婆ちゃんとおにぎり

 今日もバイトでした。おにぎり売るオバさん。

 おにぎりなど売っていると、高齢者も多く来る。総菜も扱っているので、総菜1つ2つ、そしておにぎり1個。「年とるとねぇ~、これぐらいでちょうどいいのよ」って、みんな同じことを言って買っていく。年で食べられないのもあるけど、お金もそんなにはないのかもしれない。まぁ、安いおにぎりではないので、違うかもしれないけど。

 いつも来るおばあちゃんがいる。おばあちゃん、おそらく80代ぐらい。でも、都会のおばあちゃんだから、ハンチングみたいのを被って、けっこうおしゃれだ。おしゃれっていうか、たぶん、それらは80年代ぐらいからずっと着てるんじゃないか?と思うようないで立ちなんだが。

 おばあちゃんはしかし、だいぶボケている。おにぎり1個選ぶのも3~4分かかって、おにぎりの入るケースにもたれかかるようにして、延々見ていて選び出せない。総菜も見てはいるが、選べない。正直そこにずっとそうやって居られてはほかのお客さんに迷惑だから、私は意地悪になって、チっという感じで「これはどうですか? これはどうでしょう?」と矢継ぎ早にあれこれ提案して、婆ちゃんはもう私の言いなりになり、なんとか買う。言いなりなんだが、急にハッとしたかのように自我が登場して「それは嫌いなの」とか言う。言ったそばから忘れて「それもいいわね」とかも言う。

 それでもなんとかやっと買って、しかし、もう、お金なんてわけわからなくて、財布を開けて、どうかしら?どうかしら?ばかりだから、小銭をじゃらじゃら全部ださせて、そこから取って、払って、お釣りを渡す。私が悪い人だったら、いくらでも騙せる。こうして年寄りは騙されるんだな、と実感する。

 婆ちゃんはどうやら一人で住んでるようで、旦那さんは昔に死んだらしい。。。婆ちゃんが勝手に一人でしゃべる話の断片からわかった。だから、婆ちゃんはさみしい。しゃべりたくてたまらないというか、いや、しゃべりたいのだが、会話はなかなか成立しないので、婆ちゃんが一人勝手にしゃべって、そうですね、そうですね、だけ答えてる。今日は「ここでおにぎり食べる」というから、水入れてあげて出したら、急に真顔になって「えっ?水?ほかにないの?」とか言い出した。婆ちゃん。。。あんた、ここ、家だと思い込んだか?

 そのうち、婆ちゃんは一人黙り込んで総菜とおにぎりを食べていたが、どうやら多かったらしい。もてあまし、宙を見つめる。仕方なく「お腹いっぱいですか? 持ち帰りましょうか?」というと、婆ちゃんはほっとした顔をえ「そうね、そうするわ。あ、輪ゴムちょうだい、ビニール袋も」と、また急にハッとして目覚めて(?)わがまま言い、それらをしまい込む。事前に買ったほかのおにぎりといっしょにして、「これからゆうゆう館に行くの。これをあげるの」と報告する。「お年寄りの行くとこですか?」って言うと、「そうそう。そうなの」と嬉しそうにいい、そして「じゃ、行ってきます」と、また完全に店を家だと勘違いした風にして、出て行った。

 これから先、東京中、こういう年寄りがあふれる。やがて、そう遠くないうちに、私もこうなる。これぐらいちょうどいいぐらいのものが安く食べれて、いろいろしゃべれて、ゆっくりできる店、そういう店こそ必要なのに、消費税10%になったら、そんな店は一軒もなくなるんだろうなぁと思う。とってもじゃないが、やっていけない。婆ちゃんはどこに行けばいいんだろう? 

 

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働く話を色々書くつもりでしたが、色々他のことも書いてます。でも基本は働くこと。ひたすら毎日を過ごせたら、万歳。メールはshizukarem@yahoo.co.jp まで。スー女で音楽好きなコラムニストって、肩書にします。
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