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企業やVCが評価する「良い事業計画」とは

前々回の記事では事業計画の土台となる5年分のアクションプランについて紹介しました。

今回は事業計画の基本的な構成や、ビジネスを前進させるための事業計画の作り方について、HAX Tokyoで実際に行われているプログラムの中から抜粋して紹介します。

事業計画の構成

事業計画は主に定性的な項目と定量的な項目に分けられます。

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定性的な項目
• 経営者の経歴、チームのポテンシャル
• 企業の動機
• ビジョン・目標
• 事業コンセプト・内容
• 市場や競合など現状分析
• 販売実施体制・社内体制

定数的な項目
• 販売計画
• 損益計画
• 人員計画
• 投資・調達計画
• 実行計画

ピッチやプレゼンテーションでは、自分たちのバックグラウンドや事業の構想や市場環境、そして中長期的な目標といった定性的な情報を資料に盛り込むことが一般的ですが、事業計画ではそれらに加えて、定性的な情報を裏付ける数値計画を盛り込みます。

あなたが思い描く成功までのストーリーと、そのストーリーを数値で説明するのが事業計画の基本です。

とはいえ、事業計画はあなたのビジネスプランを説明するには万能ではありません。特に将来像やビジョンを無理やり数字に当てはめてもリアリティを欠いた内容になりがちです。
定数的な項目は短期にフォーカスし細かく設定するなどして、しっかりと積み上げていくようにして作成しましょう。例えば人員計画であれば、全社員まとめての人件費ではなく、以下の図のように役職やグレードごとに給与を設定しましょう。

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人員計画から月次の人件費をまとめた例

売上計画は新規顧客と既存顧客に分け、商材や単価に沿って目標を設定するなど、売上がどのように変動していくかを可視化しておきましょう。売上の変動要因を因数分解して考えられるようにすることで、後から振り返った際の検証や、今後の予測をアップデートする際も根拠を基にロジカルに考えられるようになります。

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いつ事業計画は作るべきなのか

「製品開発や仮説検証を急がなくてはいけないし、営業に行く必要もあって、事業計画を作るタイミングがわからない」という話を、スタートアップ創業者から聞くことがあります。「事業計画を作れば売上が立つわけでもないし、必要無いのでは」という考えを持つ創業者もいるでしょう。確かに事業計画を作成したからといって、その通りに物事が進むわけではありません。しかし、パートナー開拓や資金調達を通じて、事業を加速させるには事業計画は不可欠であり、企業担当者やVCからは必ずと言っていいほど、事業計画書の提出を求められます。その段階でゼロから作成するのではなく、先に紹介したような5年分のアクションプランから着手するのがいいでしょう。

特にシード〜アーリーステージのスタートアップの場合は、本格的な事業計画書を作成する前に短期的な資金繰り計画と、事業の成立可否に左右する仮説検証の2つを優先しましょう。足元のファイナンスに不安があると、先々のことを考える余裕がなく、説得力に欠いた内容になりがちです。経営の最優先事項である目下の資金繰りと仮説検証を済ませてから、中長期的な事業計画を立てることをおすすめします。

良い事業計画は、考え尽くしたことが伝わる

まだ市場に存在しない事業を立ち上げようとするスタートアップの事業計画は、ややもすれば「絵に描いた餅」と思われがちであり、その内容の正しさを評価する共通の基準や規格は存在しません。しかし、事業会社との事業提携や投資家からの資金調達、これから採用する社員の採用など、それぞれの場面で「絵に描いた餅」に説得力がなければ、計画通りに事業を進めることはできません。

事業計画に説得力を持たせるためには、どれだけ事業計画に時間を裂いたという一点に尽きます。自分たちの仮説が何故正しいと言えるのか、事業をすすめる上でどんなリスクがあり、それを回避する策はあるのか、どのように売上を積み上げて、最終的なゴールに到達するのか等、読み手があなたの事業に関わる上で必要な情報が、どれだけ盛り込まれているかが「絵に描いた餅」と事業計画書に違いを生むのです。
言わば、あなたがどれだけビジネスに真剣に向き合っているかを表すものが、良い事業計画なのです。VCや事業パートナーなどのステークホルダーは「事業計画が正しいか」を見ているのではなく、あなたがどれだけビジネスに真剣に向き合っているかを評価しているのです。

もちろん、ビジネスには変化は付き物です。事業計画はステークホルダーにリクエストされて、その都度作り直すのではなく、日頃から内容を見直し、アップデートし続けることを心がけてください。

事業計画はリクエストされて作成するもの、と言うだけではなく、自分の会社の仮説・プランを検証してより良くするためのツールとしても使うことができます。

「過去の自分は何故この数値、この目標にしたのか」
「実際の事業開発の進捗や売上の状況と照らし合わせて、どのように計画をアップデートすべきか」

という問いを自らに問いかけながら、目標を見直し、成功までの道筋と根拠となる数字に説得力を持たせましょう。

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監修:HAX Tokyoディレクター 市村慶信
取材・文:越智岳人

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