Bruckner Symphony No.3 Movt. 1

「不機嫌な姫とブルックナー団」を読んだので、ブルックナー re-visited である。

大御所ワグナーにはウケがよかったのに初演がぼろぼろだったという第3番。確かにところどころワグナーを思わせるところもあるし、後のマーラーを予感させるところもあってなかなか面白い曲だ。

異なる版の問題だが、ここでは評判の悪いシャルクの第二版(レティヒ、1890)を使っている。単に最初に聞いたのがこの版だというだけで、特に深い意味はない。

練習番号Aで出てくる印象的なオクターブユニゾンの主題であるが、繰り返しの二度目は和声付けがなされているのでそれを見てみる。音はこちら。オルガンの音にしてみた。

独創的だと思う。7小節の間にトリッキーな転調が含まれていて、3小節目もAではなくAbをかすめてくるのでC majorではなく、C minor なのでしょうね。青い四角で囲んだ、C から Db への6度の和音の半音常上昇がなんとなくワーグナーっぽい(?)。6度の長三和音の並行はどの音程でも禁則が起きないのでなんとでもなるのだが、ここでは非常に印象的な効果をあげている。Db から A7への移行はI - VIの移動でやや無理ながらすぐに元調に復帰する。

この主題は展開部の前にもう一度登場する。練習番号Cの部分。

今回はIV度調で登場するのだが、二小節目の頭が一筋縄ではいかない和音である。C上の減七和音がBbの上に乗った形になっていて、おそらくF7b9の根音省略が、基音であるBbの上に乗っているという形だろう。これは属和音となって、Bbmに解決するが、そのあと奇妙な進行(Ebm7 Eb7 Ab)となるが、3小節目はFbも出てくるし、Ab minor と解釈してみた。AbからAへの同じ半音上昇のあと、これも前回同様長3度下のF7にはいるが、次のFdim7はBb7b9の根音省略と解釈することもできるかもしれない(?)その後Bbm7になるのだが、その後ホルンがF単音でこれを受けるのだが、この辺はブルックナー流の変態和声である。

この主題は再現部にもう一回現れる。

ここでは最初の出現とほぼ同じ形だが、冒頭からして少々変わった形になっている。2小節目の頭はA7b9(属和音)の根音省略と見ていいだろうか。

ブルックナーも結構、和声的な芸を含んでいて面白い。

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