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マンガで心療内科のゆうきゆうから週刊文春のはてなコメント削除要請がきた話

マンガで心療内科のゆうきゆうから週刊文春のはてなコメント削除要請がきた話

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 マンガで心療内科や精神科を身近なものにしてくれたゆうきゆう氏は過去複数回週刊文春で女性関係のスキャンダル記事を書かれている。相手は精神的な問題を抱えている十代の女性であったり、ゆうきゆう氏が既婚者であることを知らない婚活パーティー参加者の独身女性だったりで、ゆうきゆう氏のマンガを面白おかしく読んできたわたしにとってもそのニュースは衝撃的なものだった。ほかにも不倫相手と豪華な不倫旅行を楽しんでいるという記事ではライスのないカレーを箸で食べている楽し気なゆうきゆう氏の写真があったそうだけれど、わたしはこれは見ていない。

 これらが週刊文春に記事になったのはいまから4~5年前、2017年、18年頃の話で、わたしはその頃末期がんの夫の看病中で、それから今日まで亡くなった後の日々をどう乗り越えるかで忙しかった。なので、2017年の記事に対して呟いた以下のはてなブックマークの感想に、2022年になってゆうきゆう氏からはてなを通じて法的権利の侵害であると物言いが入ったときは困惑した。

削除依頼が来たコメントと申立事由

 わたしのコメントは2017年10月の週刊文春の記事に対するもので、現在web上ではこの記事を読むことはできない。ちなみに記事を取り下げた理由は掲載期間が終了したからで、記事そのものが誤りであったといった続報はないことが確認されている。
 記事は週刊文春の記者がゆうきゆう氏と交際していたという女性の言葉をもとにまとめられていた。わたしは記事の中でもっとも衝撃的だった女性の言葉を引用してコメントを書いた。

kutabirehateko 「ピルはいつでも出せると避妊してくれなかった」っていうのが人としても医者としても男としても最悪。
2017/10/18

これに対して、5年の時を経てはてながゆうきゆう氏からの申立としてメールしてきたもの。

■申立の事由(申立書からの転載)
侵害されたとする権利
信用棄損、虚偽の風説の流布、侮辱、威力業務妨害

権利が侵害されたとする理由
根拠のない風説の流布であり、虚偽の事実摘示、侮辱に該当し、威力業務妨害に当たると思料する。下記刑法第230~第234条に抵触し、下記民法第709条に規定される保護法益を侵害するものであるため、下記プロバイダ責任制限法第3条第2項第2号に基づき送信防止処置を請求する。

 はてなは上記に基づき、7日以内にブコメを削除するか非公開にする、または応じない理由をゆうきゆう氏にはてなを通じて伝えてほしい。削除、非公開、連絡のどれもない場合は「サービスの非公開化」「表示のみを停止」に処すが「そのような方法が取れない場合」があると通達してきた。

 ただし「申立の内容および申立を受けた事実について開示を行うことは、プライバシー侵害や名誉毀損等、権利侵害に相当する場合があり、円滑な手続きの妨げともないますので、無断でブログに掲載された場合には公開を停止することがある」とあり、ブログで経緯を公開するにははてなに断りをいれなければならないらしい。

弁護士の見解 

 わたしは妊娠を望まない十代の女性に、避妊せず性関係を乞う男性医師は人としても医者としても男としても最悪だという一般論がゆうメンタルクリニックの信用をどのように毀損し、また業務を妨害しうる威力を持つのか、さっぱりわからなかった。
 またわたしの感想がゆうきゆう氏に関して知られざる事実を流布することになり、経験の浅い十代の信用につけ込む成人男性医師ではなく、ゆうきゆう氏個人を侮辱することになる理由もよくわからない。
 まず先に何がどのように権利侵害に当たるのか、先方の話を聞きたいくらいだ。一方で、法の裁きにはときどき驚くような解釈があるので、自分のコメントが法的に問題ないのかどうかもよくわからない。

 よくわからないけれど、訴訟を起こすとか弁護士がとか出てくると、一般人はビビる。よほどのことでない限り、深追いしない方がいいのかな、と日和りたくなる。一方で、こんな感想に物々しい言いがかりをつけられ、よくわからないまま個人的な感想を権利侵害と認めるのは気持ちが悪い。そこで懇意にしている弁護士に相談して、次のような回答をえた。

(1)
当該コメントは信用毀損罪や(威力)業務妨害罪には当たらない。
虚偽の風説の流布とは信用毀損罪の実行行為の一つで別個の罪ではない。
信用毀損はあくまで他人の経済的な評価を下げる行為である。
当該コメントは記事の内容が真実ならばという前提がある。

(2)
威力業務妨害罪は暴行や脅迫等の他人の自由意思を制圧するに足る勢力を使用した場合に成立するので本件とは関係ない。

(3)
侮辱罪は成立し得るが、結局のところ記事に対する一般的な評価と見れなくもないので、これが刑事事件化することは無い。

(4)
「民法709条に規定される保護法益」というのは意味不明。
709は一般不法行為についての条文で保護法益を具体的に定めていない。
なおプロバイダ責任制限法は情報の削除請求権を定めた法律ではなく、あくまでプロバイダが書き込みを削除したことによる損害賠償責任を一定の条件で制限した法律である。

 またこうした事実を無断で公開してはならないというのは、ユーザーとしてはてなの方針に従うという規約があるはずなので、はてなのサービス内では制約がある。しかしながらこれはあくまではてなのサービスの範囲なので、その他のサービスについては制約できないとのことだった。

 「でもまあそんなに思い入れがあるものでななら、放っておいていいかもしれませんね」と弁護士は言った。「はてなでしたっけ?匿名掲示板ですか?」とも言った。そういう方でよかった。
 そうだな~。なんか訴訟チラつかされて不愉快だし、スッキリしないけど、まあコメントがひとつ非表示になるくらいは協力してもいいかな~とわたしは思った。

 ちなみに回答をえたのは返信期限前日だった。メールに気づいたのが週末だったので、わたしは週末までに返信をすればいいと勘違いをしていたが、受信日は数日前だったのだった。はてなは定型文をコピペしているのだろうけれど、○月〇日〇時と記載してほしい。わたしはこの種の見落としで、閉じて久しいはてなブログの二年更新有料プランに無駄にお金を落とし続けていて悔しい。

はてなブックマークが全面強制非公開にされる

 こうして期限を過ぎてしまった結果、当該のブックマークコメントは強制非公開にされた。のみならず、アカウント自体が全面的に非公開にされた。
 え!なんで?!どのコメントがあかんか連絡してきたんやから、そのコメントだけ非公開にしたらよくない??なんで???

 わたしは以下のようなメールをはてなに送った。

はてなサポート窓口 法務関連対応チーム様
平素はてなのサービスを利用させていただき、ありがとうございます。
弁護士に相談したところ、以下のような回答をえました。
(※前述の弁護士の見解)
これらを総合して、こちらとしてはコメントを削除する必要はないと判断しました。

とはいえ特に思い入れの強いコメントというわけではないので、当該コメントの非表示を貴社が望まれるのであれば協力するつもりです。
しかしアカウント自体を非表示にするのであれば、その旨を明確にしていただきたく存じます。
以上を踏まえてアカウントの非公開を解除をお願いいたします。

一連の経緯をはてなのサービスを通じて流布するつもりはありませんが、必要であれば他のSNSサービスを通じて書くことも考えております。
ご返事お待ちしております。

これに対してはてなの返信と、それに対する弁護士の見解。
※太字が弁護士の見解

1.コメントについて
プロバイダ責任制限法に基づく申立を受け、意見照会期限を超過したため送信防止措置の対象となった場合、期限超過後は反論を受理することができない。そのため、送信防止措置の解除はできない。

送信防止措置というのは何ら法的な制約ではない。現に2にある通り例外をもうけることができることをはてな自ら説明している

2.非公開化解除について
1.の通り、アカウント非公開化の解除に関しまして、期限超過後は反論を受理できないが、例外対応として、申立対象のコメントを自主削除し、今後、削除に至る経緯なども含めて申立者に対する権利侵害となり得る情報の発信を行わない旨の誓約をした場合、解除を行っている。上記についてご対応し、返信してもらいたい。

コメントにはなんら法的な問題がない。法的に問題のないコメントを削除するよう要請することにどのような法的根拠があるのかをはてなに問うてみてはどうか。

3.アカウントの非公開化について
「しかしアカウント自体を非表示にするのであれば、その旨を明確にしていただきたく存じます。」
 こちらに関しましては、意見照会時にお送りしておりますメールにて、下記ご案内をお送りしております。
・「弊社が行う情報送信防止措置はサービスの非公開化など情報の改変やデータの消去を行なわず表示のみを停止する方法にて行います」

コメントそのものではなく、アカウント全体を非公開にする例としてはyahooの例があるが、Yahooはユーザーに対して、度を超えた侮辱などを繰り返すアカウントを強制的に非公開にすることを大々的に繰り返し周知した。はてなではどのような基準で強制非公開の対象を定めているのか、またそのような周知をどのように通達してきたのか問うてみてはどうか。

4.他サービスへの経緯掲載について
外部サイトのご利用については、弊社から制限したり許諾することはできかねます。

はてな以外のSNSに関してはてなは拘束力を持たないのでそれはそう。

期限付き返信要請と強制非公開について思うこと

 「一週間あれば返信できるやろ」とはてなは思ったのだろうけれど、複合的な理由でその時期にわたしにはそれは無理なことだった。とはいえ8日目に返信して、はてなとやり取りすることはまだできる。しかしはてなユーザーのすべてが一週間前後で返信できるわけではない。

 亡くなった夫はわたしより古いはてなユーザーで、夫が遺したはてなブログやコメントは心理的にとても貴重なものになっている。ふと思い出してHagexさんのブログを読み返すこともある。こうしたいまは亡きはてなユーザーになんらかの異議申し立てが入った場合、遺族がはてなからのメールに気づけるものだろうか。

 わたしは最期の日々の各種手続きに必要だったので、夫のメールフォルダをみることができる。でもそんなに頻繁にチェックしていない。

 法に抵触する書き込みを放置しないのは、プロバイダーサービスを提供する上で間違いなく非常に重要なことだ。しかしもの言いが入ったら精査せず機械的に定型文を送り、アカウント自体を強制非公開にするというやり方は、ちょっと杜撰なのではないですかね。

 だって経営者を批判したり、政治家を批判したりした結果、法的に問題のないコメントを書いたユーザーが火消しのためにアカウント非公開になる場合があるってことでしょ。そしてユーザーが故人だった場合、そのコメントは二度と読めないってことでしょ。非道くない??

 また「今後、削除に至る経緯なども含めて申立者に対する権利侵害となり得る情報の発信を行わない旨の誓約をした場合」とか「申立の内容および申立を受けた事実について開示を行うことは、プライバシー侵害や名誉毀損等、権利侵害に相当する場合があり、円滑な手続きの妨げともないますので、無断でブログに掲載された場合には公開を停止する」とか、ユーザーを孤立させ、内情を公開させないことが、果たして再発防止に繋がっているのか疑問がある。

 わたしはこのことをTwitterに書いたのだけれど、そこそこの反響があった。

このツイートに寄せられたブクマ。かなりの人が削除要請を受けて、実際にコメントやブログを削除したり、非公開にしたりしていて驚いた。ゆうきゆう氏から同様の要請を受けた人も少なくなかった。

ゆうきゆう氏に雇われた火消やさんが動いているのではないかという増田。

 以上、今日あらためて弁護士と話をして、頭を整理するために書きました。はてなにはもう少し考えて時間のあるときに連絡するつもり。


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