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CEOはChief Everything Officer! Moffがピボットに成功した理由

腕に装着するウェアラブルデバイスを高齢者の介護予防分野で提供するMoff(モフ)は、起業当初は北米のおもちゃ市場をターゲットに事業を展開していました。

BtoCからBtoBへ、そして海外市場から国内市場への転換をどのように実現させたのか。スタートアップのCEOがやるべきことについてMoff代表取締役の高萩昭範氏に伺いました。

Moff
Moff は、もっと多くの人がより健康な毎日を送れるよう、最先端のテクノロジーを活用して、楽しく持続可能なヘルスケア・サービス作りに取組んでいます。
Moffのヘルスケアソリューションは、ウエアラフブルデバイスと 3 次元動作認識技術を用いたアプリをベースに、アクティブなゲーミフィケーションやスポーツ健康科学、理学療法の分野の専門家の協力を得て設計されています。
運動や健康、ヘルスケアの分野でユーザーの皆さんから本当に必要とされるサービスを提供することを目指しています。
https://jp.moff.mobi/

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介護施設向けIoTリハビリ支援サービス「モフトレ」アプリ(右)、
Moff Band(左)

−−当初、スマートトイから現在の介護予防に転換するに当たって、どのような苦労がありましたか?

2016年末に介護予防への転換したわけですが、いきなり決めたわけではなく、1年をかけて実証実験を重ねてきた上での判断でした。

経営者としては、事業転換をいつ判断するのか、そして、どのように社員や周りのパートナー企業に理解してもらうのかが最初の重要な仕事だったと思います。そのためには実証実験を通じて、成功できる可能性を高めていくと同時に、リソースが分散して中途半端にならないよう、新しい事業にピボットすることへの合意形成を取り付けることがCEOとしてやるべきことでした。

また、市場が変わるので、新規に取引先を開拓しなければなりません。そのためには営業面でもマインドをBtoCからBtoBのマインドにスイッチして取り組むようマネジメントする必要がありました。

――おもちゃとしてのMoff bandから、介護市場向けのMoff bandとして会社もプロダクトも適応させる必要があったわけですね。

事業開発面では提携先を開拓するべく、とにかく商談数を増やしていました。その中にはうまくいく見込みで半年進めていたのに、途中でうまくいかなかったケースもありました。

数をこなすメリットとしては、商談の内容や相手によって成功する確度がわかるようになることです。担当者や部門にどの程度の予算や権限があるか、自分たちとの協業で具体的にやりたい事が見えているか、最終的な決裁に至るまでのハードルなどの判断軸が身につくことによって、後半は商談の早期に可能性を見極めることができるようなりました。

――逆に、うまくいきそうにないと判断する基準は?

事業性に見込みがない場合は、うまくいきませんね。提携先の企業にとっても事業性がなければ、どこかで決裁が止まりますし、スタートアップも限られたリソースで、効率よく開拓する必要があります。具体的な売上見込が双方でイメージできないのであれば、実現性は低いと思います。

特にシード期は一人でいくつもの役割を兼任するのが基本なので、事業開発ばかりにリソースを奪われると開発が滞るという状況にもなりかねません。CEOとして当時意識していたのは、先回りして事業を進めることと、周りが忙しくてできていないことをカバーすることでした。

試作品の完成度が上がってきたら、量産を意識して資金調達に着手するとか、開発に全員が集中しなければいけない場合は人事や経理などのバックオフィス業務を率先して進めていました。CEOとしてキャッシュフローをしっかり見て、次にやるべきことやカバーすべきことをやっていましたね。

――まさにChief Everything Officerですね。採用やチームビルディングの面ではいかがでしたか?

採用では自分の知り合いの中で一番優秀で信頼できる人に紹介をお願いしていましたね。それだけでなく、人に会うたびにこれからやろうとしていることを話していました。そういったやりとりの中から、いい人に巡り合ったときには、自分が思い描いている未来の話を伝えて、アプローチするということをひたすら繰り返していました。

当時を振り返ってみて、良い仲間、良いチームを作るには楽しそうにやっていることが重要だと思いますね。このチームの中で働いたほうが大企業にいるよりも良さそうだって思ってもらえるような雰囲気作りも大事な仕事ではないでしょうか。

一緒に働きたいと思った人の中には、採用する上で1つだけ欠けている経験やスキルがある場合もあります。そういった場合は業務委託で参加してくれる人に穴埋めしてもらうのも一つの選択肢です。必ずしもスペックばかりを追い求める必要はないと思います。一緒に働きたいと思える人を採用することが、良いチームの構築につながります。

――最後にこれからハードウェア・スタートアップを目指す方に対して、アドバイスが有ればお願いします。

ハードウェア・スタートアップは大変だとか、なかなか投資を受けられないといった話がありますよね。しかし、私が事業会社や投資家の方と会うと、「本当はハードウェアスタートアップに投資したい」という話をよく耳にします。

このギャップを埋めるには作ったものがビジネスとして成り立つということを、きちんと訴えるべきです。そのためにも量産する前から作ったものが売れるのかという検証をすることで、在庫の山を抱えないように準備しておくことが大事なのではないかと思います。

投資に対する意欲を持っている企業は多いので、自信を持ってスタートアップの世界に飛び込んで欲しいですね。

(聞き手:市村慶信 文:越智岳人


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