娘よ、ごめん。そしてサンキュー
著者:杏ワイルダー
夕飯の後片付けを済ませ、さて録画しておいた朝ドラでも観るか、とリモコンを取ろうとしたところで、「明日の授業で発表する宿題のスピーチを聞いて」と、娘がパソコンを手にやってきました。
テーマは「日本と私」。へえ〜、どんなことを書いたのかな、と興味津々で耳を澄ましていましたら、冒頭からショッキングな内容で、私を不安にさせました。
「小学校4年生の時から、私には自分の部屋がありません」
えっ!? 「日本と私」についてじゃないのか。私の不安げな様子に気づいたのか、「まあ、最後まで聞いて」と娘が続けます。
「自分の部屋がないかわりに、私には80人ぐらいのお姉さんや妹がいます」
スピーチの大まかな内容はこんな具合でした。
わが家は10年近く前から、日本からの留学生をホームステイさせており、寝室は彼女たちが使い、自分は離れのコテージで両親と寝ている。勉強はほとんど、留学生のみんなと一緒にダイニングテーブルでやっていて、みんなが難しい英語の宿題を一生懸命やっているので、私も頑張ろうと思っている。
宿題だけでなく、ダイニングテーブルでは、日本の学校のことや、好きな音楽や映画、芸能人、流行っているファッションやお化粧のことをおしゃべりしたりして楽しい。みんなに英語を教えるだけでなく、みんなから日本の若者の言葉を教えてもらっている。日本の学校でのいじめの問題についても知った。日本の若者のことをいろいろ学んだ。
そして彼女のスピーチの最後は、次のように締めくくられていました。
「私には自分の部屋がありませんが、部屋がないことのベネフィットのほうが大きいと思います」
娘よ、ごめん。そしてサンキュー。
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