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1億円の低カロリー

「いずれは世に広まる技術です。今は出資段階ということで特別な方だけにご紹介を…」
 セールスマンの言葉に私は見積書を見る。払えない金額ではなかった、むしろ社長である私にとっては、安いぐらいだ。
「しかし本当にこれで、寿命を延ばせるのかね」
「文字通りの植物人間といいましょうか。水と日光さえあれば腹が空くこともなく、快適そのものですよ」 
 
 契約書へ同意のサインをすると、一錠の薬を渡された。飲むと、手や顔に緑の斑点が浮かんできて…。見た目だけでなく効果もあった。
 呼吸をするだけで生きていけるのだ。やがて動くことすら億劫になり、みれば全身は幹のように硬く、足の裏からは根が生えている。やがて、私は荒野の真ん中に植えられた。
 聞けばこの辺りにも、昔は緑が広がっていたそうだが、どこかの会社が根こそぎ切り倒したらしい。しかし今はどうだ、都会から金持ち達が植えられていく。
 まあこれが、企業家の責務。社会貢献というやつなのだろう。

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