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売上に貢献しないプレスリリースは意味がないーースタートアップのPR戦略とは

スタートアップの「先輩」に成功の秘訣を伺うトークセッションのレポートの続きです。前半ではシード期からチームを成長させる方法や、提携すべき大企業の傾向について、ZMP代表取締役社長 谷口恒氏に伺いました。

後半では売り上げを積み上げていくための効果的なPR戦略と、2020年に向けての取り組みについて伺いました。

企業のドアを叩いても、モノは売れない

BtoB分野のスタートアップが営業に出ても、仕事が決まることは無いと思います。まして、実績も乏しく組織も小さなスタートアップであれば尚更です。

ZMPも営業のほとんどはインバウンドです。いきなり自動車メーカーに行っても相手にされないのは目に見えていましたから、自分たちの活動を知ってもらうかというPRを重視していました。こちらの取り組みを知った企業から問い合わせを受け、訪問して説明し信頼関係ができて初めて取り引きが成立し売り上げになる—その積み重ねでした。そういった繋がりもあって、10年以上の付き合いになる取引先も少なくありません。

ZMP創業前に広告代理店出身の人たちとインターネット関連の会社を立ち上げました。その時に効果的なプレスリリースの書き方やPR戦略を身に着けたので、代理店は使っていないし広告宣伝にも金は使っていません。

積極的にプレスリリースを出し、メディアに取り上げてもらうことで、問い合わせにつなげるという活動に軸足を置いています。
プレスリリースにおいて重要なのは、嘘がなく誠実であるということは大前提ですが、多くの人の感性に訴えるような内容であることです。そして、ただプレスリリースを出すのではなく、必ず商談や売り上げにつながる道筋を作っておくことです。

ロボット関連のスタートアップはメディアにとって新規性が高いので、取り上げられやすい傾向にあります。取り上げられて舞い上がって終わりではなく、そこから製品の受注や引き合いがないと意味がないのです。

人型ロボットを開発していた頃、メディアに取り上げられる機会が多く、話題のスタートアップとして注目される機会にも恵まれました。しかし、肝心の出口がなく、大きな売り上げにつなげることができませんでした。同時期に人型ロボットを開発していた会社の大半が撤退しました。その時に「取り上げられるだけでは駄目なんだ」と気づきました。

こうしたことはロボットに限らず、AIやIoTなどバズワードとして取り上げられる業界にいるスタートアップにはよくあることです。開発にしろPRにしろ、スタートアップは出口をきちんと見据えることが重要です。

最近の事例を紹介すると、2019年のクリスマスに茗荷谷駅からZMP本社までの道のりを一人乗り用のパーソナルモビリティ Robocar Walkで移動する無料試乗会を高齢者向けに実施しました。
このRobocar Walkは、警察庁より車椅子と同様に歩行者扱いという見解を頂いており、公道を走行することができます。
空港や商業施設などのプライベートエリアへの導入も含め、2020年5月からの正式販売・サービス提供を計画しています。試乗会は在京のテレビ局など大手メディアで取り上げられ、2020年からのサービス開始に向けて効果的なPRとなりました。

2020年はあらゆるスタートアップにとって、チャンスの一年

自動運転技術は、この数年でカメラやセンサー、そしてデータを処理する技術が飛躍的に伸び技術基盤も確立しつつあります。ただし、自動車の完全自動走行が実用化するのは、ずっと先でしょう。

ZMPは自動車の自動運転の研究開発を進めながら、人間の歩行速度程度のスピードで走行する宅配ロボットや警備ロボット、高齢者や移動に不自由を抱える人向けのパーソナルモビリティを開発し、2020年のサービス開始を予定しています。日本のスタートアップにとって、オリンピックイヤーとなる2020年は、自分たちの技術、プロダクトを国内外に認知させ、世界中から日本が注目を集める貴重な機会です。ZMPも自動運転モビリティを通じて、自動運転が実際に利用できることを広くアピールし、周辺サービスも含めたパートナーとの提携も進めながら、新しい産業を生み出すことを目指しています。

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文・越智岳人