。

■服部投入に対して思うこと

話しは逸れたが、試合ではそこから久しぶりに服部の投入。後半46分という時間帯だったので放り込みを行うというのも1つの手ではあったが、それほど積極的な放り込みも行わず(そもそもそんな攻撃をそれほどしてきてない)。

佐藤→塚川の交代から20分以上あったのでこれだけ引っ張って米原と中美を残してパワープレーを行ったことで少しがっかり感があったのは否めない。するのであればもう少し時間がないと……という状況でもあった。

前半から飛ばしていた前かセルジを変えてアンカーに米原or阪野かセルジを中美に変えて地上での繋ぎをテコ入れする選択肢もあったはずだが、それも行わず、かといって放り込みも中途半端というところにちぐはぐさは感じている。

https://twitter.com/yamaga62/status/1332944151004946434

(放り込み自体に是非はあるが、シチュエーション次第ではハマる時は必ず来る。使われるからには服部は頑張ってほしい)

■暫定監督としての仕事は十分全うした柴田監督

采配批判のようなことが続いてしまっているが……チームに安定をもたらしてくれた柴田監督もここ数試合はその先の「壊す」領域に突入している。

前節の4バック、今節のジャエル・セルジ・阪野の同時起用などこれまでになかったようなチャレンジングな采配が進んでいて、「安定」だけではなく「壊して」バリエーションや采配の幅を求められるようになってきているが、正直ただでさえ過密日程で途中から就任した監督の仕事としては経験の少なさを考えてもハードな要求になっている。

本来であれば352を確立して安定した成績を取り戻し、怪我人もコンディションが戻ってきた今のタイミングあたりで次の監督に引き継ぐのが理想ではある気がする。このまま柴田監督が続投する可能性があるので、今の壊さなければいけない状況をオフシーズンを挟んで乗り越えてもらうというのも手ではあるが、ここ数試合からも分かるように壊して作ることに関してはまた未知の領域になってくる。

また監督を切らざるをえない状況を作らないためにも「続投を発表して壊すのも長い目で見る体制を作る」か「柴田体制を残り5試合と定めて宙ぶらりん状態から解き放つ」というのもサポートの1つのように思う。

■残り5試合!何かと因縁のある(?)群馬

さて、サポとしても正直苦しかったシーズンもラストスパート。積める勝ち点も15のみとなった。群馬については最近あまり追えていないので言えることは少ないが、ここ3戦では2勝1敗。前節は町田相手に3-0で勝利し、宮阪も前節大活躍してベスト11にも選出されている。

システムは442のみなので、4バックのチーム相手には特に積極的なプレスからいい攻撃につなげている山雅は宮阪・岩上のいる中盤でボールを奪い切れるかが大きなポイントになってくる。布監督はチームを去り、吉田の出場の可能性は少なそうなのは残念だが、それも相手としては少なからず意識としてあるはず。試合展開はこれまで以上に持たされる、そしてワンチャンスを狙うことになってきそうだが、今節のような流れになってはいけない。相手にしっかりと勝ち点3を持ち帰りたい。

END

(画像は松本山雅公式より)


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