
旅とサッカーの出版社設立に向けて、資金調達、起業に向けたお金の話をざっくりと
お金集めよりも物作りのほうが楽しいよ。
そんな姿勢で生きてきたし、それについては今後も変わらないのだけど、若いクリエイターの夢を育てるポジションになって来たのもあって、腰を落ち着けてビジネスと向き合うことにした。
やるからには徹底的にやる。それが大事!!
ぼくは今、タクシードライバーをしながら、文章を中心としたクリエイター活動を続けている。
そもそもタクシードライバーを始めたのは、起業のアイデアがなかったから閃きを得るためであった。
タクシードライバーは起業するまで、お金の目処がつくまで。そう思っていたことは否定しない。
ただ、もし起業が成功してもタクシードライバーをやめるつもりはなくなった。
両立できるし、両立するからこその価値も生まれるし、シナジー効果も高いからだ。
両立というよりも鼎立。
タクシードライバー、物書き、社長。
この3つを同時にやることは十分に出来るし、3つやっているからこその価値も生まれることだろう。
話は逸れるが世の中の社長はタクシー乗ったほうがいいと思う。上も下もいない、気ままかつ自由な時間が持てる上、収入まであるわけだから。
さておき。
起業をするときに大切なことは、「得意なこと」を「小さく始める」ことだとわかってきた。
ぼくが得意なのは文章を中心としたコンテンツ製作なので、そこから始めるべきなのだろう。
何が儲かるかではなく何が出来るか。例えばエアコンの清掃業やアプリを作って売るのでは駄目なのだ。
どうして駄目なのかというと、ノウハウを身に付けるまでに時間も労力もかかる。そのため、社長自身がフルコミットしないと回すことが出来ないからだ。
既に身についているノウハウで勝負する方が効率的なのだ。
効率的に事業が出来れば社長がフルコミットしなくても良くなる。このことによってぼくはタクシーに乗る時間と文章を書く時間を確保することが出来る。
いやいや、甘いよ。社長がフルコミットしないと回らないよ。
という意見も聞こえてきそうだ。実際、起業の難しいところはここにある。経営を圧迫するのは「人件費」であることが多く、「人件費」を抑えるための最善の方法が、社長が働くことだからだ。
もちろん社長にも人件費はかかるのだが、経営状況に応じて、月給換算で3万円でもいいのだ。うまくいってから少しずつ報酬を増やしていくという考え方をすればいい。
だから、飲食店を立ち上げた社長には「最初は人に任せようと思ったんですが、思うように行かず、半年間ずっと店舗にいました」みたいなことを言う人が多い。
飲食業の経験があることと、飲食関係のリクルートおよび人材育成が出来ることはまったく違う。起業するために必要なノウハウは、実務以上に人材を見いだす目と育成力のようだ。
そういう意味でいうと、コンテンツ制作については、適性の有無を見抜き育成してきた実績もあるし、これからも再現できる自信がある。やはりここで勝負するべきなのだろう。
と、考えた時に、ぼくは既に起業をしていることに気付く。
起業とは、事業を起こすことだ。
ぼくの中では有限会社とか株式会社を起こすことが起業だと思っていたのだが、定義上はそうではないらしい。個人事業でも起業という扱いになるようだ。
ということはフリーランスも起業ということになる。そういえば開業届を出すわけだから当たり前といえば当たり前だ。
そう考えると「起業」というものは言葉の意味においては大して重みもあるものではない。税務署に1枚の紙切れを出すだけである。
そしてぼくはずっとフリーランスでやってきているし、OWL magazineという事業を二年間継続させてきている。ということはもう起業をしているのだ。
これから起業をする必要なんて全然なかった。
ただ、OWL magazineをやっているといっても事業の規模としては極めて小さい。売上は一定以上はあって、原稿料も一定以上支払えているという意味で、サッカーメディア界のエコシステムには組み込まれていると考えていいのだが、もう少し規模を大きくしたい。
大きくしたいといっても専業のスタッフを10名抱える会社に……。という野望は今の所はない。もちろん、そうする必要が生じた場合には、雇用も選択肢に入ってくることだろう。
しかし、一人当たり給与が月30万としても月あたり300万円。年間3600万円。会社として雇用する場合にはもう少しコストがかかるらしいので、50万とした場合には、月500万、年間6000万もかかる。
6000万円払っても成立させようと思うと、当然ながら6000万円以上の利益を得る必要があるため、書籍を原価率5割で売ったとした場合1億2000万円も売り上げる必要がある。書籍1冊が2000円とすると6万部をコンスタントに売り続けることが求められる。
これはちょっと厳しい。じゃあ半分にしようといことで、「5人雇用ー6000万円売上ー3万部販売」としても、そうとううまくヒット作品を生まないと難しい数字だ。
「1人雇用ー1200万円売上ー6000部販売」とした場合、もう少し現実に近づいてくる。出版はストック型のビジネスなので何年かやっていけば、こういう数字に近づいてくる日も来るはず。
もっとも一人目の雇用は自分にしたい……。と考えるとまともなビジネスが成立し始めるのは年間1万部売るようになってからだろうか。
といってもこれは、従来のビジネスにおける雇用の問題であって、ぼくはこういうやり方をしない。現在は、副業が推奨される時代になってきているため、OWL magazineも「副業型の起業」にしたいと思っている。
コミット度合いや、その人の必要な額にあわせて月額1〜20万円程度を支払うという方式である。こうすると、必要な人材が最適化されるので、人件費も常に最適なものとなる。
売上に合わせて柔軟に人件費を調整出来るというのがメリットだ。デメリットとしては人材確保が難しい点となるだろうが、そもそもそこが得意だからコソの起業なのだ。
優秀な人材を主業として雇うのはかなり骨が折れると思うのだが、今はみんな副業を探している時代だ。興味深い分野で、そこそこ稼げる副業というものにも一定の需要があるはずだ。
さて、物体としての本の話に戻す。書店をやっていたからわかるのだが、ダンボール1箱分で書籍は50冊くらい入る。書店員とは、ダンボールから書籍を取り出し、棚に並べる仕事であり、棚から書籍を取り出し、ダンボールに詰める仕事なのである。
さて、1万部ということになると、ダンボール200個分である。
これを5箱×5箱の25箱で積み上げていくと4段出来る。
横幅2.25メートル、奥行き1.75メートル、高さ1.5メートル、重さは300キロもある。この本の塊を毎年作っては売っていく必要がある。
従って、出版業をやろうと思った場合には、書籍の在庫をどのように取り扱うかが重要になってくる。
ただ、1つ強みがある。割と広めの実家に生息しているので、上記の計算に基づくと5万部くらいの本を積み上げておくだけの容積を既に持っているのだ。そうすると倉庫を借りるコストを節約することが出来るので、若干有利になる。
後は書籍のクオリティと宣伝力で勝負。ただ1年目から結果を出すと言うよりも3年……、いや次のワールドカップの2026年くらいまでに結果を出すとくくらいに構えておいたほうがいいかもしれない。
気長に見るといいつつも、やはりもう少し稼ぐ必要もある。現状は代表である中村のもとにお金が入ってこない状態だ。いや、あるといえばあるのだが、次の事業のための内部留保としているため、報酬として受け取ることが出来ないのだ。
特に今は、書籍の出版という事業を控えているのでキャッシュはいくらあっても足りない。
従って今やるべきことは、プロダクトの制作と資金調達ということになる。
プロダクトの制作、つまり書籍の制作については、チームが出来て着々と動いている。
全体の統括がぼくで、そのサポートとして編集長の大澤あすか。クリエイティブチームに五十嵐メイ、製作チームにキャプテンさかまき。そして、超強力なブックデザイナーに参加してもらえることにもなった。
なので後は原稿を集めて、ぼくが編集のやりとりをすれば、書籍が完成する。
さしあたり必要なのは、クリエイターへの報酬系の確保と、印刷費である。やはり資金調達。
資金調達というと難しく感じられるのだが、おおむね7種類くらいの方法に分けられる。まずは公の助成金、補助金などにあたりながら、クラウドファンディングを視野に入れ、さらに加速するための措置としてエンジェル投資家にあたるという順序でやっていくこととしよう。
資金調達は、お金を得ること以上に大切だ。水泳で言えば息継ぎ、サッカーでいえばボールをもらう動き、文筆業で言えば執筆環境。やり方を整えないと決してうまくいかない。
知人からポンっとお金を出してもらって経営を始めるというやり方は失敗する人が多いらしい。10万円の使い方しか知らないのに1億円を手にしてしまうと、有効な使い方がわからずに、あっという間に溶かしてしまうのだそうだ。
そういう意味だとぼくは10万円の使い方しか知らない。だからまずは100万円単位のお金を集めて使うようにしていくべきなのだろう。それを1000万円まで伸ばせたら会社らしくなってくるし、1億円までいったら立派な社長ということになる。
タクシードライバーを始めてからお金について考え続けてきた。一定の準備は整ったはずだ。後は勇気を出して漕ぎ出すだけだ。
まずはOWL magazineをしっかり運営していく。
次にタクシー本など自分の人生を変える執筆をしていく。
そして会社を経営して、ぼくを支えてくれる人にしっかり報酬を払えるようにする。
一つ一つやっていこう。もうすぐ40歳だからね。