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会社をつぶさないためにも、バーンレートとランウェイを見よう

前回の記事ではスタートアップの資金調達手段として、VC(ベンチャー・キャピタル)やCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)、エンジェル投資家からの投資、金融機関からの融資、そして行政による助成金について解説しました。

これらの調達手段をいつ、どのタイミングで調達するべきなのか、また調達する確度を上げるための作戦について、前回に引き続きスタートアップ向けに財務戦略サービスを提供するカウンティアに伺いました。

創業者が見るべきバーンレートとランウェイとは

出資や融資、助成金について解説しましたが、これらを活用にするにあたってスタートアップ経営者が見るべき自社の指標はバーンレートとランウェイです。

バーンレート(Burn Rate)…会社を経営していくために必要な1ヶ月の資金
ランウェイ(Runway)…資金が尽きるまでの残り期間。
残キャッシュ総額÷バーンレートで算出される。

一般的な目安としてはランウェイが18ヶ月以上であれば安全圏で、12ヶ月を切っていたら調達を具体的に検討するタイミング、12ヶ月以上18ヶ月未満であれば注視すべきだとアドバイスしています。

この2つの指標を改善するには、キャッシュを増やし、バーンレートを低く抑えることに尽きます。
キャッシュを増やすためには、あらゆる資金調達を検討する事です。スタートアップであろうとも、時に受託開発を請け負うことが生き残る手段となる状況もあり得ます。受託開発は自社プロダクトの進捗が遅れてしまうのですが、そもそも会社として生き残れないのであれば本末転倒です。

また、パーンレートを抑えるためには、ストック収入を増やすことやコストカットという手段も考えられます。
ストック収入を増やす戦略は、景気後退局面ではサブスクリプション売上の比重を戦略的に高める事が考えられます。固定収入を増やす固い事業構成が状況を有利にします。
コストカットついては人件費が対象になることも多く、辛い選択となることもあります。しかし、「生き残る」という観点で言えば、必要な状況では迅速にリストラを行ったスタートアップは生存率が高い傾向にあります。家賃や外注費などの削減も考えられますが、思い切った判断を迅速に行う経営者は生き残る確率も高くなります。
生き残った先に次のチャンスが待っていることも多々あります。

ランウェイはとにかく長ければ良いという指標でもありません。財務専門家とよく話しあって、経営スピードに合わせて戦略を練っていきましょう。

パワポの使い回しはNG−−調達先ごとに異なる作戦

資金調達において、スタートアップが採るべき作戦の基本は「調達できるものはあらゆる手段で全部調達する」に尽きます。しかし、戦略なしには全て調達できません。

例えばシード期のスタートアップがVCからの投資と金融機関からの融資を受ける場合、VCからの投資が確定してから、銀行に相談に行くだけでも融資額が大きく変わります。資本金が厚くなり、審査上で安全性が増すためです。

また金融公庫から創業融資を受けたあとの方が民間の金融機関からの借り入れもしやすくなります。資金調達は、資本を通じて社会的な繋がりを作っていくという性質も持っています。リファレンスがあると信頼が増すというのは資金調達のみならず営業でも人事でも共通の事象ですよね。こうした関係性を抑えておくだけでも、資金調達はやりやすくなってきます。

融資や出資先へのプレゼンでスタートアップにありがちなミスに、VC向けの資料を銀行に持っていくことが挙げられます。なぜ、これがミスなのでしょうか?

VCは目指す市場の規模や事業の成長性などのヴィジョンを評価しますが、金融機関で評価されるケースは稀です。彼らが求めるのは「どうやって返済するか」という現実的な計画です。

そのためにも金融機関からの融資を受ける際には事業計画のほかに、現時点の実績を示す資料を重点的に準備し、返済原資となる収益源への問いに答えられるようにしておきましょう。こうした観点からも受託開発を戦略的に請け負うことは信用を得る上で非常に重要です。

シード期は頼れる財務チームを社外の専門家と作ろう

スタートアップが生き抜くためには、システム開発や事業と同じように財務に関するチームビルディングが不可欠です。
ただし、起業した初期段階からファイナンスにチームを社内で持つことは難しいでしょうし、優れた財務担当をアサインできるとも限りません。

そのような場合には公認会計士や税理士や弁護士など外部の専門家を組み合わせてチームビルディングすることをお勧めします。ここで重要なのは目的とゴールをはっきりさせておくことです。何を依頼するかによって、依頼する先も異なります。弁護士一つとっても知財管理と契約書の作成で使い分けることが大事です。

私たちカウンティアでは資金調達や株式上場などの「攻めのファイナンス」を得意としていますが、税理士は記帳業務や税務申告などの「守りのファイナンス」に強い、といったように、ファイナンスというカテゴリーの中でも役割分担は存在します。

目的毎にエキスパートと組み、強いチームを作るためには、会社が目指すヴィジョンをしっかり持っておくことが重要です。売上を伸ばして急成長したい場合と、細く長く経営したい場合とでは専門家は異なります。頼れる専門家チームを構築するためには、ファイナンスの知識と、自分たちの理想を言語化できるようになりましょう。

必要になる前から会い、ファイナンスを学ぼう

必要になってからファイナンスについて勉強するのではなく、常にアンテナを張っておくことが重要だと話しましたが、同時に調達先候補や財務専門家とのコミュニケーションも早期に開始しておきましょう。
良い財務専門家を見つけるには、コミュニケーションの面で相性の良い先を選ぶのも一つの手です。質問ややりとりしやすい相手であれば、専門知識も蓄えやすく、企業の成長に従ってファイナンスリテラシーも身につくでしょう。
経営者がファイナンスリテラシーを高める為に一番良いのは、財務専門家と自社課題について良く話し、一緒に課題解決に取り組む事です。

創業者が専門家から学ぶべきことは計算式や法規制ではなく、ファイナンス思考を学ぶ事です。ファイナンスという考え方で経営を見る力です。
財務顧問と良好な関係を気づき、最先端のファイナンス思考を学んでみてください。
逆に値段だけを見たり、管理業務の下請け先としての関係値で選んだりしてしまうと、ファイナンスリテラシーを学ぶ機会がなくなっていまいます。また、いざという時に話がこじれる原因にもなります。

取材協力:カウンティア

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(取材・文:越智岳人