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1億円の低カロリー

「おい、金の用意はできたのか」
「はい、きっかり1億円あります。これを茂みに隠せばいいんですね」
「いやに、冷静だな。それとも熱量がないというべきか」
「あなたも初めてじゃないんでしょう。手際が良すぎる。それを見込んで、お願いがあるのですが…」
 俺は嫌な予感がした。電話の先の声は続けて言う。
「金は払います。だけど子供は返さないでください。妻も私も、疲れたんですよ。その子を世話することにね」
 さらってきた子供の方に目をやると、ものほしそうに指をしゃぶっている。お腹が空いているのか、それとも愛情に飢えているのか。
「分かった、子供はこちらで処分しておく」
「ああ、それなら安心だ。どうか、警察には目をつけられないように」
 そこで、がちゃんと電話が切れた。俺はため息をつく。
 まったくこれだから、いかん。最近は、子育てに嫌気がさした親が増えすぎている。俺も足を洗うべきなのだろう。しかし、今まで連れ去ってきた子供たちの養育費が…。

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