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Jun Yamamoto 音楽を語る(2)

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クラシック音楽のいいとこどりをして語ります。
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2018年9月の記事一覧

Mozart Piano Sonata K280 F dur Movt. 1

モーツァルトにケチつけ、その2。

ヘ長調のピアノソナタK280の第一楽章だが、これもモーツァルトの耳がよすぎるせいなのではないかと思うのだが…17小節目から(音はこちら)。

19小節目、21小節目の赤で囲んだ部分が気になる。とりあえず4声体にして、適当な和声付けを検討する。音はこちら。

最適解かどうかはともかく、これならそれほど気にならないと思うので、オリジナルにはめ込んでみた。音はこちら。

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Franck Violin Sonata 1st Movt.

超有名なフランクのヴァイオリンソナタ。第一楽章の第二主題。そもそも第一主題はさらっとした9度の和音の分散和音。第二主題は少々手がこんでいる。

要は、繰り返される赤枠で囲んだ和声進行が発明である。V7から長三度下の長三和音の第一転回形にバスを動かさずにつなげるという、それだけのことなのだが、大変効果的である。3小節目は少々例外的だが、ほぼ5回同じ形を繰り返して第二主題を印象付けている。音の性格が非

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The Scale of Orpheus (奥泉光「鳥類学者のファンタジア」から)

奥泉光さんの「鳥類学者のファンタジア」は大変面白いファンタジー小説である。

音楽も物語の主要なテーマであり(ちょっとネタバレだが)「オルフェウスの音階」という一種の音列が登場する。

これは弦なり板なりの発音体の長さをフィボナッチ数列に従って配列することによって得られる音階である。たとえば、フィボナッチ数列の第一項である1をピアノの中央ド(523.251Hz)においてみる。そして、発音体の長さが

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Mozart Piano Sonatas K333 and K533

吉田秀和さんの「モーツァルト」の中で、モーツァルトにおける「バッハ前」「バッハ後」という話があって、K333とK533を比較している。どちらも第2楽章に出てくる対位法的な部分なのだが、まずK333の方。

吉田さんも書いているが、ここではモーツァルトが自分の「よすぎる耳」をもてあましているように感じられる。譜例冒頭の前はBb7(変ホ長調の属和音)なのだが、E F# Aという冒頭の和音はいかにも唐突

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Toshio Nakagawa "Passacaglia per ut re ut fa mi"

中川俊郎先生60歳のバースデー・コンサートにて初演された中川先生ご自身の新作「ut re ut fa mi によるパッサカリア」ですが、当日のプログラム表紙に冒頭部分の楽譜があり「これは不採用分です」ということではありましたが、曲を聴く限り冒頭部分はほぼこの楽譜によるものと思われるので、勉強させていただきました。(ダイナミクスがついていますが省略しています)音はこちら。

もともと数字付バスが書か

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