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【映画】光をくれた人(2016)~アフォガードのような大人な映画~

本作の監督は『ブルーバレンタイン』を手掛けたデレク・シアンフランス監督です。

それだけで、ぐいぐいとストーリーに引き込まれていった心地よさを思い出し、期待感もぐぐっと高まりました。

"光"との出会い

舞台は第一次世界大戦後のオーストラリア。

帰還兵のトム(マイケル・ファスベンダー)は、戦争で負った心の傷を静かに癒すべく、孤島ヤヌス・ロックに灯台守として赴任します。そこで名士の娘イザベル(アリシア・ヴィキャンデル)と出会い、恋に落ちます。

冒頭では、自分にとっての"光"となってくれる人と出会え、共に光を紡いでいく喜びが描かれています。人との出会いで人生に光が降り注ぐ瞬間ってこういう感覚だった!と、温かい気持ちになりました。

わたしの人生を振り返っても、まず思い出されるのは、人生の場面(小、中、高、大など)ごとに出会えた大切な人たちの存在です。今でも思い出す度に、つかれた心がほぐれていくように感じます。

この出会い、愛を育むシーンが、例えるならばアフォガードのバニラアイスの部分です。

"光"を失う

次に、光を失う怖さについても切な過ぎるのではと思うくらい描かれています。2人の歯車が少しずつかみ合わない出来事が起きてきます。

ここから、少しずつエスプレッソが投入されていきます。

下記の動画は、夫役を演じたマイケル・ファスベンダーと、妻役のアリシア・ヴィキャンデルがこの映画について語っているインタビューです。

このインタビューの中で、アリシア・ヴィキャンデルは言葉を慎重に選びながら、

さらに自分たちについても考えさせられるわ。
許しや現実的な問題も描いている。
たとえ善人でも最善策を講じるとは限らないと。
観客は自らの経験と照らし合わせて
必ず何かしら共感できるはずよ。

と語っています。

本来常識を持ち合わせていた人が、妻を愛するがゆえに葛藤し、判断を誤ってしまう。

幸せな夫婦が作った”たった一つの秘密”は、2人の想像以上に大きく、遂には2人の手には負えない渦になっていきます。

一度赦すだけでいい

後半のキーパーソンは、レイチェル・ワイズ演じるハンナです。ハンナは、幼い娘を亡くした母親役として登場します。

ハンナの夫であるフランツは、出身地を理由に迫害されながらも、前を見て生きようとします。そんな彼の姿勢を見て、ハンナは夫とこんな会話を交わします。

ハンナ:あなたはつらい目にあってきたのに…いつも幸せそうだわ。なぜそうなれるの?
フランツ:一度赦すだけでいい。人を恨むにはいつもそのことを考えなくては。不快なことを決して忘れずに。疲れてしまう。
ハンナ :美しい人ね

この「一度赦すだけでいい」というフランツの言葉が、ハンナ自身だけでなく、主人公夫婦のトムとイザベルをも救うことになります。子どものための最善とはなにかと思い悩むハンナの背中をそっと押して、ハンナの勇気ある行動を支えるのです。

◎まとめ​

人は、傍にいる大切な人に光を与えるために力強くもなれるし、弱ったときに優しい光を受け取る存在にもなる。

そのどちらも肯定するように、力強さと儚さが共に美しく描かれているところが好きでした。


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