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営業をチームに生かす——商談を可視化・シェアする「パイプライン管理」とは

プロダクトを販売する際、アンケートやインタビューは顧客の関心度を測るための有効な手段ですが、すべての打ち合わせが購入に直結するわけではありません。最終的な購入に至るためには、商談を通じて課題や条件を明らかにしながら、潜在顧客から購入顧客へと確度を高めていく必要があります。

人員が少なく、プロダクトの更新サイクルも早いスタートアップにおいては、営業担当者が全てのプロセスを管轄し、適切にフィードバックすることは容易ではありません。

そこで、ファーストコンタクトから購入に至るまでのプロセスを可視化し、アクションを具体化するためのツールとして「アタックリスト」と「パイプライン」を紹介します。特に後者は顧客からの評価を可視化するもので、社内で共有することでより強い効果を発揮します。


商談の成否を営業担当者だけに委ねない

営業活動の出発点として、プロダクトを展開したい商談相手を記録した「アタックリスト」を作成すると良いでしょう。

会社名やコンタクト相手の氏名、部署、連絡先が記載された簡単な形式で構いません。ExcelやGoogle Spreadsheetなどを活用し、候補を全て洗い出し、それぞれにコンタクトしたか否かをまとめて管理します。

アタックリストのサンプル

このアタックリストを基に、営業担当者は顧客とのコミュニケーションを進めますが、その成果が個人に依存することは望ましくありません。なぜなら、プロダクトが売れるかどうかは、営業担当者の手腕だけに左右されるとは限らないからです。

商談が途中で失敗した場合は特に、その理由をチームにフィードバックすることが重要です。顧客の意見を開発チームにも繋げることで、プロダクトが良くなる機会を逃すリスクが減少します。プロダクトマーケットフィットを達成するためにも、商談の状況や成否は営業担当者のみならず、社内全体でシェアすることが必要です。

商談状況を可視化し管理する「パイプライン」

商談の内容をチームでシェアするためには、アタックリストだけでは不十分です。さらに一歩踏み込んだ「パイプライン」を活用しましょう。

パイプラインは個別の商談の状況や課題、成否などをフェーズごとに分類したものです。Notionが公開しているテンプレートでは「リード」「課題確認」「提案」「交渉」「成約」「失注」の6プロセスに分類した上で、個別の商談に「社名」「担当者名」「売上見込」とメモが記載されています。

出典:Notion(2024年6月21日スクリーンショット)

この例では「リード」が3件ありますが、この数が想定通りかどうかを直感的に理解できます。広告やプレスリリースを出していたとして、不足しているなら何が原因なのか、流入経路が正しいかなどが深掘りできるでしょう。「課題確認」で止まっているのであれば、想定していた課題と実情の差や、課題ではあるが緊急性や深刻度が低い状況などが浮かび上がってきます。

「提案」や「交渉」のフェーズでは機能や金額が話題に上り、想定していた機能や価格設定などの正しさが検証できます。これらの関門を全て超えると「成約」に辿りつき、ここまでの仮説検証が全て正しかったことが示されます。

このように、パイプラインの左側から右側に進む過程で、課題や脱落していく案件が可視化されます。どの案件がどんな理由で脱落したかを突き詰めることは、プロダクトのマーケットフィットや仮説検証に役立ちます。

もしプロダクトが完成しておらず、プロトタイプや企画書の段階だったとしても、相手に提案して契約や購入に進む可能性があるならば、パイプラインでの管理を始めましょう。

営業活動をチームで推進するための文化作り

パイプラインは一週間に一度を目安に振り返りましょう。ここで重要なのは、営業担当者だけでなく、エンジニアチームやバックオフィスも含めて、チーム全体でシェアすることです。職能やスキルを跨いだフラットな議論を通じて、プロダクトや販売戦略の改善を各担当者起点で行えるようになるからです。営業担当者だけに負荷をかけないために、パイプライン管理を行う際には次のような点を心がけましょう。

1. 更新に時間をかけない

詳細なレポートにはコストがかかり、商談が失敗していた場合には精神的な負荷も伴います。記録のフォーマットを定め、できる限り作業をシンプルにすることで、更新の負担を最小限にして、商談後すぐに更新できるようにしましょう。

2. 人ではなく事実にフォーカスする

責任を個人に押し付けることが目的ではありません。あくまで商談内容だけにフォーカスして、課題点や改善点を明確に記載しましょう。

3. 情報のシェアを褒め称える文化を作る

パイプラインの導入が初めての場合は特に「商談内容をシェアすることは、会社全体の役に立つ」という意識を浸透させるため、積極的な情報共有を社内で褒め合う文化を作りましょう。

なお、営業効率や成約率を上げるためにもパイプライン管理は役立ちます。どのフェーズにどのくらいの規模の商談があるかを可視化し、商談ごとのプロセスや確度がわかれば、期ごとの売り上げや必要となるリード件数など、次のアクションも見えてきます。事業規模が大きくなれば、SFA(営業支援システム)の導入を検討しても良いでしょう。

(取材・文:淺野義弘、シンツウシン)

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