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岡山戦レビュー~再び1つに!止めよう負の連鎖~

ホームで屈辱の3失点敗戦

栃木戦完敗&大荒れの後のホーム・岡山戦。
サポ・選手共にピッチ外でもヒートアップする出来事があったことで、リバウンドメンタリティを発揮するには絶好の試合のように思われたが、良いところはごくわずか。これまでアウェイでの大量失点による敗戦はあったが、ホームでは今季初の2点差、3失点での敗戦となった。

元々は戦術的な相互理解、経験の浅さから始まっていたのは確かだと思うが、ここから修正するにあたって「戦術面の改善だけで何とかなるのか?」というところに不安を感じる内容が栃木戦に続き、連敗を喫してしまったが幸い今年は1週間ずつ準備期間はある(勝ち点的には中断期間の前にケリをつけたい……)。

戻ってくる負傷者を組み込みつつ、前半戦残り町田・長崎・大宮・琉球・東京戦+天皇杯・琉球戦で「結果」とともに「チームの方向性」を明確にさせていきたい。

~勝手にチームMVP~

MVP→外山凌
両チーム最多5本のクロスをあげ、そのうち1つがそのまま得点に。中に入る選手が国友・横山だったのでこの試合では持ち腐れ感も若干感じたが、戸島のような分かりやすいターゲットがいればより脅威になるかも……。

次点→村越凱光
今季初出場。流れを変えた交代組はセットでこの試合の評価すべきポイントではあったが(後述)、その中でも強引なターンからチャンスを演出するなど好プレーを多く見せた村越を選出。

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~戦評~

■お互い野戦病院。穴は感じさせないのは……

戦前からコンデション不良の選手の存在は伝えられていたが、案の定前節からスタメンの選手が欠場。特に心配された村山も圍に久々にその座を受け渡し(これは前節の失点を受けてかもしれないが)、先発は4人が変更となった。
うち、柴田監督からの信頼も感じられた3人がベンチにも入らなかったので戦術面以外での変更の可能性は高く(浜崎はTMには姿はあった)、『軸として活躍していた選手の不在を感じさせない試合ができるか?』は1つのキーとなった。また、その中で最大の朗報は安東の復帰だったがそれも……。

ただ、怪我に悩まされているのは山雅だけではない。
岡山側もここ数年エースとしてチームを引っ張ってきたヨンジェを始め、田中裕・関戸・齊藤和・濱田ら経験のある選手たちが怪我で離脱中。正直、毎年のように多発する怪我人が抑えられればもう少し上の順位にいるはずのチームだと思う(とそれより下のチームが言っても説得力はないが)。

意外だったメンバー起用は上門のFW起用(厳密には1.5列目)と徳元のベンチスタート。とはいえ、徳元の代わりに入った宮崎も派手さはないものの、戦術眼に優れ、チームを助けることに長けた選手。シーズン途中の加入後初先発とは思えないほど持ち味を発揮し、自分のやるべきことを理解できていたように見えた。

スタメン

■似たような狙いを持った両者

・シンプルな攻撃が悪ではない

試合が始まってみると互いの序盤の狙いは似ていた。
シンプルに最前線の横山/川本を狙い、相手のDFラインが押し下げられたところで2列目(シャドー)の選手たちが受けるor拾うという相手のプレスを裏返すような攻撃。

この"シンプル"には『無駄な点や複雑さなどのないさま。良い意味で、単純なさま』という意味がある(日本国語大辞典より)。どうしてもこのシンプルには"楽してる""考えてない"などネガティブな印象を受ける人もいるが、本来はそういうニュアンスもなく、"無駄"や"複雑"さを避けるためのものである。また、シンプル=保持しないもこれはまた違うと思う。

話は逸れたが……山雅は前節と違い、国友もできるだけ前線付近に残り、横山のサポートを行うようなオフ・ザ・ボールでの意思は見えた、が、うまく裏に抜け、ボールを保持した後はどちらも独力で運べる力はあることもあり、そちらを選択しているシーンがほとんど。相手も裏に抜けた選手がそのままゴールへ向かう選択肢は最も警戒している所なのでそこは難しく、すぐにロストするとその苦労も無駄になる。フォローにきた味方も意味はなさないで、カウンターを喰らうシーンもいくつか見られた

先ほども言ったようにシンプルなプレーというだけでも、背景や思考によってはそれぞれに違いが出てくるので、「シンプル」=「縦に早く攻める」という漠然とした共通認識だけではだけでは、かえって無駄さや複雑さが出てくる。シンプルだからこそ同じ画を描いて攻撃を繰り出したい。

・勇気が見えたGK金山からの繋ぎ

一方、岡山の攻撃も同じく、まずは前への選択肢を見せながら2列目がそれに連動し、相手が押し下がったところで繋げる時には後ろから繋いでいこうという狙いが見えた。決して攻撃で結果を残せているチームではない岡山だが、山雅のちぐはぐな守備網の中ではある程度同じ画を描くことができていたように思う。

さらにこの試合で工夫が見られたのはGKからの繋ぎ。前から追いかけてくる横山に対してギリギリまで引き付けてボールを回すことによって、山雅のプレスは1枚少ない状況で守らなければいけなくなる。。

山雅にとっては最大のチャンスシーンとなった前半9分の横山のGKへのプレスからのボール掻っ攫い→シュート。本来ならあのプレイ後はGKもセーフティに処理することもあるが、その後も金山はブレずに横山を引きつけ、ボールを捌き続けた。厳しいことを言えば、岡山がリスクをかけてきたポイントで序盤にしっかりと仕留めきれなかったのが試合の1つの分かれ道であったことは受け止めて、今後成長してほしい。

もしかすると山雅側もこのプレーの影響で、GKに積極的にプレスをすることを止めなかった可能性もあるが、横山のスピード感にも岡山が徐々に慣れていき、簡単にこの1stディフェンスを交わすようになっていったのでむやみにプレスを続けさせたのは少し疑問が残った

■守備範囲の広さ・攻撃範囲の狭さが敗因

・利用された横山のハイプレス

これにより起きた現象は1stディフェンスから最終ラインまで守備網の間延び。

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どのように利用されていたか、そしてシンプルな攻撃になぜ苦しみ続けたのか?ざっくりとはこのように狙いを考察する。

①横山の突進によってプレスを開始させる山雅だが、明らかに後ろはついてきてはいなかったのでほぼ単騎突破状態。やばかったのは横山の背中を横切る形でボールを回されて、カバーシャドウがまるで意味をなしていなかった時。プレス時にはスピードで脅威を与えることもある横山だが、プレスバックの意識はまだ高くなく、自ら作った穴を埋めようともしていないのは気になった(どちらかというと放置して使っている側の問題かもしれないが…)
②こうなったらシャドーが2枚釣りだされることになるが、岡山CBまでの距離はかなり遠く、相手はプレッシャーを受けず好きなタイミングでロングボールを蹴り込んでいた。
③この時には川本だけではなく、両SHが裏のスペースへフリーランを仕掛け、こちらの最終ラインに圧力を加える(上門はそれによりできたスペースへと潜る)。
④山雅の523は間延びしているのに対し、岡山は中盤に選手が多く残っており、裏抜けが失敗してもセカンドが拾えて2次攻撃ができる

CBからのロングボールで一発でやられることはなかったが、このロングボールとセカンド回収により、確実に山雅の中盤は疲弊していた。横山のようなスピードが突出している選手がいなくてもロングボールで相手のラインを下げる、この裏返し方は山雅も見習いたい。

さらにその後、安東の負傷によって米原・佐藤が横並びになるシーンが増え、(物理的に)縦パスのスペースをいくらか消すことに関しては好転したが、前線のプレスの圧力は減少。さっきの横山のプレスに慣れてしまったのと合わせて、これを機に前線のプレスは自重させるべきだったように思う。

・前進することで前のスペースは少なくなる

それに対して、岡山の前線のプレスは常にDHを挟めるような位置からスタート。あえて相手のプレスが来るまで待ってから守備網の穴が広がったところで前進する岡山に対して、待ち構えている守備網に突っ込んでいく山雅

もちろん前進させること自体は悪くない。ただし、使えるスペースは狭くなり、相手のプレッシャーも早くなるのは当然のことで、その先の判断が迫られることも頭に入れなければならない。この試合ではCBが前進するのは良いが、相手のプレスバックも精力的だったことで、DHが挟まれてピンチになるシーンも多く、横山も2CBに監視され、裏を取れない状況が続いた。

このコンパクトな岡山の守備網を自陣深くに引き出さず、ここを突破するには大きく3つの選択肢があると考える

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α:網の手前で相手を揺さぶり前進する
→このシーンであれば外山から守備網の外の最終ラインにもう一度戻し、密集が薄い逆のサイドに展開→前進するやり方
β:狭くても無理矢理突破するやり方
→裏を取れない時によく山雅が行う手段。相手の密集地でも関係なく突破を目指す。ただし、その分高度な連携や河合や杉本のような狭いところをすり抜けていく技術も必要に。
γ:裏を取り、守備網を広げる
→保持時の監督の狙いっぽいのはこれ。本当は岡山のように複数人が連動して裏を狙えれば良いのだが、なぜか横山専門のタスクみたいになっているので彼のスピードで突破できなければβに行きがち。

また、これに関連して「山雅の選手もうまいはずなのになぜ相手ばかり上手く見れるのか!?」という声もよく聞かれるが、その原因の1つもここにある。極端な話、「ピッチ全体を使って鳥かごをするチーム」と「5m四方だけを使って鳥かごをするチーム」ではどちらが捕まりやすいかという話である。

試合でも鳥かごの例でもやっていることは狭いところでやっている方が高度なのだが、結果として余裕を持って繋げるのは広く使って回している方で、印象的には繋がっている方が上手く見えるという現象が起きていると考えられる。

(※ただし、これがすべてと決めつけているわけではない。"やることが整理されている人間"と"できていない人間"、どちらが力を発揮できるか?という話も関係しているはず。)

■細かなミスが重なったセットプレーの失点

そんなこんなで前半は0-0。
監督から後半勝負のプランは匂わせれていたので無得点よりも無失点で抑えたことを称えたかったところだが、後半早くに得点を挙げたのは岡山の方だった。

せっかく前節セットプレーにフォーカスしたので振り返ると…
この試合で岡山は(山雅から見て)左は左利きの宮崎幾、右は白井が担当し、栃木戦同様インスイングのボールを選択。ファーサイドにいるCB(井上・阿部)が他の中に入っていく選手の背後で1人だけ違うタイミングで飛び込んできて、ニアストーンの佐藤和-鈴木間を狙う形を取ってきた。

阪野が不在なのでストーンは2枚。こぼれ役は横山が担当し、ショートコーナーの選手がいる時は河合が担当していたが、この失点時は相手が誰も近くにいなかったのでその配置は無かった。

失点時は大野がついていた阿部がほぼ完全にマークを外して中に入ってきたがここには合わず、鈴木が白井のところにクリア⬇

セットプレー (3)

ただし、先ほど書いたようにショートコーナーのための配置をする必要がなかったので、ここにクリアをすることで突然「もう1人マークすべき選手が表れてしまう」問題が発生。
近くにいた佐藤、大野、そしてマーカーがいない横山の誰かが出ていく必要があったが、この時は大野がそのままキッカーの白井の対応に行き、自分のマークは横山に受け渡すような動作を見せている⇩

セット (2)

しかし、恐らくその意図は伝わっておらず、阿部は浮いたままバイタルに。マンツー対応の大野がいなくなり、横山に引き継げなかったことでマークが足りてないのは明らか。(得点をした喜山のマークは本来下川だったが)中にいるはずの大野がキッカーに行った状況で、下川が戻っていく喜山についていくのに躊躇したのも理解できる……(反応が遅れてしまったのは反省点ではある)。

白井からのキックは河合のクリアで弾くことができたが、そのマークが浮いていた喜山、阿部のところに行ってしまった。強いて言えば白井に出ていきかけた横山がゾーンをずらしたまま、マンツーとしてもゾーンとしても機能していなかったので、できればこのゾーンにはいてほしかったところだが、このあたりは経験を積んでいってほしい。

まずは”出来るだけ高く、遠くに、敵のいないところへ”が鉄則のクリアが出来なかった点不慣れな横山河合のところが狙われてしまった点、また、そもそもセットプレーで"勝てるポイント"があまりにも無さ過ぎて、それぞれに余裕がない点はこの試合でも反省として精査したい。

■「守備固めではない」5バック変更で勝負あり

・光った有馬監督の2つの采配・指示

そして、その後は岡山の有馬監督の采配が光る。

後半から?はこちらの3トップに合わせて3枚でプレスをかけてきた岡山だったが、後半18分にはこちらのシステムに合わせてはっきりと3421へ移行。その直前に山雅が戸島を投入して352への変更したのは予習済みであるかのように中盤を捕まえやすい形にあわせて、これが守備で1つ目の成果を得る。

システム


フレッシュな戸島を生かして反撃に出たい山雅は、せっかく入れたFWまでのルートを遮断され、状況整理に時間がかかってしまったことでピッチ内も混乱の様子。上門にミドルを喰らうなど劣勢に立たされていたが、その直後に給水タイムが入る。

このシステム変更の想定ができていたのか否か……。試合前にこの準備ができていなかったのであればすぐにチームで整理しなければならない。そういう意味ではこちらにとって恵みの給水タイムとなったはずだった……。しかし、この時間にやることを整理できたのは岡山の方。さらに有馬監督の指示がここでも当たる。

ベンチからは「サイドを使え」という指示がしきりに飛び交っていた直後に岡山が山雅を突き放す追加点。明らかにサイドの守備で隙を見せてしまったため、これが2つ目の決定的な指示となる。と同時に守備固めの3バック化ではなかったこともこれで証明されたと言ってはいいのではないか。

サイドへ流れた川本についていったのは佐藤だったが、これによって山雅DFにズレができる。これによって米原の守備範囲が広くなり、532の3の部分を米原と河合2人で守らなければいけないことに。

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(写真はJリーグ公式ハイライトより)

これは佐藤だけのミスではなく、チーム全体としてミラーゲーム気味になった状況、そしてを共有できていたのか?だいぶ怪しい。
揚げ足を取るようになってしまうようになってしまうが、「ボランチのメンバーが代わったりしたことで許してしまった」ことで起きた失点でも「経験の差がある選手がいることで生まれた」失点でもない。

下がる (4)

また問題はサイドの対応だけではない。
状況を整理すると、最終ライン上にいたのは木村とせいぜい逆サイドの河野だけだったので、そもそもラインを下がる必要はなく、サイドに流れた選手にはWBがついてスライドすれば何も問題の起こらないシーンだった。
ラインが下がることで米原の周りにはますます人がいなくなり、守備範囲が増える。失点を彼だけのせいにするのはあまりにも酷である。

ただ、相手のシステムを掴み切れていない状況、後ろの選手の疲労感、クロスからの失点の多いチーム状態でまずゴール前を固めてしまう心理も理解できてしまうのがこの時間帯でもあった。。
システム変更に対して、給水タイムを挟んでも整理できなかったことも致命的だが、失点したくない心理が強すぎるのも少し感じるので、もしかすると新潟戦のように心理面でも吹っ切れる必要があるかもしれない。

・対抗策か新たなエンジンは授けるべきだった

このまま負けているにも関わらず、村越・小手川を投入する後半の38分まで押し込まれる時間が長く、20分近く完全に停滞してしまった。

相手が守備でがっちりと組めるシステムを組んできており、こちらの疲労の色が濃かったことを踏まえると、次なる対抗策を打ち出すか、フレッシュな選手の投入を行うか……何も変えることなく、2点差の難局を乗り越えるには明らかにこのどちらか、もしくは両方が足りていなかったように思う。

この試合で交代に入った2人が見せてくれたようにフレッシュな選手が入ることで相手は混乱し、こちらの思考は活性化する。2点差を終盤で返す策があれば別だが、選手に委ねてでも動いていくしかなかった。

後退

この時間から、WBでありながら積極的に中に侵入した村越相手のプレスを受けないポジション取りで落ち着きどころを作った小手川のように相手のマッチアップを崩す選手の投入により、一時岡山側に混乱を生むことに。実際、ゴール前まで運ぶところまで苦労していた山雅もこの2人を中盤に投入した2分後には一矢報いる得点をあげることに成功している。そこに関わった戸島も交代からよく結果を残してくれた。

以前、田中パウロが投稿でも触れてくれたように、控え組の意識の高さや練習への向き合い方の良さは伝えられてきたが、その言葉が本物だったことがピッチ上で表現されたことはこの試合の一番の収穫だったのではないだろうか。まだ十分に出番を得られていない選手も多いが、引き続き、高いレベルでの競争は期待したい。

(個人的には疲労が溜まっている佐藤・前のところも表原or常田を入れても良かったと思っている)

■セットプレーに持ち込ませたくない6位町田戦

そして、土曜日にはホームで6位・町田戦を控える。
昨季は19位ながらも今オフには大型補強を行い、鄭大世やドゥドゥ、長谷川アーリアジャス―ル、高橋祥らが加入。対戦時まで無敗だった新潟・琉球に土をつけるなど力はあり、順位も悪くないものの、とにかく良い時と悪い時の差が激しい。

データとして特徴的なのは前半30分までのプラマイ収支が高い点

<得点>

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<失点>

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Jリーグデータサイトより)

町田は前半1~30分まで総得点の半分である10得点5失点。
山雅の最も得点数の高い後半31分~終了時は得点も6だが、失点も6なので収支的にはプラマイ0。いかに町田がこの時間に押し込めているかが分かる。

また両チームを見比べた時には、山雅が一番失点数が多い(6失点)時間帯前半31分以降~前終までに、町田は4得点をあげている。この時間も気を付けるとなると、まずは前半でリードされずに終えられるかが1つのポイントになってきそうだ。

そして、気を付けたいのは課題のセットプレー。今の状態では狙われるポイントが多すぎて1週間で完璧にするのは不可能に近いだろう。セットプレー用にメンバーを組むことで多少は失点のリスクを下げることができるが、まず絶対的に「良い場所で与えない事」とスカウティングをもとに「予測を立てておく事」で対処するしかない。
後は平戸のキックのフィーリングが合わない事をサポみんなでお祈りでもしておこう。

今季初の3連敗を阻止、そして何かを掴み再び浮上するためにもホームで勝ち点3を。サポーターとともに「意地」と「団結」を見せたい。

END

(画像は松本山雅公式)





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