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琉球戦レビュー~リベンジならず。遠かったシュート~

失点は減ったがゴールへの道はより遠くに……

日中は30度近かったという沖縄での中2日のアウェイ戦。采配や内容面では賛否の否多めの試合であったが、選手・監督、また現地組のサポーターも心身共にきついシチュエーションだったことが想像される。

そのことも考慮して主軸を温存、前半かなり守備に重きを置いた戦いを選ぶなど今季は特に重要な「Bプラン」がどれだけ機能するのかが試される試合だったが、結果・内容ともに厳しい試合となった。特にシュート数に関しては数字的にも内容的にもかなり遠く、選手の適材適所、そして効果的な戦術を用いることができていたとは言い難い。

今シーズンは琉球にリベンジどころか一矢報いることもできていないが、ある意味得るものは多かった試合でもあるのでここから得たものをきっちりと次につなげて大宮戦、そしてその先の北九州戦こそはシーズンダブルを阻止、きっちりと勝利をあげたい。

<例の如く採点はお休みします……。個人的にチームベストは杉本、次点で村山、大野です>

■無失点に値した前半の守備陣形

試合前から3バックなのか4バックなのか?またどういう組み合わせで戦うのか?かなり意見の分かれた今日のスタメン。

自分も前節、極上のクロスをあげた山本真を右サイドに前を左サイドにした352を予想したが、それは外れ、久保田を左WBに置いた布陣は他の方の予想でも見かけなかった笑

怪我人や遠距離アウェイの影響でかなりメンバー選考に苦悩しているのは伺えたが、ひとまず前半は守備に重きを置き、とりあえず0で抑えようという形は見れた。

基本陣形は541にして、右はアルヴァロが上がって532に、左は541のままで杉本と久保田で相手のサイドに対応するという守備対応に⇩

守り

守備でこれだけポジション調整が求められるので、当然榎本へのフォローはやや手薄になっていた上に久保田も前も個人で局面を打開できるタイプでは無いので前節のような厚みのある攻撃は見せられなかったが、無失点に抑えた守備や後半勝負のプラン次第では期待感の持てる前半だったと思う。

ただし、水戸戦から続く懸念点としてWB裏はだいぶ狙われるようになってきてはいるのは気になるところ⇩

守り2

■榎本の奮闘と課題

そして、攻撃について。杉本やアルヴァロの打開など「個」で上回る局面はあったが、試合からしばらく遠ざかっていた榎本のところからいくつかチャンスが作れていたのは前半の見所だった。

全体がここまでの532よりもさらに後ろに重心があり、個人で時間を作らざるをえないシーンが多かったので「新体制後のFWの中では1番大変と言っていいタスク」を背負わされたが、後半途中まで起用されたことから考えると監督としても及第点以上の内容という評価だったのではないか。

欲をいえば中央でキープしたいところだが、彼自身そういうタイプではないので……榎本は榎本なりに左右や裏に抜け出しながら自分の持ち味をだし、シュートまで持っていくシーンもあった。

その中で残念だった点は後半13分、やや消極的な選択で阪野へのパスをカットされてしまったところか。ガツガツ行くところと味方を使うところを使い分けれるタイプではあるので、良く言えば使っていけばプレーの幅は広がっていきそうだが、悪く言えば判断と連携がある程度向上するまで使わないと真価は発揮されない。

(ジャエルがいない状況で)FWの2番手として認められたかどうか、次節の起用法も注目したい。

■後半は「良いサッカー」とは思えない

・シュートを打った琉球と打てない山雅

先ほども書いたように前半は守備に重きを置き、期待も持てるような内容。ベンチメンバーからしても後半勝負も視野に入れてのゲームプランかとも思われたが……現実はなかなかシュートまで遠かった

DAZNの解説からは「良いサッカーをしてる」「琉球がそれほど良かった」というような言われ方をしていたが、反町さん的に言うとサッカーが判定勝ちのないスポーツである以上、「勝つためのシュートが遠い」にも関わらずいいサッカーと評されるのに疑問を感じる人が多いのは自然なこと

特に先制された後半20分以降の時間はシュートを打たなければ勝ち点すら取れないし、そのための適切な策はほぼなかったと言っても過言ではない。点を取るための適切な動きができていなければ綺麗に回せていても結局事故待ちを期待するしかなくなってしまう(事故待ち狙い自体は否定しないが事故を起こすための動きもなかった)。

琉球の先制点もスーパーゴラッソだったが、前半から中盤を振り回して相手の足が止まってきたところでミドルを狙うというゲームを通しての戦略、策略として非常に理にかなっていた。あのシュートは10本打って1本出るようなものでもチーム戦略としては再現性が高い。

柴田監督もこれまで以上に反省や苦悩をコメントを述べていたが、今年の状況で多くを追いすぎると布監督の二の舞になってしまう。解任後のクラブの意向や2か月という時間、今の選手構成を考えるならばもう少し結果あるいはチームの底上げに重きを置いてもいいのかなと個人的には感じている。

・何のための繋ぎなのか?

そもそも「いいサッカー」という発言は後半「繋ぎの意識が高かったこと」が要因として考えられるが、現実にはシュートまでいけないもしくはDFに詰められてしまったのは「繋ぐ意識」はあっても「点を取るための優位性を生み出す」ところが不足していたのが致命的だったと思う(一時期、日本全体にあったポゼッション病に近い)

その繋ぎも選手のアドリブに任せていたところが大きく、セルジや佐藤和のように個人で狙いを持てる選手の不在は浮き彫りに。アドリブ感自体は仕方なさもあるが「放り込んででもゴールを狙いに行くか繋ぎ続けるか」の違いはあっても、前体制とは本質的には変わっていないのは少し感じる(そんなに簡単に変われないのも承知だが、それならばシーズン途中での解任の妥当性は薄れる)。

話は逸れたが、本来勝負をかけたかった後半開始~失点までの時間帯に優位性を生み出すためのサッカーではなく、ただ繋ぐためだけの繋ぎになっていたというのは気になった。

具体的に打開するための方法としては①パススピードをあげる②2トップのどちらかがセルジロールをする③ロングボールで相手の重心を下げるか④アンカーが最終ラインまで下りるなどがあるが、①は単純にできず、②は阪野・榎本の2トップにした意味があまりない。繋ぐのであれば本当は④ができれば良いのだが、現状選手の判断と能力頼りになっている。

2トップにした采配を考えると③が最も妥当性はあったが、そこに反して足元にこだわり続けたのはギクシャクとシュートまでが遠かった要因だと思う。

ビルドアップ

いずれにしろ、繋ぐのはできても「相手との配置の問題」や「選手の特性」的には効果的とは言えず、相手が構えているところでの杉本やアウグストの個人能力勝負になるのであれば阪野・榎本へのシンプルな攻撃を狙ったほうが戦術的には理にかなっていたようには感じる

ただ柴田監督自身、ボールを動かすことを大事にしながらもゴールへのパワーの使い方については反省にあげているので次節以降の改善に期待したい。

■控え組の力を見る試合として適切だったのか

「練習試合ができない状況もあって、試合経験を積めていないというところもあった」という点をメンバー変更の理由に挙がっているが、遠距離アウェイ、気候の厳しい沖縄、少なすぎる準備期間の中で試合経験の詰めてない選手の力を見るというのは適切さは感じない。榎本久保田は特にそうで、前者は落とし気味で入った前半の戦いで孤立、後者はプロでやっていた記憶がない左WBでぶっつけ試合となるなど戦術戦略の犠牲となった。

金沢戦の圍や森下もそうだったが、経験の少ない選手や若手にとっては「力を発揮するのは難しい状況」もしくは「久々の試合」で、ミスが起こってしまい、また試合から遠ざかるというのはいい傾向ではない。もちろんプロなので甘いことばかり言っていても仕方がないが、「チームコンセプト」や「若手に自信をつけさせるという短期的な目標」からすると疑問には思う。

ただ、今日のメンバーについての監督の評価や今後の起用もまだまだ分からない点は多いのでここからまたやり方を変えていく可能性もある。ここで全てを判断するわけではないはずなので、また近いうちに適した形で起用があると信じたいところである。

■それでもポジティブな面はある

若干マイナス面が多くなってしまったが……必ずしも悪かったことばかりではないところにも触れておきたい。

この厳しい試合でも選手同士の試合中の意見交換は盛んに行われるようにはなってきているし、柴田監督が当初から掲げていた「コンディション」の面は徐々に上がってきている。阪野や鈴木など出ずっぱり状態になっている選手がいるのが気になるところだが、そこへのテコ入れの意思は取れる。

結果が出てない状況、さらに因縁の相手である琉球に対して勝つことにそれほど重きが置けなかったのは残念だが、下を向くことなく、その分次のホームでは持ちうる戦力の全てをぶつけて、結果で負の連鎖を止めるしかない。また(失った勝ち点は戻ってこないが)次の大宮戦の内容・結果にもよって今回の琉球戦の持つ意味も変わってくる。

柴田監督自身も解任には難色を示していた立場で、改善策があっての就任では無いことが予想されるのでまだまだ手探りの部分もあるが、クラブの流れからすると結果を出さなければ逆風は当然強くなる。それ自体は仕方のないことだが、現場の監督や選手への理解と後押しは大切にしていきたい。

次の大宮も今シーズン序盤こそ良かったものの、なかなか波に乗れず、怪我人も増加中(前節はベンチのFPは4人のみ)と苦しい時期をすごしている。個の力や監督のロジックはしっかりしているチームではあるものの、絶体絶命のタイミングでの週末の対戦であることは(相手には申し訳ないが)山雅にとっては追い風である。琉球戦の反省や悔しさを糧にしてしっかりと勝ち点3をものにしたい。

END



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